気分の落ち込みとのつき合い方と対処方法

典型的なうつ病にあてはまらない気分の落ち込みはどうしたら良い

うつ病というほどではないけど、気分が落ち込んでなんとなく辛い…」という経験はありませんか?生きていると、受診するほどではないけど、気分の落ち込みを早く立て直したい!と思うこともありますよね。

そこで今回は、法政大学現代福祉学部臨床心理学科の末武康弘先生に、気分の落ち込みへの対処法についてお話を伺いました。

 

気分が落ち込みやすくなる5~6月

気分が落ち込みやすくなる5~6月

ゴールデンウィークが終わってしばらく経ちましたね。もうすぐ梅雨を迎えるこの時節、精神的な不調を感じる人も少なくないでしょう。

 

「五月病」や「六月病」という言葉を耳にしたことはありませんか?新年度の緊張や喧騒の時期が過ぎて、社会や学校で成果が求められる時期にさしかかると、気分が落ち込み、思うように仕事や勉強に取り組むことができないと悩む人が増えてきます。

 

医学的には、気分の落ち込みのことを「うつ」と呼びます。「心の風邪」などという比喩とともに、広く理解されるようになってきていますよね。

 

しかし、ひと口に「うつ」と言っても、医学的な治療が必要な「うつ病」から、自己理解や自己表現のあり方などを通してうまく付き合っていくことが必要な「気分の落ち込み」まで、その状態や原因はさまざまです。

心理カウンセリングを受けたAさんの場合

心理カウンセリングを受けたAさんの場合

Aさん(現在20歳代後半、女性、商社勤務)は、新入社員だった頃の自分のことを次のように振り返ります。

Aさんの場合

入社1年目の6月頃から疲労や不眠、食欲不振、気分の落ち込みを感じるようになり、心療内科を受診しました。

 

医学的な助言と薬のおかげで身体的な症状は改善しました。しかし、気分の落ち込みや自信がもてない感じはその後も続いたので、医師のすすめで心理カウンセリングを受けました。

 

そのカウンセリングで、しつけに厳しく体面を気にする両親に育てられた自分が、職場の中でも周囲の評価を気にし過ぎて、自分の意見や思いを全く表現できずにいたことや、その感情が自分の中に重く蓄積していたことに気づいたのです。

 

いわゆる「過剰適応」ですよね。その感情をカウンセラーに伝えることで、少しずつ職場の上司や両親にも自分の気持ちを表現することができるようになりました。そうすることで、気分の落ち込みや自信のなさはそれほど強く感じなくなっていきました。

※プライバシー保護のため、複数の事例をもとに編集したものです。

このAさんの場合は、医学的な治療に加えて受けた心理カウンセリングが功を奏したケースだったと言えます。

 

一般的に精神的・心理的な不調は、本人(および家族や周囲の人たち)にとってコントロールが難しいほど、そして、どう対処すればよいのかがわからないほど、苦しみは深くなります。自分でコントロールできず、どうすればよいのかわからなくなった時点で、医師やカウンセラーなどの専門家の支援が必要であると考えられます。

自分を見つめ直すことで改善することも

自分を見つめ直すことで改善することも

典型的なうつ病は、医学的な治療が必要であることに間違いありません。しかし、ストレスや対人関係などに関連した気分の落ち込みの中には、自己理解や自己表現のあり方を見つめ直し、修正していくことで改善されるケースもあります。

 

また、気分の落ち込みが、自分の生活スタイルにとって大切なメッセージだと気づく場合もあります。例えば、「自分は休息が必要な状態だ」、「人との関わり方を修正したほうがよい時期だ」などです。この気づきを得ることで、気分の落ち込みや波とうまくつき合うことができるようになる人もいます*1

カウンセラーに頼ってみよう

カウンセラーに頼ってみよう

カウンセラーは、自分の気分や状態とのつき合い方や対処法を共に考える専門家です。カウンセラーが近くで見つからないときは、オンラインカウンセリングFor Meをぜひご活用ください。

 

自分の状態がカウンセリングで対処できるものなのか知りたい場合も、カウンセラーの立場から助言することができます。迷ったときは、一度利用していただければと思います。

 

「最近気分が落ち込んで調子がよくないけど、自分の状態がどうなのか相談してみようかな」と思ったときは、カウンセリングを受けてみる機会だと言えるでしょう。

 

参考

*1:うつについてのカウンセリング/心理療法の効果のエビデンスは、クーパー、M.(清水・末武監訳2012)『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』岩崎学術出版社、48頁を参照。