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良い医者ってどんな人だろうか。

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知識が多い、技術的に優れているという名医が、必ずしも良医とはいえない。良医とは、患者の話をよく聞き、患者が適切に判断、行動できるようになるための手助けをする人のことだ。そして、我々知識労働者はそういった良医に学ぶべきことが数多くある。

この記事の執筆者安達裕哉


ティネクト株式会社 代表取締役。1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在はコンサルティング活動を行う傍らで、仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営し、月間PV数は200万を超える。


もう亡くなって10年近くが経つが、祖父は神田で町医者を50年以上もやっていた人だった。

地下鉄銀座線の末広町の駅から歩いて3分ほどの雑居ビルに診療所があり、いつも地元の人が数多く来院していた記憶がある。

そのため、私は少年時代病弱だったが、大抵の病気は祖父にかかり、病院にはほとんど行かずに済んだ。今思えば、非常にありがたいことだ。

こうして昔を思い出すと、祖父が非常に安心感のある医者だったことを思い出す。今思うと、祖父は医者としては大したことをしていたわけではないのだだが、とにかく相談しやすいのだ。

口数は少ないのだが、とにかくこっちがきちんと症状を話せるように心を砕いてくれていた。

昔、祖父にかかっていた、という方に話を聴いても、
「いつもニコニコしてたよね」
「話しやすい先生だった」
と、同じような評価を聞く。

ある一人の年配の夫人は、
「先生、自分がよくわからない病気の時は、「わかんないから、紹介状書く」とすぐに大病院へ送っちゃうんですよ。こちらを慌てさせないし、わかんないものは、分からないって、はっきり言ってくれるから、こっちも安心なんですよね。」
と言っていた。

中学・高校の先輩であり、信頼できる医師の一人である高橋宏和氏は著書「3分医療時代の長生きできる受診のコツ」で、こんなことを言っている。


ー名医より良医ー

ネットや書店には「名医100選」「神の手を持つ名医」という本や情報があふれています。名医はほとんどの場合何かの病気のスペシャリストです。自分の医者人生のすべてを一つの病気や手術に捧げ、だれもまねできないほど努力を続けたからこそ、名医になったわけです。(中略)

そのため、病気の診断がついていなくて「どんな病気かわからないけれど診てほしい」という場合、名医に診てもらえても「私の専門じゃないから」と門前払いされます。

そんな時探すべきなのはまず良医です。良医はゼネラリストで、守備範囲が広いのが強みです。良医は、患者さんの体に関する悩みについてわかることは答え、わからないことは調べます。

治療できることはしっかり治療し、自分の手に余るような病気は信頼できる専門家に紹介します。

(中略)知ったかぶりをしないで「わかりません」「聞いてみます」「調べます」といえるのが良医の証し。



私はこの「良医」の姿が、町医者の祖父と重なった。

古代ギリシャの医師であり、その言葉が現代の医学生の教育にも使われているヒポクラテスは、医師の倫理として「知りながら害をなすな」を言ったという。

医師は専門性が高ければ良い、というものでもないし、わからないことを「わからない」と言わない専門家は罪深いとすら言える。


ピーター・ドラッカーは「知識労働者」の台頭を予言し、実際に世の中はそのとおりになった。現代においては知識を持たない労働者はますます減り、誰もが何かの専門家となることを要求されている。

現代は医師にかぎらず「専門家の時代」なのだ。

ただ、急激な変化についていけず「労働者がどのようにあるべきか」を理解できている人は少なく、不安を抱えている人は多い。

私が職業としていた「経営コンサルタント」もその1つであり、時に企業の医者、と表現されることもあった。

そして、私が上司から「コンサルタントの心得」として教わったことは次の事だった。
「お客さんの話をよく聴くこと」
「大事なのは、お客さん自身が考えて実行することであり、我々が経営を指南することではない」
「知ったかぶりをしないこと、ただし知らなかったことはその日のうちに調べて、次回にお客さん行く時までに話ができるようにすること」
「自分たちにできない時は、できる会社を紹介すること。それがお客さんのためである」

この「コンサルタントの心得」は、「良医としての振る舞い」に非常に似通っているとも感じる。

そう、「知識労働者」がどう振る舞うべきなのか、答えは何千年も前から、良医と呼ばれる人々は知っていた。

適切な医療を受けるだけではなく、医師から「専門家の振る舞い」について多くのことを学ぶことができる。

それが「良医」だ。
  • この記事は、医療・健康に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法、専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません
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監修:Doctors Me医師

Doctors Me医師監修の元、Doctors Me編集部が企画した特集記事をお届けします。

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