あなたは突然の下痢に襲われた経験がありますか?

 

外出先や電車・バスでの移動中、会議中、試験中など、容赦なく襲ってくるため準備もできず、大変な目に遭った方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、急な下痢の主な原因と対処法について、永田先生に解説していただきました。

 

 

どうして急な下痢が起こるの?

 

下痢は、何らかの原因で、腸内での水分吸収が妨げられたり、腸内における分泌物が増えたりするなど、腸が正常な動きをしていないときに起こります。

 

急な下痢の多くは、ウイルスや細菌などの感染に由来すると言われています*1。数日で治ることが多いものの、重症化する場合もあります。また、急な下痢には、感染以外にもさまざまな原因があります。

 

原因1:食中毒・食あたり

食中毒・食あたりは、食べ物とともに細菌やウイルスを体内に取り込むことで起こります。主な症状は、下痢、嘔吐、発熱、腹痛など、病原体によってさまざまです。

 

潜伏期間に関しても、摂取後30分~約1週間と、細菌やウイルスによって異なります。

 

下痢、嘔吐があるときは、脱水症状を起こさないように、こまめな水分補給を心がけましょう。

 

原因2:飲み過ぎ・食べ過ぎ

暴飲暴食をした後に下痢になった経験がある方は、多いと思います。

 

アルコールは消化器官にダメージを与えますし、揚げ物などの脂肪分・油分の多い食べ物は下痢の原因になります。暴飲暴食はしないように心がけ、その日の自分の胃腸の状態に合わせて食事を楽しむようにしましょう。

 

原因3:体の冷え

体の冷えによる下痢については、医学的には解明されていません。冷えることで消化酵素が働きにくくなり、消化不良になることや自律神経のバランスが崩れて腸の動きが過剰になることなどが関係していると考えられています。

 

冷えによる下痢のときには、お腹を温めることに加え、手足など体の末端や、太もも・足の付け根・首など大きな筋肉や太い血管の通っている所を重点的に温めます。

 

原因4:過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、腹痛や腹部不快感、便秘、下痢などが慢性的に続き、内視鏡検査をしても腸に明らかな異常が見つからないことが特徴です。過敏性腸症候群の主な原因はストレス、緊張、不安などによる精神的な影響と考えられ、働いている人に多くみられます。

 

症状を悪化させないためには、睡眠を十分にとる、暴飲暴食を避ける、禁煙するなど普段の生活習慣の改善が重要とされています。症状が続くようであれば、消化器内科を受診しましょう。

 

原因5:乳糖不耐症

牛乳などの乳製品を摂取した後に、急な腹痛や下痢に襲われたことはありませんか?

 

本来、乳製品に含まれる「乳糖」は、小腸で乳糖分解酵素によって分解されます。乳糖分解酵素が不足していて、十分に分解できない状態のことを乳糖不耐症と言います。乳糖不耐症の方は、牛乳などの乳製品を控えましょう。

 

 

病院に行くべきお腹の痛み方・痛む部位

 

・経験したことがないような強い腹痛

 

・腹痛の程度が悪化してきている

 

・特定の部位だけが強く痛む

 

・歩くとひびくような腹痛

 

・発熱を伴っている

 

・下痢に血液が混じっている

 

・同じものを食べた人が同じように症状を訴えている場合

 

・嘔吐と下痢が強くて水分が取れない

 

その他、いつもと違う症状で原因がわからず不安が強い場合は、病院を受診してください。

 

 

永田先生からのアドバイス

下痢には色々な原因があり、内視鏡検査などをしないと原因を診断できない場合もあります。症状にお悩みの方は、受診してください。

 

また、下痢の症状がある場合は、下痢止めを使用したくなることもあると思います。しかし、腸内の毒素、異物を取り除くために下痢が起きている場合もあり、下痢止めを使用することで症状が悪化することがあります。下痢止めを使用するかどうかは、医師にご相談ください。

 

参照

1:日本消化器病学会監修. 消化器病診療編集委員会編. 消化器病診療 第2.

プロフィール

監修:医師 永田 充
2006年(平成18年)東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。 食道・胃・十二指腸・大腸の早期がん、腺腫などの内視鏡治療、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の開発施設である佐久総合病院佐久医療センター内視鏡内科、岸和田徳洲会病院消化器内科で研鑽を積む。 2015年から神奈川県藤沢市にある湘南藤沢徳洲会病院の内視鏡センターで、がんの早期発見、体に負担の少ないがんの内視鏡治療に取り組む。現在は、湘南藤沢徳洲会病院の内視鏡内科で部長を務める。