9月は『血液がん月間』―血液がんって?みんなで考えてみませんか

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Doctors Me スポンサードコラム

みなさんは「血液がん」という言葉を聞いたことがありますか?また、どんな病気を想像しますか?

「血液がん」とは血液細胞が分化する過程でがん化することによって起こる病気の総称で、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫を三大血液がんと呼びます。特に白血病は、メディアでの報道だけでなく映画やドラマなどでも取り上げられることが多い疾患ですので、詳しくわからなくても病名は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

以前から血液がんは「不治の病」というイメージが強く、社会には血液がんに対する誤解や偏見も存在しているようです。しかし近年、血液がんの治療はめざましく進歩しており、「治癒」を目指せる可能性も出てきています。

9月は「血液がん啓発月間」

こうした血液がんを取り巻く状況をより多くの人に知ってもらうため、9月を「血液がん啓発月間(Blood Cancer Awareness Month)」とする動きが世界各国で始まっています。日本においても「乳がん啓発月間(Breast Cancer Awareness Month、毎年10月)」や「ピンクリボン運動」などが広まっていますが、それらと同様に「血液がんについて社会全体での理解を深める啓発活動」のための取り組みです。

血液がんの可視化(Make Blood Cancer Visible)

ヤンセンファーマが始めた「血液がんの可視化(Make Blood Cancer Visible)」レポートは、まだまだよく知られていない血液がんについて、血液がんを克服した人の体験談や血液がんそのものについての正しい情報を公開することで、血液がんやその患者を社会からきちんと「見える」存在にしていこうとするものです。

実は、このレポートのモチーフは日本の「千羽鶴」がモデルになっており、白血病に立ち向かうため千羽鶴を1000羽以上折り続け、千羽鶴の文化を日本に作った佐々木禎子さんのエピソードが取り入れられています。

また、「見えない敵」である血液がんを見えるようにすることは、いままで患者とその家族だけの問題であった血液がんをより多くの人に知ってもらうというだけでなく、これまで血液がんが見えていなかった多くの人々からも「見えるもの」にしていくことを目指しています。
ヤンセンファーマの
「血液がんの可視化
(Make Blood Cancer Visible)」
レポートを見る


そこで今回は、より「血液がん」についてみなさんに知ってもらうために、医師に解説して頂きました。

血液がんとは?

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血液が“がん”になるって、どういうこと?

血液がんは、血液細胞ががん化することで起こります。血液細胞は、造血幹細胞という骨髄中の細胞が分裂して作られます。造血幹細胞は分裂すると骨髄系とリンパ系と呼ばれる特徴を持つ幹細胞になります。幹細胞は正常な細胞のみが必要な分だけ増え、できそこないの細胞や役目を終えた細胞は死んでいくという秩序を保っていますが、何かのきっかけで秩序を失うと、正常な機能を持たない細胞が増えすぎ、血液の機能を果たすことができなくなります。これが血液のがんです。

正常な細胞ががん化する原因は、ウイルスや細菌の感染、放射線や薬剤の影響、加齢、生まれつきの遺伝子・染色体の異常などによって遺伝子の異常が引き起こされることによります。

三大血液がん-白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫とは

血液がんにはたいへん多くの種類があります。ひとことで血液がんといっても、その中で細かく分類され、症状や治療法、生存率などが異なります。

三大血液がんと呼ばれる白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫について、それぞれどんな疾患なのか、ご説明しましょう。

【白血病】
白血病とは、未成熟な白血球ががん化して、異常な白血球が血液中で無秩序に増えてしまう病気です。白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病の4種類に分類することができます。具体的に説明すると、骨髄性白血病とは骨髄系の細胞が異常増殖した状態、リンパ性白血病とはリンパ系の細胞が異常増殖した状態、急性白血病とは成熟していない若い白血球が異常増殖するもの、慢性白血病とは未熟なものから成熟した細胞まですべてが異常増殖するものを表します。白血病でよくみられる症状には、だるさ、貧血、出血、あざ(皮下出血)、感染、肝臓や脾臓(ひぞう)の腫れ、発熱、骨の痛みなどがあります。


【悪性リンパ腫】
悪性リンパ腫とは、リンパ球(白血球の1種)ががん化した病気で、リンパ節が腫れたりしこりができたりします。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別され、日本人においては大半が非ホジキンリンパ腫です。リンパ節は体の表面付近からお腹の中まで全身に存在しますが、体の表面に近くリンパ節が密集している首周辺・わきの下・足の付け根の腫れで気づかれる場合が多いようです。病気が進行すると、リンパ節の腫れ・しこりが大きくなって全身に広がる、発熱、体重減少、寝汗がひどくなるなどといった全身症状が起こります。


【多発性骨髄腫】
多発性骨髄腫とは、血液細胞の1種である形質細胞ががん化する病気です。形質細胞は、白血球の1種であるB細胞が分裂してでき、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入した際にそれらを攻撃する働きがあります。形質細胞ががん化し骨髄腫細胞となると、骨髄の中で増殖し、M蛋白という物質を大量に作ってしまいます。これらの骨髄腫細胞、M蛋白がさまざまな臓器で症状を引き起こします。具体的な症状としては、貧血、感染、出血、さらにM蛋白が増殖することにより腎臓の障害、血液循環の障害、骨の痛み、圧迫骨折などが起こることもあります。


血液がん患者は日本でどのくらいいるの?

2013年の統計によると、日本で1年間に血液がんと診断される人は、白血病が約12,000人、悪性リンパ腫が約25,000人、多発性骨髄腫が約6,000人とされています(※1)。

(※1)参考:
国立がん研究センター がん情報サービス がん統計


映画やドラマでの「怖い病気」というイメージから、世間では「血液がん=不治の病」というイメージが強いようですが、実際のところはどうなのでしょうか?医師に聞いてみました。

血液がんは不治の病なの?


Doctors Me医師


血液がんの“治療の難しさ”

血液がんの場合、血液細胞は体中をめぐっているので、例えば肺がんや胃がんのように臓器の中のがん化した部位だけを手術で取り除けば良いということはなく、全身に向けた治療が必要です。主な治療法は抗がん剤などの薬による治療と、健康な造血幹細胞の移植です。


抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える働きがありますが、正常な細胞も傷つけてしまうため副作用として色々な症状が出ます。血液細胞は全身を動き回っており、がん化した血液細胞は増殖能力が強いため、治療で殺せなかった細胞が残っていると再び増殖(再発)して治癒に結びつきにくいことなどが、抗がん剤による治療の難しさです。

造血幹細胞移植とは、血液を作り出すもととなる造血幹細胞を移植によりそっくり入れ替える治療法です。患者自身の造血幹細胞を移植するもの(自家移植)と、健康なドナーから提供された造血幹細胞を移植するもの(同種移植)があり、移植に使用する細胞や移植前の処置などと併せて、患者の状況から総合的に最適な移植方法を選びます。

移植は有効な治療法ですが、移植前には体内の異常細胞をすべて殺しておく必要があり、その処置においては体の免疫機能が大きく落ちてしまうため感染症を引き起こす可能性があります。また、移植した細胞が上手く体に馴染まなかった場合に起こる拒絶反応などで命を落としてしまうケースもあり、注意が必要です。

治療への“希望”とは

近年、さまざまな薬剤や治療法の開発により、血液がんの治療成績は徐々に改善しています。以前は、増殖する能力が高いがん細胞だけでなくその周囲のある細胞も殺してしまう治療が主流でしたが、最近では、がん細胞特有の増殖システムを見つけ出し、そのシステムを分子レベルで妨げたり、がん細胞だけを殺したりといった治療も増えています。これによって、正常細胞へのダメージが減り、副作用による患者への負担が少なくなることが期待されています。このように、長い間、不治の病だというイメージの強かった血液がんにも、治癒への希望の光が見えつつあります。


ただ、その一方で、治癒を達成できる患者はまだ少ないのが現状です。血液がん治療の現在について、医師はこう語ります。

血液がんの治療目標は「治癒」だけではない?

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血液がんの生存率は?

血液がんの生存率は年々改善しています。例えば一言で白血病といってもタイプによって生存率は異なりますが、大きくまとめると白血病と多発性骨髄腫の5年生存率は4割程度(※2)、悪性リンパ腫の5年生存率は6割程度(※2)です。

(※2)参考:
国立がん研究センター がん生存率の推移に関する大規模国際共同研究
国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計


治療の副作用の改善

一般的に、抗がん剤に対して、「副作用で脱毛が起こる」「長期入院での点滴治療が必要」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし、最近では飲み薬も増え、入院ではなく通院で治療されている方もいます。また、先に述べたように新しい薬剤が開発され、副作用が軽減されることで、患者の負担も少なくなってきました。ただし、すべての副作用がゼロになったわけではありませんので、安全性の注意は引き続き必要です。

治療以外で患者へのサポートを

治療以外でも、働きながら治療を行う体制のサポートや、医療費の公費負担(高額療養費制度)、患者・家族の心のケアを行う体制も整いつつあります。また、若くして血液がんになり治療を行う人が、将来子供を作りたいと思う場合のために、卵子や精子を採取して凍結保存するといったケースも増えてきています。このように、血液がん患者が、社会においてその人らしい生活が送れるようになっていくことが期待されています。




QOL(生活の質)という考え方

近年、がんからの生存のみを目的とした治療ではなく、QOL(Quality Of Life、生活の質)の向上も重視されるようになりました。副作用の大きい治療や、リスクが高い治療をした場合、疾患そのものではなく治療によって亡くなってしまう場合や、がんから生還したとしてもその後の生活にマイナスの影響を与えてしまう場合もあります。

こうしたことから、患者自身がより自分らしい生活を継続できるよう、がんに罹っていないときの生活を基準とした「QOL」の向上も重視されるようになりました。これまでの「がんの発症、治療、治癒を目指す」という考えから「どれだけ患者自身の生活が充実しているか」という考えへと変化することによって、がんをコントロールしながら元の生活に近づける、といった発想が生まれています。

こうした変化の背景には、先に述べた副作用の少ない抗がん剤や、通院での服用が可能な抗がん剤の登場など、がん治療自体の選択肢が増えたことで、より患者の生活に合わせた治療を選択できるようになったこともあります。

ただし、「元の生活に近づける」ためには、患者本人だけでなく周囲の人や社会全体の協力が必要となります。これまでのがん治療は、患者と医療者、患者を支える家族、といった患者を中心としたごく限られた人々の中での出来事でした。しかし、がん患者を元の生活へと近づける=QOLを向上させるためには、周囲の人々や社会全体の理解と協力がとても重要な要素です。

血液がん患者のQOL向上のためにできること

がん患者のQOL向上のためには、周囲の人々の理解や協力が不可欠ですが、そのための第一歩となるのが「血液がんについて知ってもらうこと」です。実は日本を含むアジア太平洋地域では、血液がんに対する認知度が低く、患者が社会的な苦しみを受けているという現実があります。例えば、血液がんが不治の病だというイメージが強いために、血液がんの診断を「死の宣告」のように受け止めてしまったり、貧血や、血液がん患者との接触ががんの発症原因になるなどの誤解・偏見があったり、誤った認識が根強く残っています。

血液がんについて「どんな病気で、どんな治療法があるのか」ということだけでなく、「患者がどのような苦しみを抱えているのか」ということも正しく認識することで、患者への誤解や偏見をなくすことができます。そして、知ることは直接的なケアやサポートではないものの、病気に対する正しい認識が社会にきちんと浸透することで、社会全体での患者サポートが促進されるのではないでしょうか。

ヤンセンファーマ株式会社
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