休日や夜間に突然調子が悪くなったり、ケガをしたりすると焦りますよね。特に小さな子どもや高齢者がいる家庭では、様子がいつもと違うと「どうしよう……」と慌ててしまいがちです。
ここで救急車を呼ぶべきか、それとも車で連れていくべきか、様子をみるべきか迷うことがありますよね。
今回は、救急車を呼ぶべき症状や注意点について、井上先生が教えてくださいました。
救急車の適正利用の重要性
日本は人口が減少しているにもかかわらず、救急車の出動件数は年々増え続けています。
近年、適正利用とは言えないものも多く見られます。なかには、「水虫のかゆみが強くて、どうしても我慢できない」、「1人で寂しくて、誰かとお話したい」との理由で救急車を呼ぶ人もいます。しかし、これは、生命に直結する症状とは考えられず、救急車の不適切な利用といえます。
平成29年のデータでは、救急車が現場に到着するのに平均は8.6分(※)かかるといいます。不必要な出動が増えてしまうと、もっと時間がかかります。
あたりまえですが、救急車には限りがあります。救急車を不必要に出動させてしまうと、救えたはずの誰かの命が助からなかったということも起こりうると覚えておきましょう。
救急車を呼ぶべきかどうかの緊急性は、症状だけではなく、大人か、15歳未満の子どもかによっても変わってきます。
【大人の場合】救急車を呼ぶべき症状
大人の場合、以下のような症状が出たときは、119番に電話をして救急車を呼んでください。
・突然の激しい頭痛
・口を「イー」とした時、口が曲がる
・片方の手足が動かしにくい
・ろれつが回らない
・視野が欠ける
・押しつぶされるような胸痛
・締め付けられるような胸痛
・上下に移動する背中の痛み
・息を吸った時に、痛みが強くなる胸痛
・呼吸困難
・吐き気や嘔吐が続く腹痛
・吐血、下血に伴う腹痛
・意識障害
・不整脈を伴うめまい
・痙攣
・広範囲の熱傷
・大量に出血している外傷 など
また、餅など、喉に異物を詰まらせたときも、すぐに救急車を呼びましょう。
体のどの部位であっても冷や汗を伴う痛みがあるときや、治療などで長時間ベッド上で安静にしていて、立ち上がったときに息苦しさが現れたときは救急車を呼びましょう。
迷ったときは「#7119」に電話を!
救急車が必要か迷ったときは、「#7119」に電話をすると救急相談センターにつながります。救急車が必要なかったとしても、今後の対応や応急処置の方法などについて教えてくれます。
ネットで調べるのも手ですが、緊急事態の際は、いつもならできる正しい情報かどうかの判断も鈍くなるかもしれません。すぐに専門家の指示を受けれるように、「#7119」をスマートフォンに登録しておくとよいでしょう。
【15歳未満の子どもの場合】救急車を呼ぶべき症状
15歳未満の子どもの場合、以下のような症状が出たときは119番に電話をして救急車を呼んでください。
・意識がもうろうとしている
・意識消失
・強い頭痛
・痙攣
・頭をぶつけた後の出血や痙攣
・唇の色が紫色になり呼吸が弱い
・咳がひどい、ぜーぜーして息苦しい様子がある
・顔色が悪い
・下痢や嘔吐で水分がとれず、ボーっとしている
・強い腹痛や血便
・手足が硬直している など
また、交通事故に巻き込まれたり、高い場所から転落したり、おぼれたりしたときは、すぐに救急車を呼んでください。異物の飲み込みややけど、虫に刺されて全身に発疹が出た場合、強い食物アレルギーが疑われる場合も、すぐに救急車を呼びましょう。
子どもは体が小さく抵抗力が弱いため、急変しやすいです。特に3カ月未満の赤ちゃんの場合は、様子が明らかに変だなと思ったら救急車を呼びましょう。
子どもの場合迷ったときは「#8000」に電話を!
子どもの調子が悪く、救急車を呼ぶべきか自分で判断がつかないときは、「#8000」に電話してください。自動的に各都道府県の小児救急医療電話相談につながります。
電話で子どもの症状を伝えて、救急車を呼ぶ必要性があるかどうか、直接アドバイスをもらいましょう。
最後に井上先生からひとこと
救急車の出動件数は、年々増加しており、平成29年の1年間で、630万件以上(※)の出動がありました。これは、1日に約1.7万件の出動があったことになり、5秒に1件は出動している計算になります。
救急現場はそれだけ慌ただしくなりますが、医療資源には限界があります。救急車の適切な利用で、助かるはずの人が助からなかった事例を今後も減らす必要があります。
あなたやあなたの大切な人が救われるためにも、多くの人が不安になり過ぎることなく、救急車を呼ぶべき症状を知ってもらえることを願っています。
参照
プロフィール
- 監修:医師 井上 智介
- 島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。