多発性硬化症という病名を聞いたことがありますか?
神経内科で扱われる厚生労働省指定の特定疾患ですが、あまり馴染みがないという方が多いかもしれません。落語家の林家こん平さんがかかっている病気としてご存知の方もいるでしょう。今回は医師にこの多発性硬化症について、話を聞いてきました。

どんな病気なの?

多発性硬化症は中枢神経の脳や脊髄、視神経などにさまざまな症状が出る病気です。病変が再発しては治る、ということを繰り返す患者が多くを占めます。

北アメリカ、北欧、オーストラリアの南のほうで罹患率が高い地域差のある病気で、北半球でも南半球でも緯度の高い地域に発生する、という奇妙な特徴のある病気です。日本国内でも、より緯度の高い北海道のほうが日本の南部より発生率が高いといわれています。また、日本では近年罹患率が上がってきているとも言われています。

多発性硬化症には、再発と寛解を繰り返す再発寛解型という多数派と、発病当初から症状が少しずつ進行していく一次性進行型といわれる少数派があります。
再発寛解型の多発性硬化症でも、発病から15~20年経つと、そのうち50%程度が「二次性進行型」とよばれる、再発が特にないのにも関わらず、だんだん障害が進んできてしまうタイプに移行するといわれています。

多発性硬化症、初期の症状は?

30歳くらいで発症することが多く、問題なく健康であった比較的若い人を突然襲います
ただ、肉体的・精神的な疲労が続いていることや、何らかの感染が先行する場合もあるといわれています。診断は神経内科で、画像検査や血液検査、髄液検査などによって行われます。

【発症時の症状】
・極端な疲労感
・力が抜ける
・筋肉や関節の痛み

すぐわかるような突然の変化である場合も、ほとんど自分でもわからないような緩やかな発症である場合もあります。病気による変化ができた部位により、症状は大きく異なりますが、できる部位によっては命にかかわるような危険が伴う場合もあります。

多発性硬化症の原因は?

原因ははっきりしていません。ウイルス感染や遺伝が疑われています。

遺伝に関しては、単一の遺伝子ではなく複数の遺伝子が関わっていると考えられています。血縁関係のある家族内で発症することは多くないといわれています。また、免疫抑制剤が治療に有効であることなどから「多発性硬化症は自己免疫疾患である」と考えられている説もあります。

【医師からのアドバイス】

頻度の高い疾患ではありませんが、近頃体調に異変があり、これらの症状に当てはまるかたは、多発性硬化症の可能性を考慮してみるべきかもしれません。

(監修:Doctors Me 医師)