喉が老化する原因


「喉の老化」のなかでも、嚥下障害と嗄声について説明いたします。

加齢


筋力の衰え、反射の遅延など、喉のもっている機能も少しずつ衰えていきます。

脳梗塞


様々な麻痺症状をおこすワレンベルグ(延髄外側)症候群に代表される脳・脳幹梗塞によっても引き起こされます。

神経筋疾患


パーキンソン病に代表される神経筋疾患でも引き起こされます。

喉の老化のサイン


むせ・咳込み


食事の際のむせや咳込みが喉の老化のサインになりますが、体の防御反射が体を守ってくれているうちはまだ問題とはなりません。

多くの問題はむせ反射のないことによる誤嚥によって引き起こされます。

大きな声が出ない・声がかすれる


発声力や声帯の老化のサインになります。

喉が老化することで引き起こされる疾患


誤嚥性肺炎


もっとも頻度と危険性が高く、日本人の死因の第3位です。特に高齢者では誤嚥による嚥下性肺炎の死亡が急増しています(※)

声帯萎縮症


加齢により声帯の水分が失われ、声帯が痩せることによって声帯間にスペースが生まれます。

そして、そのスペースから空気が漏れることにより、声がかすれます。

喉を若々しく保つ方法


嚥下リハビリテーション


自分の体の状態にあった適切なリハビリテーションをお勧めします。

例えば、普段から歩いて動ける人が、膝を前に出すリハビリを少しずつ毎日続けても意味がありません。同様に、普段から食事を問題なく摂っている方が、口を開けるトレーニングをしても意味がありません。

簡単なのは、30秒間で何回空嚥下(唾を飲む嚥下)が出来るかタイムトライアルをしてみるのも面白いです。実際にこの方法は嚥下機能を評価する方法として用いられています。

また、嚥下を意識的に素早く正確にする努力をすることで、嚥下をしようとする脳の意識、そして意識から実際に嚥下をする動作など、筋に限らず嚥下全体を鍛えることができます。

腹式呼吸


喉つめ発声は声帯を痛めます。痛めた声帯は炎症を起こし、水分を失いやすくなります。

意識して腹式呼吸をすることで声帯にも負担がかからず、またお腹を使うのでお腹周りの筋も自然と鍛えることが出来ます。

軽い運動


むせない誤嚥が実は多いのも事実です。

嚥下だけに意識をむけず、普段から軽い運動などで全身の状態を整え、鍛えることが最終的には誤嚥を含めた体全体の機能の衰えを防ぎます。

嚥下しにくい食べ方


嚥下障害のある方は、以下のような嚥下しにくい食べ方をするのが良いです。

■ 一回の嚥下量は少なめにする

■ テレビや新聞を見ながらの摂食は止めさせ、摂食のみに集中させる

■ 早食いは止めさせる

■ 頸部前屈位で嚥下を意識させながら正しい姿勢で食事を行う
(嚥下に重要な機能を担っている喉頭の運動を助け、食物が気管ではなくて食道に誘導されやすくなる)

■ 嚥下後にむせたら咳で喀出させる
(高齢者の場合にはむせない誤嚥も多いので、嚥下後にむせなくても軽く咳をさせるのも有効)

喉の老化が分かる簡単セルフチェック


空嚥下タイムトライアル


■ 30秒間で2〜3回までしかできない
嚥下のどこかの機能が落ちている可能性がありますので、耳鼻科に相談されるのが良いと思います。内視鏡で嚥下の状態を確認してくれます。

30秒間発声し続けるテスト


この時にお腹から声を出すように意識してください。

■ 30秒間発声が続かない
まずは声を出しやすい発声方法を自分なりに試してみてください。

■ 10秒以内で発声が終わってしまう
耳鼻科医に相談してください。

最後に岡田先生から一言


誤嚥を過剰に心配する必要はありません。また、普段から普通に食事をしているのに嚥下リハビリをする必要もありません。

誤嚥に関しては外来でもすぐに内視鏡でチェックできますので、まずは気軽に近くの耳鼻科に相談されてください。

プロフィール

監修:耳鼻咽喉科 岡田先生
1982年生まれ、2000年群馬県内の県立高校を卒業後、同年4月に私立大学医学部医学科に入学。2006年3月に同大学卒業後、研修医として市中病院を2年間勤務。その後、大学病院に勤務し、2010年4月、大学院に入学、頭頸部癌、感染症を主に基礎研究を行い、医学博士を取得。