2017年5月に大阪で行われた試合中、首を負傷し長期欠場中していたプロレスラーの高山善廣さんが、9月4日に頸髄完全損傷であることが発表され、回復の見込みが困難であることが分かりました。(参照)

 

一時は人工呼吸器をつけて呼吸をする状況だったことも明かされ、現在はリハビリを行っているとのことです。

 

今回は、脊髄損傷の原因や損傷レベルの種類、診断・治療法などについて詳しく医師にお話を伺いました。

 

目次

 

 

脊髄とは

脊髄の構造

 

脳の下には脊髄(せきずい)という直径1㎝ほどの神経の固まりがあり、背骨の穴の中を通り、お尻のあたりまで細長く伸びています。

 

脊髄は脳からの信号を全身の筋肉や臓器に送り、また全身の感覚神経を集めて脳に情報を送る役割もしています。

 

 

脊椎・脊髄の名称

頚椎の名称

 

頸椎(頚=首のこと)・胸椎・腰椎とは、背骨(脊椎)を部位ごとに詳しく言った名前です。

 

脊髄は首・胸・腹・腰を通っている位置によって、頚髄・胸髄・腰髄・仙髄・尾髄と名前が変わります。

 

例えば、頚髄は頸椎の穴の中を通っており、頚髄に信号を入出力する細い神経が枝分かれして、頸椎のすき間を通って出入りしています。

 

頸髄(C1〜C8)

人間の頸椎は7つの骨が積み重なっています。それぞれの骨のすき間から、脊髄の枝分かれ神経が出入りしています。

 

1番目の頸椎の上から神経を出しているあたりの脊髄をC1と呼び、同じようにC2、C3…と定め、7番目の頸椎の下から神経を出しているあたりの脊髄をC8と呼びます。

 

胸髄(T1〜T12)

C8の下は第一胸椎の下から神経を出している脊髄でT1と呼び、T12まであります。また、Th1と呼ぶ場合もあります(Thとは胸Thoracicの略)。

 

腰髄(L1〜L5)

T12の下は、L1〜L5(Lは腰Lumberの略)となります。

 

 

脊髄損傷の原因

交通事故、転落など「高エネルギー外傷」と呼ばれる怪我が特に危険です。

 

事故

交通事故

 

・車:車体の変形が強く、体が車外に放り出されているような場合です。

 

・バイク:頭はヘルメットで守られていますが、首は無防備なため、頚髄外傷となりやすいです。

 

転落

転落

 

宙返りを失敗して頭から落ちた場合や、浅いプールで飛び込みをして底で頭をぶつけた場合も考えられます。

 

スポーツ

ラグビー

 

コンタクトスポーツ(相手と体どうしでぶつかりあう)と呼ばれる、ラグビー・格闘技(柔道、プロレスなど)での怪我もあります。

 

 

脊髄損傷部位による機能障害

脊髄の損傷

 

脊髄を通っている神経は、脳に近いほど重要な役割を持っています。

 

頚髄

頚髄は、首から下のすべての生命活動に関係する信号を含んでいます。

 

頚髄が損傷すると、手足の麻痺だけでなく、呼吸をつかさどる筋肉や、血圧を調整する自律神経も働かなくなり、ショック死することもあります。

 

C4より上のレベルで脊髄損傷が起こった場合は、自分で呼吸ができなくなり人工呼吸器が必要になり、死亡に至ることも多くなります。

 

腰髄

腰髄は下半身のみに関する信号を運んでいます。

 

事故などで腰髄が損傷した場合は、足が動かなくなり、足の感覚がなくなり、排泄などの下半身の機能に問題が出ますが、手は動き、呼吸や飲食も自分でできます。

 

その他、脊椎に関わる疾患・症状

脊髄の部位ごとの疾患

 

 

脊髄損傷レベルの種類

危険レベル

脊髄損傷といっても様々な程度があります。

 

完全型脊髄損傷

すべての運動・感覚が失われている場合です。

 

完全型の場合、回復は難しく、寝たきりで触られた感覚が分からない状態となりますが、幻の痛みを感じることはあります。

 

不完全型脊髄損傷

多少の運動・感覚は残っている場合です。

 

怪我をした直後は、脊髄がむくむため、不完全型でも完全型のような症状になることもあります。

 

中心性脊髄損傷 

脊髄の中心に近い部分がより強く障害を受けた場合です。

 

足より手の運動麻痺が強いというような症状もあります。

  

 

脊髄損傷と脊椎損傷の関係

首をコルセットで固定

 

怪我などで脊髄が傷ついているとき、その近くにある脊椎も傷ついたり骨折している場合が多く見られます

 

また、折れた脊椎の骨が脊髄を圧迫している場合もあります。

 

交通事故などの現場では、もし頸椎が折れていた場合、不用意に首を動かすことで脊髄を傷つけてしまう可能性があるので、首を固定するコルセットをはめ、硬い担架に乗せて患者を運びます。

 

 

脊髄損傷の診断方法

MRI検査

 

完全型か不全型か、脊髄がどの高さで損傷しているかは、以下のテストで診断を行います。

 

MRI

画像診断を行います。

 

運動・感覚テスト

運動ができるかどうか、感覚があるかどうかを確かめます。

 

深部腱反射テスト

膝の皿の下をハンマーでたたくと無意識に足が跳ね上がるというようなテストで、こういった現象が起こるには脊髄が正常である必要があります。

 

 

脊髄損傷の治療・手術方法

ステロイド注射

 

ショック状態

輸液や脈を保つための薬を使用します。

 

脊髄のむくみ

むくみを取るためにステロイド薬を投与します。

 

脊椎骨折

脊髄が骨折して不安定になっている場合は、手術で固定する場合もあります。脊髄自体を手術でつなぎ合わせることはできません。

 

 

最後に医師から一言

車椅子の男性 

脊髄は脳と同じく中枢神経という種類の細胞でできており、一旦損傷すると生まれ変わることはないとされています。再生医療の成果が期待される分野です。

 

若く健康な方が、交通事故やスポーツ中の事故で脊髄損傷を負い、車いす生活や寝たきり生活となっています。できる限りの予防が必要です。

 

(監修:Doctors Me 医師)