誰もが避けては通れない大切な人との別れ。

 

心の準備ができないままに愛する人を失ったとき、人は深い悲しみ(グリーフ)を経験するといわれています。

 

そんなとき、周囲にいる人はどのように見守り、寄り添い、援助していったらよいのでしょうか。

 

悲しみにくれ、心身に大きな負担がかかっている人に寄り添うために知っておくべき「グリーフケア」という考え方について、精神科の井上先生に解説していただきました。

 

 

目次

 

 

死別ケアとも呼ばれるグリーフケアとは?

死別の悲しみ

 

私たちはいつ、どのような形で最期のときを迎えるか選ぶことはできません。つまり、残される側から見ても、大切な人とのお別れが、いつ、どのようにやってくるかは、そのときを迎えるまで分からないということです。

 

大切な人を失った後は、非常に大きなストレスを受けます。それに伴って現れる肉体的および精神的な負担や困難を、少しでも軽減し回復を促す総合的なサポートのことを、グリーフケアと呼びます。

 

 

大切な人との死別はどう乗り越える? 

死別の悲しみから回復するプロセス

 

回復のプロセス

愛する人と死別した後の心の回復プロセスでは、まず最初に数時間から1週間程度は無感覚な状態が続くと言われています。

 

その後に、失った人物を探したり恋しく思ったりするようになります。この状態が数カ月は続き、長い人では数年かかることもあります。

 

そして、喪失が永遠に続く事実であると受け入れることができるようになると、混乱や絶望に苦しみながらも、何とか日常生活を立て直すようになるのです。

 

回復には時間がかかる

大切な人との死別を経験された方は、みな口をそろえて「回復には時間が必要」と言います。時間が心を癒して、悲しみが徐々に和らいでいきます。

 

以前は、悲嘆のピークは6カ月までと考えられていたこともあったようですが、実際には回復するまでの時間は人によっても異なります。回復までの時間を明確に定義することは、死別を経験された方のプレッシャーにもなるため適切ではありません。

 

 

悲しんでいるとき身体の中では何が起こっている? 

死別の悲しみにくれる女性 

死別による深い悲しみは身体的にも大きな影響を与えます。様々な研究により、大切な方との死別から6カ月以内の死亡率の上昇が指摘されています。

 

死亡率の上昇に影響を与える要因として、心疾患・精神疾患・自殺などが挙げられています。

 

また、配偶者との死別を経験した人は、うつ病の基準を満たす割合が上昇します。

 

さらに自殺に関しては、男女ともにどの年代でも、配偶者と死別を経験した人の自殺死亡率は、有配偶者と比較して数倍高いという結果が出ています。*

 

 

グリーフケアの方法は?

医療サポート

 

グリーフケアを実践するには

悲しむ人をサポートするグリーフケアに関しては、まず死別を経験した人の力になりたいと思う気持ちが何より大切です。具体的に何をしたらよいか悩む方も多いかもしれませんが、実は特別なことは必要ないのです。

 

死別した人から目をそらさずに、真摯に向き合ってください。気にかけてくれる人がいる、と分かるだけでも心が軽くなることがあります。だからこそ、そのときには相手の思いを尊重して、その考えや思いにそっと寄り添うだけで構いません。

 

 

医療サポート

また、医療サポートを得るべきかの判断は、「複雑性悲嘆」になっていないかの確認が大切になります。複雑性悲嘆とは、死別によって生じる肉体的や精神的な症状が、一般的なストレス反応の程度や期間を超えていると判断される際に使われる用語です。

 

複雑性悲嘆は、具体的には「非常に強い孤独感や寂しさがある」または「その人が亡くなったことを信じることができない」などといった症状があります。もし、複雑性悲嘆によって日常生活や仕事に障害が出るようであれば、早期の医療サポートを受けることが必要です。

 

 

最後に井上先生から一言 

気持ちに寄り添う

 

今まで何度か大切な人との死別を経験したことがある人でも、考え方や捉え方は一人ひとり全く異なってきます。だからこそ、見守る側としては「当事者の体験は最終的には当事者にしか分からない」という謙虚な姿勢が必要になります。

 

たとえ大切な人との死別の経験がなくても、当事者の声に真摯に耳を傾け、その気持ちや思いに寄り添うことがグリーフケアの真髄です。

 

 

参考資料

*自殺対策白書(厚生労働省)