左胸が痛くなった場合、心臓がある場所ということもあり、真っ先に心筋梗塞などの心臓疾患を疑うと思います。

 

重篤な症状の可能性もあるので、自己判断で様子見をせず、早めに受診することをおすすめします。

 

今回は、左胸が痛くなった時に疑われる病気について、医師に詳しくお話を伺いました。

 

注意点・危険性

左胸に激痛が走っている男性 

左胸には心臓・大きな血管・肺・食道など多くの重要な構造物があります。

 

様々な病気が痛みを引き起こしますが、冷汗を伴うような強い痛み、長続きする痛み、息切れや立ちくらみがあるような場合には急いで循環器内科や救急科を受診するようにしてください。

 

 

疑われる病気1:狭心症、心筋梗塞(虚血性心疾患)

心臓

 

原因

心臓の筋肉に栄養や酸素を送るための血管が細くなり、血流が減ったり、全く血液が届かなくなるために起こります。

 

その原因として一番多いのは、糖尿病高血圧・脂質代謝異常・加齢、喫煙などによって起こる動脈硬化です。

 

症状 

重苦しいような、押さえつけられるような痛みがあります。みぞおちや左肩や歯が痛いと感じることもあります。運動すると悪化し、休むと軽くなることもあれば、横になってもおさまらない場合もあります。

 

治療法・予防法 

心臓に血液を送る血管を広げる薬を使用したり、血管を広げる金網のようなものを入れる手術を行ったり、血管を作り直す手術を行います。入院の上治療が必要になる場合が多く、血流が届かない範囲が広いと命にかかわることもあります。

 

動脈硬化を防ぐような生活習慣や、健康診断での血圧測定・血液検査で現状を把握することが重要です。

 

その他の心臓や血管の病気

他に、心臓や大きな血管の病気で胸痛を起こすものとして、心不全心筋炎心膜炎心臓弁膜症心筋症大動脈解離などがあります。

 

また、胸痛・動悸息切れなど、心臓の病気によると思われる症状があるのに、検査で異常が見つからず、不安が強い場合を心臓神経症と呼びます。

 

 

疑われる病気2:肺血栓塞栓症

肺 

原因 

体のどこかに血の固まりができ、それが肺の血管に詰まった状態です。長時間飛行機で座りっぱなしになって起こるエコノミークラス症候群や、手術後などに長時間寝たきりになったことで起こる場合もあります。

 

症状 

息苦しく、呼吸がはあはあと早くなり、脈も速くなります。足が片方だけむくんだり、ふくらはぎをつかむと痛みがあったりします。

 

治療法・予防法 

同じ姿勢を長時間続けるときにはこまめに足を動かす、水分を十分取るなどがあります。

 

その他の肺の病気

その他の肺の病気で胸痛を起こすものとして、気胸肺炎胸膜炎などがあります。

 

 

疑われる病気3:肋間神経痛

肋骨 

原因

肋骨の間を通っている神経の痛みです。咳や深呼吸で起こりやすくなります。背骨や脊髄の病気があったり、糖尿病があると起こりやすくなります。

 

帯状疱疹が治ったあとの後遺症として出る場合(帯状疱疹後神経痛)もあります。

 

症状

ピリッ、チクッ、ズキッとした一瞬の痛みが、肋間神経に沿って走ります。肋間神経は背中の脊髄から出て、肋骨の間を平行に走っていますので、体の片側を水平に痛みが走ります。

 

治療法・予防法 

痛み止めや神経の働きを助けるビタミン剤を内服します。

 

その他の骨や神経などの病気

骨・筋肉・神経・軟部組織の問題で胸痛を起こすものとして、肋軟骨炎、乳腺炎などがあります。

 

 

疑われる病気4:帯状疱疹

帯状疱疹 

原因 

ヘルペスウイルスの一種である水痘帯状疱疹ウイルスが原因です。多くの人は子どもの頃に口からこのウイルスが入ることで水痘(水ぼうそう)にかかり、その後このウイルスが神経細胞の中に住み着いてとどまり続けます。

 

普段は病気を起こしませんが、免疫力が低下すると神経を伝ってウイルスが活性化し、皮膚に発疹を作ります。

 

症状

ピリピリした痛みがあり、赤い発疹を作ります。通常は一つの神経が支配している領域にしか出ませんが、免疫力の低下が激しいと、広い範囲に出たり、体の両側に見られることもあります。

 

時間が経つと自然と治っていく場合が多いですが、治ってからも神経痛が後遺症として残る場合があります。

 

治療法・予防法 

発疹が出たらできるだけ早くウイルスに対抗する薬を使用することが、回復を早め、後遺症の神経痛を予防することにつながります。

 

薬には飲み薬と点滴があり、患者さんの状態や病変の広さに合わせて使い分けます。

 

 

最後に医師から一言

内科の診察 

胸の痛みを起こす病気は多いですが、治療を急ぐ病気から放置しても問題ないものまで幅広く、典型的な症状ばかりとは限りません。受診すべき科も原因によって様々であり、どの科を受診するか迷う場合もあると思います。

 

明らかに整形外科や皮膚科の病気である場合を除けば、迷ったら内科で相談されてみると良いでしょう。

 

(監修:Doctors Me 医師)