小さなお子さんを持つお母さんなら、自分は無縁…と言い切れる人は少ないであろう「育児ノイローゼ」。
産後の体調不良の中、赤ちゃんと二人きりの慣れない子育ては、経験のある方なら非常に大変なものであることがわかると思います。
最悪の場合、自殺などに至る場合もある深刻な育児ノイローゼについて、医師に解説していただきました。

育児ノイローゼの定義は?

育児ノイローゼとは、出産したばかりのお母さんが、妊娠・出産の体力的、心理的負担や、産後の急激なホルモンの変化や、慣れない育児での緊張感や負担などによって
・気分の落ち込み
・物事に対する興味や意欲の低下
・思考能力の低下
・食欲の異変
・表情がなくなる

といった、うつ症状が出るものをいいます。

育児ノイローゼの原因は?

先述のように、ホルモンバランスの変化や産後疲れなどのほか、核家族化によって生じることが多い、強い孤立感を感じることが大きな要因の一つではないかといわれています。
強い孤独感を感じることの例としては、出産直後のお母さんが赤ちゃんと二人きりで一日密室に閉じこもることが多くなり、気晴らしに会話をしたり、悩みを相談したりする人もなく、夫の帰宅が遅かったりすることで育児を妻に任せっきりにしていることなどがあげられるます。
特に、まじめで几帳面な性格のお母さんほど、子どもを育てることに対する責任感などから完璧を目指そうとして疲弊してしまい、育児ノイローゼにかかりやすいという傾向があるようです。
また、日本では昔から「男は仕事、女は家庭」などといわれるように、欧米諸国と比較すると子育ての多くを母親に期待する傾向が強く残っており、このことも孤独感にさいなまれているお母さんに追い打ちをかけているということもあると思います。

育児ノイローゼにならないために大切なことは?

育児ノイローゼは、ひどくなると自殺や無理心中、子どもへの虐待などにつながりうる、非常に深刻な問題です。 産後のお母さんを、育児ノイローゼにさせないために大切なこととしてはまず、両親参加で育児を行うことでしょう。
赤ちゃんの機嫌のよいとき、あるいは土日だけの遊び相手ではなく、夜泣きや発熱、保育園の送り迎えや夜間のおむつ替えや直接母乳を授乳しているのでない場合は、ミルクを含め、もう一人の親であるお父さんも主体的に行う意思を持つことです。
日中仕事などで育児ができない場合には、土日にお母さんに休んでもらい自分が赤ちゃんの世話をする、自分の代わりに赤ちゃんをみてくれている、という感謝の気持ちを忘れない、子育ての悩みは突き放さず、聞くだけでもなく一緒に悩む、といった姿勢が大切です。

医師からのアドバイス

お母さん自身も、完璧な子育てはないこと、つらい慣れない子育ては決して永久に続くものではなく、自分が体調を崩しても夫や、周囲がバックアップしてくれることを認識することが大切です。
子育てサークルや子育て支援センター、離乳食レストランなどを利用して、同じくらいの子どもの子育てに悩んでいる仲間を作ることも非常に有効です。
疲れたり、追い詰められたら、保育園や他人に預けることは罪悪感を感じるべきことではなく、むしろリセットのために必要なことだと割り切って利用するようにしましょう。
育児とは、振り返ってみればそれほど長い時間あるものではありません。だんだん楽になり、自分の時間も持てるようになってきますので、ゆったりした気持ちで乗り切りたいものですね。

(監修:Doctors Me 医師)