肛門小窩炎の症状

肛門小窩炎の主な症状は肛門部に生じる重苦しい疼痛です。特に長時間座っている場合に現れる症状で、切れ痔と類似する部分が見られます。
しかし、切れ痔の痛みは固い便を出した時に現れるのに対して、肛門小窩炎の疼痛は軟らかい便もしくは下痢便を出した時に現れます。また、切れ痔は固い便を出した際に肛門の皮膚が傷ついて裂けた状態であり、キリッとした痛みのほかに出血を伴う一方、肛門小窩炎の疼痛は1重苦しく、週間以上続く場合があります。
ただし、固い便と軟らかい便を交互に繰り返すうちに両者を併発してしまう時があります。こうなった場合、両者特有の痛みが立て続けに現れるようになるため、両者の識別が一層困難になってしまいます。

肛門小窩炎の原因

肛門小窩炎の発症にいたる原因は、肛門陰窩に汚物がたまることですが、この汚物というものは排泄された便が主となる場合があります。主に軟らかい便や下痢便、水様便を多く出した結果、肛門周囲の清潔を保てない場合に発症にいたると考えられています。
肛門陰肛窩は肛門の皮膚側と粘膜側の境にある小さなくぼみで、肛門全周で6から11個あります。くぼみの深さはおよそ1ミリ程度ですが、くぼみの深さと形には個人差があり、汚物がたまりやすい構造をしているものからくぼみが浅いものもあります。そのため、下痢や水様便を出したからといって必ずしも肛門小窩炎を発症するとは限らず、下痢や水様便からなる汚物が肛門陰窩のどれかにたまったとしても発症しない場合があります。

肛門小窩炎の治療法

肛門小窩炎の原因は肛門陰窩に軟らかい便や下痢、水様便がたまることで発症する疾患のため、明確な予防方法は確立されていないが現状です。発症するかどうかには個人差があり、発症年齢も幅広いためです。
そのため、肛門小窩炎は発症後の治療が基本的な医療対応となります。肛門小窩炎は切れ痔や痔ろうといった症状と類似するため、専門医による適切な問診・視診・触診が必要となります。
治療は主に保存治療が基本で、坐薬や軟膏を使うことになります。しかし、そういった保存治療の効果が見られない場合や、根本的治療を希望する際には、外来で肛門小窩に硬化剤を注射したり、手術でくぼみを切り開く必要があります。