みなさんは、全身性エリテマトーデス(SLE)という病気を知っていますか?

 

海外の人気女優が闘病中であることを公表し、メディアでも話題になったことがあるので、聞いたことがあるという人もいるのではないでしょうか。

 

今回は、指定難病でもある全身性エリテマトーデス(SLE)について、医師に解説していただきました。

 

 

全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫疾患の1つであり、様々な臓器の障害により幅広い症状を引き起こす疾患です。英語ではsystemic lupus erythematosusと表現し、その頭文字をとって「SLE」と略されます。

 

全身性エリテマトーデス(SLE)の原因はまだ分かっていませんが、体外から侵入するウイルスや細菌などから本来体を守ってくれるはずの免疫系統が、何らかのきっかけによって自分の臓器を攻撃してしまうという自己免疫疾患です。

 

そのきっかけとなるものには、紫外線(海水浴、スキーなど)、風邪などのウイルス感染、ケガ、妊娠・出産などがあります。

 

 

どんな人に多い?

 

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者は、男女比でいうと男:女は1:9と、圧倒的に女性に多くみられます。年齢は10代後半〜40代に多いと言われています。

 

米国の統計によると、この疾患は白色人種ではあまりみられず、有色人種に比較的多いとされています。

 

また、この疾患は他の膠原病(皮膚筋炎やシェーグレン症候群)などの既往がある方はリスクが高くなる可能性があります。

 

 

どんな症状があるの?

手指の関節の痛み 

全身性エリテマトーデス(SLE)では、発熱などの全身症状の他、皮膚の症状、関節の症状、臓器の症状、精神の症状などがみられます。

 

皮膚の症状

皮膚の症状としては、両側の頬にできる赤い発疹が有名です。蝶が羽を広げている形に見えるため「蝶型紅斑(バタフライ・ラッシュ)」と呼ばれています。

 

また、1つ1つがCDのように丸くディスク状にできる「ディスコイド疹」が顔面・耳たぶ・関節の表面などに現れることも特徴です。

 

この他にも脱毛や、日光が当たる部分に水膨れができる日光過敏症もみられます。

 

関節の症状

関節の症状としては、手、指、肘、膝などの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛みを伴います。日によって起こる場所が変化するという「移動性関節炎」が特徴です。

 

臓器の症状

腎炎(ループス腎炎)によるむくみ、高血圧などの腎障害、けいれんなど中枢神経の症状が有名です。この他にも、肺・心臓・消化器の症状を起こす場合もあります。

 

また、多くの患者に貧血、白血球減少による感染症、血小板減少による出血傾向などがみられます。これら血液のデータ異常による全身症状から、輸血が必要になる場合もあります。

 

臓器の症状はさまざまあり、個人差もあるのでごく軽度な方もいます。

 

精神の症状

精神の症状としては、不安障害、うつ症状、悪化がすると時間や場所がわからなくなる見当識障害、妄想などの症状がみられる場合があります。

 

 

どんな治療を行うの?

内服薬

 

全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫疾患であるため、免疫を抑える治療が必要になります。このため、重症度に応じてプレドニンなどの副腎皮質ステロイドを継続的に内服します。

 

臓器障害が強い場合は、このステロイドを大量に投与する「パルス療法」が実施されることがあります。

 

この副腎皮質ステロイドの効果が不十分なため病状が抑えられない場合や、副作用が強くなった場合には、免疫抑制剤を併用あるいは単独で使用する場合もあります。いずれの場合でも、長期の内服が必要となるでしょう。

 

また、精神の症状には、精神を安定させる薬剤投与も併用する可能性があります。

 

 

最後に武井先生から一言

 

この疾患は、よくなったり悪くなったりという状態を繰り返すことが特徴です。長期的かつ全身の管理が必要になりますので、担当医師との信頼関係をつくり、自分自身の状態をよく把握して服薬を行ってくださいね。

プロフィール

監修:医師 武井 智昭
慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。