【産婦人科医の妊活コラム】Vol.7: 《番外編》婚活、妊活、そして卵活?

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医師:樽井 智子

12年前の卵子で出産!

30歳の女性が、高校時代にがん治療で生殖機能を失う前に卵子を凍結保存し、12年後に受精卵にして子宮に戻し、2014年8月に出産していたことが、昨年末に発表され、それに伴い「卵子凍結」、「卵活」といった言葉が改めて話題になりました。(詳細

このようなニュースに触れると、これからは『若い時に卵子を凍結しておけば、将来、産みたい時に凍結卵子を使って出産すれば良い』と考える方もいるのではないでしょうか?

医学的な卵子凍結と、社会的な卵子凍結

卵子凍結には
・医学的な卵子凍結
・社会的な卵子凍結

があります。

昨年末の報道のようなケースは、医学的な卵子凍結で、以前より実施されてきています。
医学的な卵子凍結とは、悪性腫瘍に罹った女性が、治療(手術、化学療法、放射線療法など)により、妊孕性(にんようせい、妊娠する力)が失われると予測される場合に、妊孕性を温存するために、治療前に卵子を採取・凍結・保存しておくことです。

社会的な卵子凍結とは、女性が将来の妊娠・出産に備えて卵子を凍結することを指します。女性の社会進出に伴い、仕事や婚期など個人の事情に合わせ、出産時期の調整を希望する女性が増えてきた事と、未受精卵の凍結・保存の技術が進歩したことにより、行われる様になりました。

社会的な卵子凍結としては、最近では、アメリカのアップル社やFacebook社が、女性社員の卵子の冷凍保存に対し、資金援助する福利厚生策を導入したことも話題になりました。

卵子凍結の日本での現状は?

このような社会的状況を踏まえ、2013年11月、日本生殖医学会は、健康な女性が将来の妊娠・出産に備えて卵子を凍結するためのガイドライン(社会的卵子凍結のガイドライン)を作成しました。

ポイントは
・40歳以上の採卵や卵子凍結は推奨できない
・45歳以上での凍結卵子を使っての妊娠は推奨できない

となります。

社会的な卵子凍結の場合も、妊娠は45歳まで、ということになります。
医学的には、妊娠適齢期は20歳台で、できるだけ35歳までに自然妊娠をするのが望ましいです。

社会的な卵子の凍結保存は、35歳までの妊娠が、どうしても難しい(パートナーがいない、キャリア形成上状況が許さないなど)時の選択時の一つであると考えて下さい。

卵子凍結の流れ

実際の卵子凍結の流れですが、まず、排卵誘発剤で卵巣を刺激し、卵子を採取し、凍結保存しておきます。 妊娠を希望する際には、卵子を解凍し、体外受精をして受精卵を作り、子宮に移植し、妊娠出産を目指します 。

卵子凍結=必ず将来妊娠・出産出来る?

しかし、凍結卵子(未受精卵)を使った体外受精の成功率は、通常の体外受精よりも低く、凍結した卵子から、すべて良好な受精卵が得られるとは限りません。妊娠するためには、最低10個以上の卵子を凍結保存しておくことが望ましいと言われています。

社会的適応での卵子の凍結を希望する女性が増えていますが、
・卵子凍結によって妊娠できる可能性は高くない
・卵子凍結=将来好きな時に妊娠できるのではない

ことを理解した上で、選択する必要があります。

また、現在一般的には、卵子凍結にかかる費用は70~80万円前後で、卵子1個につき年間1万円前後の保存料が必要となります。

このような状況を含め、社会全体で、女性が妊娠適齢期(20代がベスト、遅くとも35歳まで)に、妊娠、出産出来るような環境作りをしていって欲しいと強く願っています。

~医師:樽井 智子~

樽井 智子Tomoko Kaneko-Tarui, M.D., Ph.D.

1971年生まれ、産婦人科専門医。医学博士。元ハーバード大学医学部・マサチューセッツ総合病院産婦人科講師。
2015年4月より、『事実に基づいた妊活に関する正しい情報を分かりやすく伝えていく』をテーマに、オンライン講座『樽井智子の妊活講座』を開講し、心身を健康にする妊活指導を行っている。
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