「RSウイルス」というウイルスの名前を聞いたことがありますか?身近で感染した人がいないと、なかなかピンと来ないという方が多いのではないでしょうか。
しかし、RSウイルスは呼吸器感染症の原因ウイルスとして、特に小さな子どもがいる家庭では知っておくべき感染症です。
今回はRSウイルス感染症がどのような病気か、入院を要するケースがあるのか武井先生に解説していただきました。
RSウイルス感染症ってどんな病気?
RSウイルス感染症は、その名が表す通りRSウイルスに感染することによって、主に呼吸器に関する症状(発熱・咳嗽・呼吸困難など)が発生する病気のことを指します。
あまり聞いたことがない人もいるかもしれませんが、ほぼ全ての人が子どもの頃にかかっている風邪です。
流行時期
RSウイルスは、インフルエンザと同様、秋から冬にかけて流行することが多いです。しかし、近年では夏にも流行することがあります。
症状
RSウイルス感染症は、呼吸器に関する感染症です。乳幼児では、鼻水、高熱、咳に始まり、症状がひどくなると喘鳴などが悪化していきます。
ウイルスの潜伏期間
RSウイルス感染症も他のウイルス性の病気と同じく、感染したからといってすぐに発症するわけではありません。
潜伏期間は、通常は4~6日間です。ただし、RSウイルスには、いくつかタイプがあるために再発を繰り返すことが知られています。
ウイルス排出までの期間
RSウイルス感染症を発症してから、体内のウイルスが全部排出されるまでの期間はおよそ5日~1週間前後だと言われています。ただし、初めてかかったときと、2回目以降では差があります。
乳幼児の場合はウイルス排出までの期間が長いことが知られており、3~4週間にも及びます。そのため、保育園などでは症状が治まっているのにウイルスを持っている子どもから感染することが多いです。
RSウイルスは子どもが感染すると入院が必要なことも!
RSウイルス感染症は、大人がかかると鼻水などの軽い風邪の症状で済みます。しかし、小さな子どもが罹ってしまったときは、肺炎や細気管支炎になるなど、重症化するリスクがあります。
特に重症化しやすいのは、1歳未満の赤ちゃんや、低出生体重児や早産の赤ちゃん、先天的に呼吸器・心臓に病気を持っている赤ちゃんだと言われています。
特に生後1カ月未満の赤ちゃんがRSウイルス感染症を起こしてしまった場合は、無呼吸発作を起こして重症化してしまうケースもあるようです。
赤ちゃんがおっぱいやミルクを欲しがらず、呼吸が早く、全身を使う呼吸をして、機嫌が悪い状態がみられたら、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
RSウイルス感染症にはすぐに結果のわかる判定キットがあり、病院で即日判定を行うことができます。
RSウイルス感染症の治療
RSウイルス感染症に、特効薬はありません。もしかすると、病気というと抗菌薬というイメージがあるかもしれません。しかし、抗菌薬は基本的に細菌性の病気にしか効力がなく、ウイルスに対する特効薬は原則としてないのが現状です。
そのため、「対症療法」を行います。咳には咳止め、鼻水には鼻水を柔らかくして出やすくする薬などを用いて、つらい症状に一つひとつ対処しながら、本人の免疫力によってウイルスが体の中からなくなるのを待つ治療をします。
多くの場合は、脱水にならないように水分補給を行い、安静を保つことで体力の回復を待ちます。
武井先生からのアドバイス
RSウイルス感染症は、特に小さいお子さんがかかると入院などが必要となる場合があります。大人から感染することがあるため、家族で手洗い・うがいなどを徹底してください。
プロフィール
- 監修:医師 武井 智昭
- 慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。