新型コロナウイルスの流行で、多くの人の生活スタイルがガラッと変わりました。

 

苦手な上司と顔を合わせなくなって「気が楽になった」とポジティブに捉えることができる人もいれば、慣れない生活を強いられて多大なストレスを抱えている人もいます。

 

実際に精神科の外来では、新型コロナの影響で精神的な不調を感じて受診する患者さんが増えてきています。

 

そこで、今回は新型コロナと共存するなかで、どのようにすれば精神的な安定を保ちながら過ごせるかについてお話ししたいと思います。

 

目次

 

新型コロナでメンタル不調や精神疾患が増加?

新型コロナによる精神疾患

 

新型コロナウイルス感染症(covid-19)の流行によって、メンタルヘルス不調の人が増えています。その理由として次の4点をあげることができます。

 

孤独感による精神的なプレッシャー

多くの人が仕事を含めた全般的な活動の自粛を余儀なくされています。それにより、会社の人や友人、両親と会う機会が一気に減り、孤独感を感じるようになりました。

 

閉塞感による精神的なプレッシャー

ステイホームが求められるため、かなり多くの時間を自宅で過ごすことになりました。外でちょっとした息抜きができなくなり、息が詰まる生活に精神的な苦痛を感じるのです。

 

先行きの見えない不安

新型コロナの流行がいつごろに落ち着き、以前のような生活に戻ることができるのかか分からないことに対する不安です。新型コロナが落ち着かない限り雇用や経営などが不安定になるので、経済的な不安につながりやすいのです。

 

慣れない生活スタイルに対するしんどさ

新型コロナをきっかけに在宅勤務に変わった方もいるでしょう。その中で仕事に集中できずパフォーマンスが下がったり、家族と過ごす時間が長くなったりしたぶん、一人になってリラックスできる時間が確保できずにストレスを抱えてしまうのです。

 

 

不安感や無気力。新型コロナで見られる可能性がある精神症状

新型コロナでの症状

 

新型コロナの影響によるストレスを上手く対処できなければ、体にその影響が出てきます。

 

まず最初に、何かしらの変化が体に見られるようになります。たとえば、頭痛腹痛吐き気めまい倦怠感などです。

 

症状が気になり、内科などを受診して色々な検査をしても「特に異常はない」と言われてしまうこともあります。この段階でストレスに対処しなければ、次は夜に眠れなくなったり、今までと比べると異常なほどの食欲の増減が見られたりすることがあります。

 

さらには、飲酒やたばこが明らかに増えたり、イライラしやすく家族とケンカが増えるような状況が見られます。

 

それでもそのままストレスをため続けると、24時間ずっと元気が出なかったり、今まで楽しめた趣味への意欲を失ったり、わけもなく悲しい気持ちになって涙があふれたりするなどの症状も現れるかもしれません。

 

このような状態が2週間以上続いて、うつ病の診断をされる人もいます。 

 

他にも、ちょっとした喉の痛み鼻水が出ただけで「自分はコロナに感染したのではないか…」と過剰に不安になって人を避けるようになったり、そのことばかり考えて仕事が手につかなくなったり、「満員電車に乗ると感染するのでは…」など強い不安がよぎって動悸や冷や汗、息が詰まる感覚が出てくる不安障害を発症する人もいます。

 

【不安障害ガイド】知っておくべき原因・症状・対処法

 

 

コロナ禍で心身の不調を感じたらどうする?

上記のような心身の不調を感じたら、ストレスが溜まっている状態なので早めのケアが必要です。

 

セルフケアのやり方は自分でしっくりくるものを見つけて、普段の生活の中に取り入れてください。ここでは、コロナ禍におけるおすすめのセルフケアを4つ紹介します。

 

コロナ禍での不調のセルフケア

 

意識的に「一人の時間」を作る

コロナ禍は外での活動が禁止されたり、在宅勤務などで家族と一緒にいる時間が長くなって、一人になる時間も減りました。

 

そのため、まずは積極的に一人の時間をとるだけでもセルフケアになります。たとえば、一人で買い物にいったり、短時間でも一人で本屋に行ったり、散歩に出かけたりしてリラックスすることもおすすめです。

 

湯船につかってゆっくり入浴

2つ目は入浴です。

 

シャワーだけでは体は温まらず、副交感神経が刺激されずにリラックス効果はありません。必ず湯船につかってください。

 

お湯の温度には厳密な基準はありませんが、自分が気持ちいいなと感じる温度に設定してください。ただし、42度以上は交換神経が刺激されて、覚醒の方向に向いてしまうので注意しましょう。

 

体をほぐすストレッチ

3つ目はストレッチです。体の緊張をゆっくりとほぐしていきましょう。血流もよくなり、疲労物質を流してスッキリするだけでなく、副交感神経も刺激されて、リラックス効果が出てきます。

 

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快適な睡眠のための心がけ

最後に、快適な睡眠がとれるように心がけましょう。

 

布団という場所を「寝る場所」と心身が認識するように、布団に入ってからのスマホの操作は控えて下さい。また、全く眠れる気配がない場合は、無理に布団に入って眠ろうとはしないでください。布団という場所が「今日は寝れるかなぁ…」と不安を感じる場所になってしまうからです。

 

そのほか、足裏のかかとのど真ん中の少しへこんだところは、失眠穴とよばれるツボであり、20回ほどゆっくりとトントンとたたくと自然な眠気を誘うことができます。

 

症状が解消しないときは病院へ

色々なセルフケアを試してもなかなか心身の症状が取れないようならば、早めに病院を受診するようにしましょう。

 

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女性は不調になりやすい?高齢者、子ども、在宅ワーカーのメンタルケア

女性

女性の場合は、今後の雇用が心配になる人や、夫が在宅勤務になったことで用意する食事の回数が増えたり、自宅で仕事をする夫の邪魔をしないよう配慮しながら過ごすなど、今までの自分のペースを乱されてストレスをためる人がいます。

 

このような場合は何よりもまず、誰かに話を聞いてもらうことです。友人や夫に時間をとってもらって、やり場のない心の苦しみや辛さを一人で抱え込まずに吐き出すことを心がけましょう。

 

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高齢の方

高齢者のセルフケア

 

密を避けるという目的で子どもや孫、近所の友達と気軽に会うことができなくなりました。それによって精神的な寂しさや孤立を感じることも多いのです。

 

このような状況下では、まだ慣れていなくてもせっかくの勉強の機会だと切り替えて、オンラインでコミュニケーションをとる機会を増やしていきましょう。

 

子ども

コロナ禍での子どものセルフケア

 

学校休校や外出自粛などで友達と会えないストレスを感じます。すると、大人と同様に頭痛や腹痛、不眠などの症状がみられたり、ときには赤ちゃん返りをすることもあります。

 

保護者の方はしっかりとコミュニケーションを取って、何が心配なのかを聞いてあげて下さい。子どもだからといってはぐらかしたりせず、今がどのような状態なのか説明し、不安になったりする気持ちが普通であることを教えてあげましょう。

 

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在宅勤務(リモートワーク)の方

会社とは違った環境で、仕事に集中できずにイライラするかもしれません。まずは平日の生活リズムが乱れないように、毎食の時間と起床時間は固定しましょう。

 

さらにオンとオフの切り替えを意識して、一日中仕事をしないようにしたり、休日は一切仕事をしないなどのメリハリをつけてください。

 

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井上先生からのアドバイス

自分にとっていい変化であっても悪い変化でも、「変化」というのは総じてストレスになります。

 

誰しも、新型コロナウイルスの影響で生活や環境がガラッと変化したことでしょう。その変化によるストレスは自分では気づかないレベルでも蓄積しています。しばらくはこの変化を避けることは難しそうなので、しっかり自分でストレスを対処する方法を身につけるようにしましょう。

プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。