午前中は何とも感じなかったのに、午後になったら靴がきつく感じる…というように、日常生活の中で「むくみ」が気になったことがある人は多いと思います。

 

普段から日常的に体に「むくみ」を感じても、いつものことだと思いそれほど重要視しない人もいるのではないでしょうか。

 

冷えると体がむくみやすくなるとよく言われますが、「むくみ」の原因はさまざまなようです。

 

今回は、「むくみ」とその原因について、内科医の永田充先生に解説していただきました。

 

 

そもそも「むくみ」ってどんな状態?

「むくみ」とは、皮下組織に過剰な水分が溜まった状態のことです。医学用語では「浮腫(ふしゅ)」と言います。

 

体重が増える、顔が腫れぼったい、足のすねを押すとへこむ、などの症状が出ます。

 

 

「むくみ」の原因

 

体がむくむ原因としては、以下が考えられます。

 

心臓の機能低下

心臓は体の中でポンプとしての機能をもち、血液を体のすみずみまで運びます。心臓の機能が低下すると血液が体内を循環しなくなり、体のさまざまな部分に溜まるようになります。

 

溜まってしまった血液から水分が皮下組織に染み出すことで、「むくみ」が起こります。

 

腎臓機能の低下

腎臓には、体内の老廃物や不要な水分を体の外にこし出す機能があります。腎臓の機能が悪くなると、老廃物や不要な水分を体外に排泄できなくなり、「むくみ」が起こります。

 

肝臓の機能低下

肝臓は、体の中で栄養を代謝したり、蓄えたりする働きがあります。この機能が低下すると、栄養素の一部が合成できなくなります。

 

特に、たんぱく質の一つであるアルブミンが減少傾向になります。この影響で、血管内の浸透圧に狂いが生じ、血管内から水分が皮下組織に染み出してしまうため、「むくみ」が生じます。

 

ホルモンバランスの崩れ

体内には、腎臓に働きかけて尿を作り出すホルモンがあります。このホルモンが減ると水分が体に溜まり、「むくみ」が発生します。

 

また、甲状腺や副腎、卵巣から出るホルモンのバランスが崩れることも「むくみ」の原因になります。薬の副作用でホルモンバランスが変化し、「むくみ」が出る場合もあります。

 

上記の4つが原因で生じる「むくみ」に対しては、適切な治療を行えば改善していきます。

 

 

栄養障害の可能性も視野に入れて!

 

上記にあげた4つ以外にも、栄養障害が原因の場合が考えられます。肝臓の働きが悪くなってむくむ場合に減少するアルブミンは、たんぱく質から合成されます。

 

肝臓に異常がなくても、たんぱく質を極端に摂取しない場合、原料となるたんぱく質が減るため、合成されるアルブミンも減少してしまいます。

 

そのため、過度なダイエットなどで極端にたんぱく質を制限すると「むくみ」が起こることがあります。

 

一方で、慢性の下痢や潰瘍性大腸炎などの病気で下痢が続くと、たんぱく質が吸収されずに栄養障害が起こり、「むくみ」を生じることがあります。

 

その他、免疫異常などで体の中に慢性の異常が起こることでも、たんぱく質が必要以上に消費されてむくむことがあります。

 

さらに「がん」でも、がん細胞が体に必要な栄養を横取りしてしまうため、「むくみ」が起こる場合があります。

 

 

原因が栄養障害の場合の「むくみ」対策

 

たんぱく質が足りない場合に起こる「むくみ」に対しては、たんぱく質を過剰に摂れば効率よく治るというわけではありません。

 

たんぱく質は、数種類のアミノ酸から成っており、体に必要なものは20種類あります。その内9種類は体の中で作ることができないため、これらのアミノ酸をとる必要があります。

 

9種類の中でも「バリン」、「ロイシン」、「イソロイシン」という分岐鎖アミノ酸という3種類のアミノ酸を多くとると、肝臓でのアルブミンの合成に対して効率がよいことがわかっています。

 

これらのアミノ酸を、食べ物やサプリメントで積極的に取り入れるとよいでしょう。

 

 

最後に永田先生から一言

「むくみ」でお悩みの方は多いと思います。今回お伝えしたように、むくみの原因は多岐にわたります。「むくみ」を感じたら放置せず、まずは内科を受診されるとよいでしょう。

プロフィール

監修:医師 永田 充
2006年(平成18年)東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。 食道・胃・十二指腸・大腸の早期がん、腺腫などの内視鏡治療、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の開発施設である佐久総合病院佐久医療センター内視鏡内科、岸和田徳洲会病院消化器内科で研鑽を積む。 2015年から神奈川県藤沢市にある湘南藤沢徳洲会病院の内視鏡センターで、がんの早期発見、体に負担の少ないがんの内視鏡治療に取り組む。現在は、湘南藤沢徳洲会病院の内視鏡内科で部長を務める。