流行語大賞にもノミネートされた「睡眠負債」という言葉、一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか?

 

毎日忙しく過ごしていると、知らぬ間に睡眠不足がたまってしまうもの。最近では、オフィスでの昼寝を推奨する会社も出てくるなど、睡眠の重要性が再認識されてきています。

 

今回は健康に不可欠な睡眠が不足するリスク、ため込みがちな「睡眠負債」の解消法について、医師に教えていただきました。

 

目次

 

「睡眠負債」とはどういう意味? 

質問がある女性

 

睡眠負債とは、日々の睡眠不足が蓄積されたもので、心身の健康に様々な悪影響を与えるといわれています。

 

徹夜や、3時間未満の睡眠などの極端な睡眠不足が心身に悪いことは、誰もが経験していることです。それだけではなく、わずかな睡眠不足でも蓄積されれば悪影響がある、という考え方を表す言葉です。

 

 

現代人の睡眠は足りていない?

電車で居眠りする女性

 

必要とする睡眠時間は年代によって、また個人によって大きな差があります。

 

働き盛りの年齢で必要とされる睡眠時間はおおよそ7~8時間といわれていますが、実際の日本人の平均睡眠時間は年々減少しています。

 

7時間以上の睡眠を取れている人は2~3割程度しかおらず、なかでも最も睡眠時間が短い結果となった40代は、6時間未満しか眠れていない人が半数近くを占めています。*1

 

 

睡眠不足が続くとどんな影響がある?

肥満の男性

 

睡眠時間が短いと肥満率が上がるという研究結果が出ています。

 

睡眠不足によって、食欲を制御するホルモンの分泌が正常に行われず、摂取カロリーが増加したり、エネルギー消費量が減少したりするためだと考えられています。

 

特に、シフト勤務や長い労働時間、長い通勤時間などは肥満に結びつきやすいといわれています。肥満は動脈硬化に関連する心臓病や、脳梗塞などの脳血管障害、またその他の血管病のリスクになるため注意が必要です。*2

 

また睡眠不足は、うつ病や判断力低下、イライラにもつながります。脳細胞へのダメージが重なれば、アルツハイマー病などの認知症のリスクがあがることもあります。*3 *4

 

さらに、免疫力低下やがんの発症リスク上昇にも関係していると考えられており、睡眠不足には様々な健康リスクがあげられます。*5

 

 

休日の「寝だめ」で睡眠負債は返済できる? 

寝だめする女性

 

休日に寝だめをしたくなるのは、平日の睡眠時間が不足してるからであり、普段から睡眠負債がない状態であれば、平日も休日も睡眠時間は変わらないはずです。

 

寝だめすることで日中の眠気は解消し、体のストレス状態や炎症などはよくなりますが、注意力や集中力は改善できません。

  

なかなか眠れないときにアルコールで眠ろうとするのはよくない? 

一人酒をする男性 

アルコールで眠気をもたらすためには、かなりの血中アルコール濃度が必要のため、お酒の力を借りて無理に眠ることを連日行っていれば、特に肝臓など体への悪影響が出てくるでしょう。

 

またアルコールには耐性が生じてくるため、同じ量ではだんだん眠れなくなってきます。

 

一旦依存状態になってしまうと、やめようとしても離脱症状、いわゆる禁断症状として不眠・イライラ・不安・体の震え・動悸などが起こり、やめられないという状態になりかねないため、注意が必要です。



睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めるためには?

夜間のブルーライト

 

厚生労働省の国民栄養・健康調査では、理想とする睡眠時間を確保できない理由として、成人男性では就業時間や通勤時間の長さ、女性では育児・家事の負担などがあげられています。

 

加えて、寝る前に携帯電話・メール・ゲームなどに熱中することが睡眠時間を減らしているという意見も見られます。

 

寝ようと思って布団に入り、少しだけと思ってスマホを触りだしたら、なかなかやめられず目が冴えてしまったという経験は誰にでもあるでしょう。

 

これは、スマホやパソコンの画面からブルーライトという光が発されており、ブルーライトの情報が脳に伝えられると、脳が今は昼間だと誤解してしまい、眠気ホルモンであるメラトニンを分泌しにくくなるためです。

 

就寝前にはスマホやパソコンを控えるほか、ブルーライトを減らす画面設定や、ブルーライトカットの眼鏡を利用するのもよいでしょう。逆に朝にはブルーライトや日光を浴び、脳に今は朝と認識させることが目覚めにつながります。

 

 

最後に医師から一言

診察する医師と患者

 

睡眠は一日の多くを占める活動であり、健康にも大きく関係しています。しかし、その適切さを評価する医学的な検査はまだなく、「これさえ飲めば3時間睡眠でよい」というようなサプリメントや薬も開発されていません。

 

医学的にもまだまだ未知の部分が多い領域が、睡眠という行為なのです。

 

(監修:Doctors Me医師)

 

参考資料

*1平成27年度 国民栄養・健康調査(厚生労働省) 

*2 Bayon, V., Leger, D., Gomez-Merino, D., Vecchierini, M., & Chennaoui, M. (2014). Sleep debt and obesity. Annals of Medicine, 46(5), 264-272.

*3 Sun, X., Zheng, B., Lv, J., Guo, Y., Bian, Z., Yang, L., . . . Yu, C. (2018). Sleep behavior and depression: Findings from the China Kadoorie Biobank of 0.5 million Chinese adults. Journal of Affective Disorders, 229, 120-124.

*4 Johnson, S. C., Koscik, R. L., Jonaitis, E. M., Clark, L. R., Mueller, K. D., Berman, S. E., . . . Sager, M. A. (2017). The Wisconsin Registry for Alzheimers Prevention: A Review of findings and current directions. Alzheimer's & Dementia, 10, 130-142.

*5 Vaughn, C. B., Freudenheim, J. L., Nie, J., Sucheston-Campbell, L., Wactawski-Wende, J., Marian, C., . . . Ochs-Balcom, H. M. (2018). Sleep and Breast Cancer in the Western New York Exposures and Breast Cancer (WEB) Study. Journal of Clinical Sleep Medicine, 14(01), 81-86.