失恋から立ち直れない…つらいときの乗り越え方
2019.07.29
夏が目の前まで近づいてきましたね。夏休みになると、SNSで他人の楽しそうな投稿ばかり見てしまい、自分と比べて落ち込んだり、羨ましく感じたりする方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、法政大学現代福祉学部臨床心理学科の末武康弘先生に、他人と自分を比較して落ち込んでしまうときの対処法についてお話を伺いました。
梅雨明けと真夏の到来が待ち遠しい時期になりました。夏は、一年の中で最も開放的な気持ちになれる季節です。
思い切ったファッションやイメージチェンジ、楽しみにしていたイベントへの参加、訪れてみたかった観光地への旅行など、この季節ならではの計画を立てている人も少なくないでしょう。
一方で、楽しそうに夏のプランを考えたり語ったりしている他人を見て、うらやましく思ったり、自分にはそれほど楽しめるものがないと感じたりする人もいるでしょう。人によってさまざまな原因があるものの、夏は精神的につらいという人がしばしばみられます。
Aさんは、20歳代後半の女性で、メーカの総務課で働いています。
Aさんは、毎年夏が近づくと感じる、うっとうしいような嫌な気分に悩まされてきました。夏季休暇はそこそこ取ることができますし、数年前には会社の同僚と旅行に出かけたこともあったようです。しかし、旅行で同僚と一緒に過ごしていても、自分ひとりで休暇を過ごしていても、心の底から楽しいと思い、リフレッシュできたと感じられることはほとんどなかったと言います。
「私は、ある地方の中核市で生まれ育ち、両親は自営業でお店をやっていました。妹と2人姉妹で、経済的には特に問題なく育ちました。しかし、両親は私よりも妹をかわいがっていました。妹は確かに私よりも見た目がかわいくて、親に甘えたり、とり入ったりすることも上手だったんです。
お店にいるとお客さんたちは、妹に対して「かわいいね」と声をかけるのですが、私にそう言ってくれるお客さんはほとんどいませんでした。学校の勉強は私のほうができたのですが、両親はそのことで私を特に褒めてはくれませんでした。
学校が夏休みのときには、妹は友人たちと遊びに出かけることが多かったです。私は、一人で勉強していることが多く、夏休みを楽しく過ごした思い出はあまりないです。
中学生の頃からは、早く家を出たいと思うようになりました。高校を卒業すると首都圏の大学に進学して一人暮らしを始めました。それからは一人暮らしを続けています。」
※プライバシー保護のため、複数の事例をもとに編集したものです。
Aさんは、両親にいつも妹と比べられて育ち、容姿や友だち付き合いのことなどで妹にコンプレックスを感じていたようです。
Aさんにとっては、両親から妹と比べられ、ネガティブな評価を与えられてきた経験がベースとなり、その後も他人と自分をさまざまな点で比較するようになったのでしょう。
そして、夏が近づくと特に、周囲の人たちと自分を比べて、他人にはうっとうしいような気持ちを抱き、自分に対してはうつうつとした気分を感じてしまいがちだったのです。
Aさんのような人に対して、「他人と自分を比較するのはやめましょう」というのは、よく耳にするアドバイスです。しかし、それが長年の習慣になっているときは、すぐにやめることはなかなか難しいかもしれません。しかし、対処の手がかりはあります。
他人と比較するといった認知や思考の習慣のことを、心理学では「反芻(はんすう)」と呼びます。ネガティブな反芻は、不安や抑うつといった気分を増大させることが知られています。
しかし、私たちの中で起きている反芻は、いつもまったく同じものが生じているわけではありません。少しずつ違った思考が起きている、あるいは起きる可能性があるのです。
「とても気になっていたことが、次第に気にならなくなった」ということは誰もが経験することでしょう。他人と自分を比較するという反芻の中で、ひょっとしたらこれは自分の長所だ、自分の個性だと思えるような点が見つかるかもしれません。それが見えてきたらしめたものです。その長所や個性を大切にし、それを伸ばしていくために夏季休暇の時間を活用してみるとよいでしょう。
こうした心理学的な自己理解や対処法については、カウンセラーなど専門家の知恵や助言を参考にすることも1つの選択肢です。そのような専門家が身近に見当たらないときは、オンラインカウンセリングFor Meをぜひご活用ください。