夏は熱中症に要注意!といわれてしっかり対策をしていた人も多いと思いますが、少し過ごしやすくなってきたこの時期は、みなさん意外と油断していませんか?

 

暑い日は血栓ができやすくなり心筋梗塞脳梗塞などを招く可能性があるようなんです。しかも、暑い時期の心筋梗塞や脳梗塞は、熱中症の初期症状に間違われることもあるそう。

 

今回は、暑い日に注意したい心筋梗塞や脳梗塞について医師に話を伺いました。

 

 

暑い日の血栓と心筋梗塞・脳梗塞の関係とは?

動脈硬化の仕組み

 

そもそも心筋梗塞とは

心臓にはドクドクと拍動することで全身に血流を送り出す機能があります。心臓自体は冠動脈という動脈によって心筋の細胞に栄養をもらい、力強く拍動することができます。

 

しかし、冠動脈にコレステロールなどが徐々に蓄積されていくと、動脈硬化が進み血管の中は狭くなっていきます。すると血流が低下していき、心筋の細胞に十分な栄養を送ることができなくなり細胞が壊死してしまいます。

 

これを心筋梗塞といい、虚血状態になると胸痛の症状が出てきます。

 

そもそも脳梗塞とは

脳梗塞は、脳動脈に流れる血流が低下し脳細胞に必要な栄養が届かなくなることで起こります。症状としては、顔や体の左右片側に麻痺として出てくることが多いです。

 

なぜ暑い日に注意が必要なの?

暑い日は体が脱水傾向になり、血液中の水分も不足しやすくなります。血液から水分がどんどん抜けてしまうと、ドロドロの濃い血液となり固まりやすくなります。この血液が固まったものを血栓といいます。

 

血栓ができ血管内に詰まると血流が少なくなり虚血状態を生み出すため、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすくなります。

 

ともに命に関わる疾患であり緊急度が高く、発症したら救急車で医療機関を受診することになります。

 

 

要注意の初期症状とは?

胸が痛む女性

 

心筋梗塞の場合

血栓によって心筋梗塞が起こると、初期症状として強い胸痛があります。その他にも倦怠感、冷や汗、吐き気などの熱中症と似たような症状もありますが、熱中症だけでは強い胸痛は起こりません。

 

そのため、30分以上続く強い胸痛があれば、心筋梗塞を疑ってください。

 

脳梗塞の場合

脳梗塞の初期症状として要注意なのは、顔や体の左右どちらかに力が入らなくなる症状がみられたときです。

 

左右の手を握ってみて握力が左右で明らかに違うときや、両手を上げてバンザイをしたときに左右どちらかの腕が上がらないなどの場合は、脳梗塞を強く疑ったほうがよいでしょう。

 

顔の左右どちらか一方の力が入りにくいときなどは、ろれつが上手く回らなくなるということもあり、同じく注意が必要です。

 

 

血栓を作らないようにするには

経口補水液など

 

脱水こそが血液中の水分不足を導き血栓を作ってしまう原因です。血栓を作らないようにするためには、脱水を予防することが最も大切になります。暑い日はこまめな水分補給をしっかり行いましょう。

 

しかし、水分補給といっても何でもよいわけではありません。水分補給の目的でアルコールや、カフェインを含む緑茶を摂取するのはやめておきましょう。利尿作用が強く、摂取しても排尿といったかたちで脱水を促進してしまいます。

 

水やウーロン茶の摂取は水分補給に向いていますが、ナトリウムなどのミネラルの摂取も同時にできるスポーツドリンクや経口補水液が一番推奨されています。

 

飲み方としては、一気に多量に摂取するのではなく、1時間あたり100cc程度などこまめな摂取方法が有効です。

 

 

最後に井上先生から一言

水分補給する男性

 

心筋梗塞や脳梗塞は、気温が寒くなる冬に患者数が増えるイメージがあるかも知れません。しかし、暑い日には脱水が引き金となり起こる可能性があります。

 

心筋梗塞も脳梗塞も命に関わる危険度の高い疾患ですので、何よりも予防が大切です。

 

過ごしやすくなってきたとはいえ、まだ日中などは暑い日もあります。上記にあげたような特有の症状がみられたら、疑った時点で救急車を呼び、早急に医療機関に搬送してもらいましょう。

プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。