子どもの頃に「お盆を過ぎたら海にはクラゲがいっぱいで刺されるから今年はもう泳がないほうがいい」と言われたことのある方もいるのではないでしょうか。

 

そこで今回は、クラゲに刺されたときの症状と対処法について、建部先生に解説していただきました。

 

 

お盆明けからクラゲが増える?

実は、日本の海には、梅雨明け頃からすでに大量のクラゲの赤ちゃんが漂っています。しかし、赤ちゃんクラゲのうちは、刺されてもほぼ気付きません。

 

クラゲの種類によって多少異なりますが、クラゲの成長に伴いヒトへのダメージが大きくなるのがお盆を過ぎた頃なのです。

 

 

クラゲに刺されたときの症状

 

クラゲに刺されたときの症状は、毒によって異なります。今回は「タンパク質毒」「ペプチド毒」2種類に分けて解説します。

 

タンパク質毒(出血毒)による症状

タンパク質毒は、刺された部分を中心に作用します。全身に行き渡りにくいため、死亡リスクは低いです。

 

今の時期によく遭遇するクラゲ毒の症状は、タンパク質毒のほうです。ダメージは局所的な範囲にとどまることがほとんどです。

 

タンパク質毒による主な症状としては、以下が挙げられます。

・やけどのようなヒリヒリしたやや激しい痛みやチクチクした痛み

・刺された部分の腫れや赤み、持続する痛み、かゆみ

・線状にできる腫れや蕁麻疹のような発疹

・刺された部分を中心とした瘢痕(はんこん)化

・稀に刺された部分のケロイド化 など

 

ペプチド毒(神経毒) による症状

ペプチド毒は、刺された部分の症状よりも全身症状、特に神経系に影響が出やすいです。全身に行き渡りやすく、神経系を介した筋肉運動に影響が出やすく、死亡リスクがあります。

 

ペプチド毒による主な症状としては、以下が挙げられます。

・吐き気、嘔吐

・みぞおちの辺りの痛み

・頭痛

・筋肉痛

・けいれん

・意識が遠のく感じやふらつき

・呼吸困難

・尿量減少

・むくみ

・食欲低下

・全身倦怠感

・急激な血圧の変動

・心停止 など

 

 

クラゲに刺されたときの対処法

触らずこすらず海水で洗い流す

クラゲに刺されて、ヒリヒリ、チクチクとした痛みの自覚症状ある場合は、触らず、こすらず、海水で丁寧に洗い流してください。

 

水道水やアンモニア水、酢などで洗い流してしまうと、浸透圧の差によってクラゲの刺胞が破壊され、痛みや腫れがひどくなるため注意してください。

 

砂をかけて揉むようにして刺胞を取る行為も、刺胞を肌にすり込んでしまうため、間違った対処法です。

 

通常は、海水で丁寧に洗い流すだけでも、クラゲの触手や刺胞はある程度除去されます。それでも残ってしまったものについては、受診先の医療機関でしっかり取り除いてもらいましょう。

 

局所的な症状に対しては、抗ヒスタミン剤かステロイド剤の軟膏やクリームを塗ります。

 

 

日本にいる要注意クラゲ4

アンドンクラゲ

 

アンドンクラゲは、主に日本沿岸・韓国の東海岸に多く生息し、特にお盆の時期に多数出没します。

 

ほぼ透明のため肉眼での確認が難しく、日本国内において最もクラゲ被害を起こしているとされています。

 

刺されると、電撃痛と呼ばれる刺された部分から広がる激しい痛みや紅斑、丘疹が出ることが特徴です。

 

ハブクラゲ

 

ハブクラゲは、主に沖縄・奄美諸島など亜熱帯エリアに多く生息し、夏に出没します。半透明のため、肉眼で確認可能なことがあります。

 

アンドンクラゲに比べて触手の本数が約7倍と多く、さらに太い触手を持つため、一度に注入される毒の量が他の成体クラゲに比べ多いことが判明しています。

 

ハブクラゲに刺されると激しい痛み、腫れ、水疱化、ケロイド化のほかに、意識混濁、呼吸抑制、不整脈などが起こり、最悪の場合はアナフィラキシーショックを起こし、死に至ることもあります。

 

カツオノエボシ

 

カツオノエボシは、厳密にはクラゲではなく「クラゲ類」です。春から夏にかけて世界中の沿岸に出没するリスクがあります。日本では本州の太平洋沿岸でよく見られ、カツオが到来する時期に海流に乗って浜辺に運ばれます。

 

ガラス細工のような青~淡紫色をしていて、烏帽子のように見えます。

 

刺されると激しい痛み、紅斑、ケロイド化のほか、呼吸困難、不整脈、腎臓の損傷などが起こり、アナフィラキシーショックで命を落とす場合があります。

 

アカクラゲ

 

アカクラゲは、日本近海の北海道以南に広く生息しています。関東以南では、主に45月の春頃に、東北付近では79月の夏頃に多数出没します。

 

アカクラゲは、傘の部分が赤っぽい色をしており、16本ある放射状の縞模様が特徴です。

 

刺されると火傷のような非常に強い痛みや紅斑、水疱、ミミズ腫れが出るほか、アナフィラキシーショックを起こして命に関わる場合があります。

 

 

建部先生からのアドバイス

クラゲに刺されないためには、クラゲ侵入防止用ネットを張っている海水浴場を選びましょう。ネットの隙間からちぎれた触手が入ることもあるため、クラゲ除けローションの活用もおすすめです。しっかり厚塗りすることがポイントです。

 

浜辺に打ち上げられたクラゲにも触らないように注意してください。

 

特に小さな子どもと国内の海水浴場で遊ぶ場合は、最寄りの医療機関を下調べし、スマートフォンに連絡先を登録しておきましょう。クラゲ被害にあってしまったときに、パニックにならず落ち着いて対応できると思います。

プロフィール

監修:医師 建部 雄氏
京都市生まれ。社会人を経て医師を志す。2001年、昭和大学医学部医学科卒業。 卒後、東京都内の大規模総合病院にて救急科の経験を積む。 その後、阪神淡路大震災において内科医が避難所等で切実に必要とされていた事実を知り、より多くより幅広く患者さんに対応できる医師を目指して総合内科へ転向を決意。 急性期病院・クリニックの勤務を経て、最も身近な医師としての研鑽を積んでいる。 現在は、横浜市内の総合病院に勤務中。週末を中心に休日夜間の非常勤先病院 救急外来勤務をほぼ趣味としており、失敗も成功も含めて経験は豊富。