失恋から立ち直れない…つらいときの乗り越え方
2019.07.29
「産後うつ」という言葉を聞いたことがありますか?
悲しいことに,日本において産後1年間のお母さんの死亡原因で最も多いのは自殺です.産後の自殺には,産後うつが関わっていることが多く,事前によく知っておくことが大切です.
そこで今回は,産後うつを事前に防ぐ対策について,精神科医の神楽坂やちまが解説します.
産後うつとは,不安や焦燥感,不眠,意欲低下,食欲不振などのさまざまな症状が継続的に起こる病気です.産後1カ月前後に起こりやすい傾向があります.
一過性であるマタニティーブルーズ(いわゆるマタニティーブルー)とは異なり,産後うつは治るまでに数カ月から年単位を要することもあります.重症化すると治療が必要になるため,深刻な事態になる前にSOSを出すことが非常に大切です.
産後うつは,お母さんのストレスや既往,社会環境などさまざまな要因で起こる病気です.リスク因子の一部としては,以下が挙げられます.
・初産(特に高年初産婦)
・若年、高年出産
・うつの既往
・双子以上の妊娠
・帝王切開術
・周囲のサポート不足
・低収入
・妊娠前や妊娠中に大きなストレスを受ける出来事があった
・子宮内膜症や月経困難症などの既往 など
子宮内膜症や月経困難症,不正出血などの症状がある人には,産後うつを発症するリスクがあることがわかっています.妊娠する前に婦人科に行って相談しておきましょう.
また,妊娠中や産後の睡眠不足は,産後うつのリスクになることが知られています.睡眠をしっかりとって,栄養バランスを意識して食事をするなど,健康的な生活を送りましょう.
家事や育児など,パートナーの協力は産後うつのリスクを低下させることがわかっています.出産前から,産後うつについて,パートナーを含めて周囲の人もきちんと知っておくことが大切です.
産後の体は大きなダメージを受けているため,思い通りに動くことは難しいでしょう.パートナーには,自分のことは自分でやってもらう,ゆっくり寝られる時間を作ってもらうなど,事前に出産後の生活について具体的に話し合っておきましょう.
一人で抱え込んでも,状況はあまり良くなりません.パートナーや友人,両親など,自分が相談しやすい人に,こまめに話を聞いてもらうようにしましょう.
対面でなくとも,SNSなどネット上のコミュニティで感情を吐き出せる場所を作っておくのも良いかもしれません.
周囲に頼る人がいないという場合は,カウンセリングを受けたり,住んでいる地域の保健センターで保健師さんに相談するのも良いでしょう.
気分の落ち込みや不安感など抑うつ状態が2週間以上続く場合は,産婦人科や精神科,心療内科などに受診して,適切な対応を受けましょう.事前にネットや電話で,産後うつの診療をしているか調べておくとスムーズです.
授乳中は薬を飲めないと思って受診をためらう方もいるかもしれません.しかし,授乳中でも服用可能な薬はありますし,薬を使用せずにカウンセリングで改善していくこともあります.
産後うつが長引くことは,お母さんにとっても子どもにとっても良いものではありません.放っておくと,重症化するケースもあるため「産後うつかも?」と思ったら一人で悩まずに病院へ行きましょう.
産後うつは,さまざまな要因が絡み合って起こるもので,誰にでもなる可能性があります.お母さんではなく,お父さんが産後うつになるということもあり,性別問わず誰がなってもおかしくない病気です.
事前に頼れる場所を確認しておいたり,相談窓口を知っておけば,いざというときに早めに対応できるでしょう.
また,世間が作り上げた「理想の母親像」が,必ずしもあなたの子どもにとっての理想とは限りません.母親の前に,あなたは一人の女性であり一人の人間です.周囲に合わせるのではなくあなたのペースで,等身大のあなたで子育てをしてはいかがでしょうか.