花粉症の季節は終わったのになかなか鼻炎の症状が治まらない… それって、もしかするとハウスダストアレルギーかもしれません。

 

アレルギー性鼻炎の治療というと、内服薬や点鼻薬などをイメージされる方も多いと思いますが、そうした対処療法だけでなく根治が期待できる「舌下免疫療法」という治療法があるのをご存知でしょうか。

 

今年からハウスダストアレルギーの舌下免疫療法の対象年齢が5歳に引き下げられ、ますます多くの方が使用可能なものとなっています。このハウスダストアレルギーと舌下免疫療法について、医師の岡田先生に解説していただきました。

 

 

ハウスダストアレルギーとは?

アレルギー性鼻炎を気にする女性

 

ハウスダストとは、ダニの死骸や糞、衣類などの繊維クズ、ホコリ、カビ、毛など1mm以下の肉眼では見えないような細かい物質の総称です。

 

実際は、そのハウスダストの多くがダニの死骸や糞であるため、ハウスダストが引き起こすアレルギーはダニアレルギーと同意義に考えられています。

 

年中の鼻炎症状を引き起こす(通年性アレルギー性)鼻炎の主な原因はダニによるものです。さらに、家にいるダニのほとんどは「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」であると言われ、通年性アレルギー性鼻炎の治療はこうしたダニへの対策ということになります。

 

スギ花粉などの季節性アレルギー性鼻炎と同じように、ダニの通年性アレルギー性鼻炎の症状はくしゃみ鼻水、目のかゆみなどがあげられます。両者の違いは、原因となる花粉が飛ぶ季節に鼻炎症状を発症するか、季節に関係なく鼻炎症状を発症するかです。

 

 

舌下免疫療法とは

アレルギー性鼻炎の治療中

 

免疫療法とは、体をアレルギーに慣れさせる治療法です。病気の原因となる抗原(アレルゲン)を少ない量からゆっくり増やしつつ体内に入れ、アレルゲンに体を慣れさせていきます。

 

従来のアレルギーに対する内服薬などは対症療法と呼ばれ、症状を抑えるものであるため、薬をやめると症状が再発してしまいます。一方、免疫療法は症状を抑えるだけでなく治癒を期待することができる唯一の治療法と考えられています。



対象年齢は? 

免疫療法の対象年齢は、ダニの場合5歳以上となりますが、子供がこの治療法について協力的でない場合には実施するかの検討が必要となります。また、重い気管支喘息の方は重症化する恐れがあるため治療を受けることができません。

 

さらに、高齢の方、妊婦の方、授乳中の方、口の中に傷や炎症のある方、重症の心疾患、肺疾患及び高血圧症がある方、他のアレルゲン免疫療法を受けている方(※海外では同時舌下投与が始まっていますので、いずれ日本でも承認される可能性があります)、全身ステロイド薬の投与を受けている方、スギやダニ以外のアレルゲンに対しても反応性が高い方、他に服用中のお薬がある方に対しての投与は慎重な検討が必要です。

 

また、投与の前後2時間は激しい運動やアルコールの摂取、入浴などを避けることが必要です。

 

どういう治療?

舌下免疫療法は、薬を1分間舌の下で保持した後に飲み込むことが特徴です。その後5分間はうがいや飲食はできません。最初の1週間と2週目以降で服用する薬の成分量が異なり、どちらも一日一回一錠を服用します。

 

免疫療法をする場合、毎日の通院は不要ですが、定期的な通院が必要になります。特に初回投与の場合には、投与後30分間は医師の監督のもと安静が必要です。

 

通院頻度は治療を行う施設の主治医と相談していくこととなります。治療開始時期はダニなどの通年性抗原の場合には1年のうちいつから免疫療法を開始しても良いとされています。

 

2〜3ヶ月治療を継続すれば治療効果が現れる方もいますが、通常は体質改善におよそ3〜4年かかります。少なくとも2~3年間毎日舌下投与が必要です。

 

副反応は? 

舌下免疫療法には副反応があり、口の中のむくみやかゆみ、耳のかゆみなどが主な症状として挙げられます。

 

副反応は服用後30分以内に出ることが多く、また、服用後1カ月前後によく出ます。しかし、1週間以上の期間に渡って長期的に副反応が繰り返されることはあまりありません。さらに多くの副反応は30分以内に消失することが多いです。ダニの免疫療法の場合には約60%程度の方に副反応が出るという報告があります。

 

命にかかわるような副反応はきわめて稀であり、安全とされますが、重篤な副反応(呼吸困難、全身の発赤、顔のむくみ喘息症状)が見られた場合はすぐに救急車を呼ぶなど、迅速な対応が必要です。

 

治療の効果は?

免疫療法の治療効果が出る方は全体の約80%です。そのうちのおよそ20%の方が完全に症状が出なくなり、残る60%程度の方も症状が軽くなります。残念ながら約20%の方は治療効果がありません。

 

 

ダニアレルギーの方が行うべき日常の対策 

気温25度、湿度60%でダニは爆発的に繁殖しますので、気温と湿度管理が重要になります。また、ダニは人の皮膚や垢を餌にするため、布団やまくらにいることが多いです。掃除や洗濯ではアレルゲンとなるダニの死骸や糞を除くことができても、生きているダニを除くことはできません。そのため、市販のダニ駆除用のスプレーやダニ対策の布団乾燥機などもお勧めです。

 

 

最後に医師から一言

舌下療法を試す女学生

 

ダニアレルギーの舌下療法は、いまや4人に1人がかかっているとされるダニアレルギーを若いうちに治療する方法として関心を集めています。

 

すべての重症度(軽症、中等症、重症)の方に推奨されていて、特に複数の薬の使用でも充分な効果がえられない方、薬の量を減らしたい方、眠気などの薬の副反応が出る方、数年後に高校・大学などの受験を控えている方、数年以上先に妊娠を考えている方などにおすすめです。

プロフィール

監修:耳鼻咽喉科 岡田先生
1982年生まれ、2000年群馬県内の県立高校を卒業後、同年4月に私立大学医学部医学科に入学。2006年3月に同大学卒業後、研修医として市中病院を2年間勤務。その後、大学病院に勤務し、2010年4月、大学院に入学、頭頸部癌、感染症を主に基礎研究を行い、医学博士を取得。