若い男性に起こりやすいと言われている気胸ですが、女性特有の月経に伴って起こる珍しい気胸があることをご存知ですか?

 

今回は、子宮内膜症の増加によって今後患者数が増える可能性もあるという「月経随伴性気胸」について、医師に解説していただきました。

 

 

そもそも「気胸」ってどんな病気?

 

肺は、背骨・肋骨・横隔膜などで囲まれた空間にあります。この空間は胸腔と呼ばれ、通常は肺と肺を取り囲む肋骨などとの間にはほとんどスペースがありません。

 

しかし、何らかの原因で肺がやぶれて穴があくと、呼吸で吸いこんだ空気が肺の外である胸腔に漏れ出します。その結果、胸や背中に痛みが起こり、肺活量が減るため息苦しさが生じます。

 

また、肺がやぶれた部位から血が出るため、血の混じった痰が出る場合もあります。これが気胸という状態です。

 

 

月経随伴性気胸の特徴

 

珍しい気胸として、月経がある女性に起こる月経随伴性気胸があります。

 

月経随伴性気胸は、月経開始の3~4日ほど前から月経開始後に発症します。この気胸の8〜9割は、右の肺に起こるとされていますが、左や両方の肺に起こることもあります。

 

特に32~35歳の女性で初めて発症することが多いとされ、一度発症すると何度も再発することがあります。ケガなど他の原因がない気胸のうち、3~6%が月経随伴性気胸の特徴に一致すると考えられています*。

 

 

原因は? 

 

子宮の内側には、子宮内膜という組織があります。子宮内膜は、ホルモン状態によって分厚くなったり、月経のときに崩れ落ちたりしています。

 

この子宮内膜組織が、何らかの理由で肺の表面や横隔膜にもできることがあります。そして、ホルモンの変動を感知して、子宮内の子宮内膜と同じように月経の時期に崩れ落ちることで、肺や横隔膜に穴があくのではないかと考えられています。

 

子宮内膜組織が子宮以外の場所にできるのはなぜ?

 

なぜ子宮内膜組織が子宮以外の臓器にできるのか、確かな原因はわかっていません。

 

「血液の流れに乗って細胞が体内を流れて行ったのではないか」「子宮内にあった子宮内膜が、卵管を逆流し腹腔*内を流れ、横隔膜に取りついたのではないか」「空気が子宮と卵管を逆流して腹腔に入り、横隔膜に生まれつきあいていた小さい穴から空気が胸腔内に流れ込んだのではないか」などと推測されています。

 

* 腹腔:腸などがあるスペース。横隔膜の向こうに肺がある。

 

 

治療法は? 

 

安静にして自然に治るのを待つ

肺にあいた穴は、自然にふさがることがあります。漏れた空気が少量で、息苦しさなどの症状が軽ければ、安静にして自然に治るのを待つこともあります。

 

ホルモン治療

子宮内膜組織はホルモンによって増えたりしぼんだりするため、ホルモン治療を行うこともあります。しかし、副作用もあり、長期間の治療は難しいと考えられています。

 

手術

手術では、肋骨の間に2㎝ほどの穴を2〜3か所あけ、その穴からカメラやピンセットを差し込んで操作します。肺の表面や横隔膜を観察し、子宮内膜組織がある部分を切り取ります。

 

月経随伴性気胸は、残念ながらいずれの治療をしても再発しやすく、治療後数年してから再発することもあるといわれています。

 

 

最後に医師から一言 

 

月経前や月経中に胸の痛み・息苦しさなどがある場合は、呼吸器内科に相談することをおすすめします。

 

参考資料

Tomasz Marjański, et al. Kardiochir Torakochirurgia Pol. 2016 Jun; 13(2): 117–121.