みなさんは、アナフィラキシーショックという言葉をご存知でしょうか? 先日、叶姉妹の妹・叶美香さんが、アナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難になってしまったとの報道がありました。

今回はこの「アナフィラキシーショック」について薬剤師にインタビューしてみました。

Q1 アナフィラキシーショックとは?

アナフィラキシーショックとは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)に触れたり、摂取した時に短時間に起きる重篤なアレルギー反応のことです。アレルゲンを摂取後、数分から30分程度以内に症状が現れる急性アレルギー反応(即時型アレルギー)です。

特徴的症状は、急激な全身のアレルギー症状です。その症状には、

○皮膚の痒み・赤み・蕁麻疹などの「皮膚症状」
○腹痛・おう吐などの「消化器症状」
○目の痒み・瞼のむくみ・口唇や口腔内の腫れなどの「粘膜症状」
○気道の腫れによる「呼吸器症状」

などが有ります。最悪の場合、急激な血圧の低下により「ショック症状」に陥り死に至ることもあります。

アナフィラキシーは、誰にでも起こる可能性が有り、その原因は、食物、薬物、蜂毒、など個人によって様々なものがアレルゲンと成り得ます。

Q2 咳止め薬によるアナフィラキシーショックの原因は?

叶美香さんが医師から処方されたせき止め薬を服用しアナフィラキーシーショックを起こしたと報道されていることから「咳止め=怖い」と考えてしまっている方もいるかもしれませんね。

しかし、これはすべての人にとって咳止めがアレルゲンになるということではなく、叶美香さんにとって咳止めがアレルゲンだった可能性がある、ということです。これは、誰に責任があるわけでもなく、医師の処方の薬を正しく服用した場合でもアナフィラキシーショックが起きる可能性があるのです。

Q3 アナフィラキシーショックになる他の事例は?

特定の食べ物を摂取したあと数時間内に運動をすることで急激なアレルギー反応が起こる食物依存性運動誘発性アナフィラキシーと呼ばれるものがあります。症状が進むとアナフィラキシーショックと同様の皮膚症状や呼吸症状、血圧低下がみられ死に至る場合もあります。

日本での報告例は、小麦製品が多い傾向にあるようです。食後の運動中に蕁麻疹などを発症した経験が何度かあるという場合は、専門の医療機関での検査や診断を受けることをお勧めします。

Q4 アナフィラキシーショックになったらどうする?

死に至る危険性があり、一刻を争うので直ちに救急車を呼んでください。なるべく人を呼び、救急車を待つまでの間は、安静を保ってください。

また、自分で病院へ向かう場合は、向かう途中で症状が改善しても安心はできません。アナフィラキシーの二相性反応と呼ばれるものがあり、初期症状が改善した後、数時間後に再度アナフィラキシーの症状が出現することがあります。この場合も、症状が進むと危険な状態となりますので必ず病院へ行ってください。

Q5 病院での治療は?

アナフィラキシーショックを起こしている時には、アドレナリンの注射を打ち血圧を上げます。アドレナリンは、気管支の拡張と呼吸を回復させアナフィラキシー症状を改善します。その後、必要に応じて抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、気管支拡張薬等の投与が行われます。

一度アナフィラキシーショックを起こせば、また、アレルゲンに触れればアナフィラキシーショックを起こします。それを避ける為、医師の指導の下、アドレナリンを自分で注射できるように訓練し、エピペンという自己注射を処方してもらい携帯することもできます。

Q6 予防法は?

いつどこでアレルゲンに接触しアナフィラキシーショックを起こすかは予測不可能とも言えますが、家族にアレルギー歴などがあれば一度、アレルギー検査をしてみるのも良いでしょう。

また、薬などで少しでも副作用のような症状が出たものは、お薬手帳などに記載し医療機関を受診する際は、医師/薬剤師に見せることでアレルゲンとなる薬の服用を避けることができますね。

まとめ

自分には、アレルギーがないと思っていてもある日、突然、自分にとってアレルゲンとなるものを摂取してしまう可能性があります。万が一、急激なアレルギー症状が発現したら速やかに病院へ行くようにしてください。

(監修:薬剤師 吉澤 恵理)

プロフィール

監修:薬剤師 吉澤 恵理
1969年福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手として研究する中で臨床に興味が湧き、福島県公立岩瀬病院薬剤部勤務となる。その後、いくつかの病院・調剤薬局勤務するなかで、健康セミナーなども行ない患者からの信頼は厚い。アロマコーディネーターの資格も有し、美容に関しての相談にも応需、好評を得ている。 また、4人の子どもを持つシングルマザーでもあり、自身の出産・子育ての経験を活かし、医療の枠にとらわれず、女性のさまざまな悩みに応じている。