新型コロナウイルス感染症(covid-19)は、高齢者や基礎疾患のある人がかかると肺炎血栓症などが急激に悪化して死亡する例があります。

 

その一方で、感染症にかかった後も後遺症に悩まされ、以前と同様の生活を送ることが難しい患者が増加しているとも言われます。今回は新型コロナ後遺症の症状や自宅でのケアの方法について解説します。

 

目次

 

 

新型コロナウイルス感染症、その後遺症とは

新型コロナウイルス感染症

 

新型コロナウイルスの感染は、人体の細胞表面や内部に存在するACE2受容体という物質の量を測定して判断されます。

 

ACE2はコロナウイルスと結合する可能性がある物質で、その質量を調べることで感染の有無や症状の進行度を把握する指標(マーカー)になるのです。

 

新型コロナでは、このマーカーが血管、消化管、呼吸器、神経細胞にも出現することが分かっています。

 

血液からこうした細胞に感染して炎症を起こすため、その名残としてマーカーが確認された器官で機能低下が起き、後遺症となる可能性が示唆されています。

 

 

新型コロナ後遺症の症状

新型コロナ後遺症の症状

 

後遺症とされる症状には、以下のようなものがあります。

 

慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)

慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)では、休養しても強い全身倦怠感睡眠障害、思考力・集中力低下などがあり仕事や日常生活に支障をきたす症状が持続します(診断基準では6か月)。症状の程度が重いと寝たきりに近いレベルになる人もいます。

 

検査を行っても膠原病エイズなどの感染症、甲状腺機能亢進症などが否定されることが診断の前提となります。

 

また、新型コロナウイルス感染後で最も怖い症状として挙げられるのがPEM(post-exertional malaise)です。これは慢性疲労症候群の患者が軽い運動やストレスを受けた6~48時間ほど後に背中に重りが乗るような急激な倦怠感に襲われる状態です。

 

その後長く不調が続いたり、急激に症状が悪化したりすることがあります。

 

高い微熱が続く

新型コロナウイルス感染症の拡大により、長期間にわたり37.5度前後の微熱が続く方が増加しました。

 

そのメカニズムは明らかにはなっていませんが、感染による視床下部(温度調節をする脳の部分)の機能不全や自律神経失調と考えられています。

 

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嗅覚障害味覚障害

新型コロナウイルス感染症においては、この2つの症状がみられると感染している可能性が高いとされています。この原因も前述のACE2受容体の発現が舌や鼻に多いために生じる機能障害とされております。

 

自然に回復するケースが60~80%でありますが、1か月以上残存する場合もあります。

 

集中力の低下(ブレインフォグ)

脳の血流低下により集中力が低下する、パソコンやスマートフォンのディスプレイが見続けられない、何を読んでも会話をしても新しい知識が入っていかないという症状があります。

 

 

新型コロナウイルスの後遺症の治療

新型コロナウイルス後遺症の治療法は、基本的には漢方やサプリメント(アミノ酸や亜鉛、コエンザイムなど)に加えて、現在生じている症状に合わせた医薬品の処方となります。

 

例えば味覚障害・嗅覚障害であれば、当帰芍薬散の漢方や亜鉛のサプリメントの処方、画像検査の結果によってはステロイド点鼻、嗅覚刺激療法が選択されます。

 

慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)が疑われる症例のうち、ブレインフォグなどの脳の機能低下に対しては脳血流低下を予防するためのアデノシン三リン酸(商品名アデホス)の服用を行う場合もあります。

 

倦怠感では十全大補湯や五苓散など舌の状態や症状に合わせた漢方、分枝鎖アミノ酸(BCAA:商品としてはアミノバリューなど)の服用などがあげられます。

 

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新型コロナ後遺症が出たら?自宅でできるケア

新型コロナ後遺症のケア方法

 

後遺症とみられる症状のうち特に倦怠感がある場合には、回復を焦ってしまうと症状が悪化する傾向があります。散歩などを含めて、きついと思われるレベルの運動は無理にしないほうがいいでしょう。

 

入浴に関しては、「和温療法」を実施すると自律神経のアンバランスが是正されて倦怠感の解消などに役立つとされております。その方法は41℃程度のお湯に10分間つかることです。

 

血管・内臓の動きをコントロールする自律神経が安定し、心臓に負担がかからないとされています。

 

 

まとめ

新型コロナウイルスの感染による後遺症の概要や治療法についてはまだ全てが明らかにされておらず手探り状態です。

 

しかし、その中で最も多いとされる長期の倦怠感に関しては漢方やサプリメントによる対症療法を行っていきながら、過度の運動負荷をかけないようにすることが重要です。

 

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プロフィール

監修:医師 武井 智昭
慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。