夏のレジャー、冬の凍った路面など、滑って転んで骨折する危険性は年中あります。骨折は、気づかずに放置しておくと、治癒の遅れにつながるため、迅速な応急処置と整形外科での治療が大切です。
今回は、骨折に対する正しい知識と応急処置の方法について、救急医療に携わっている建部先生に解説していただきました。
骨折時の症状は?
骨折している場合は、以下のような症状が現れます。
・手足が動かせない
・痛みが激しく、冷や汗が出る
・まわりが出血して腫れる
・ちょっと触れただけでも飛び上がるほど痛い
・骨折したと思われる部分に熱がある
・触ると骨がくずれていることがわかる
・折れた骨がすれてコツコツ音がする
このほかにも、ケガをしたところから折れた骨が露出して見えてしまう重傷なもの(開放骨折)もあります。
医療機関を受診するまでの応急処置
骨折後は、損傷部位の障害を最小限にとどめるために、RICE(ライス)処置と呼ばれる4つの応急処置を受診するまでにしておきましょう。RICE処置は、骨折以外にも脱臼や捻挫や肉離れなどの四肢の「ケガ」にも行います。
1.安静にする(Rest)
受傷部位を動かさないようにして、肩、肘、腕の場合は三角巾で支えます。三角巾が無い場合は、適当な布や食品用ラップで代用します。
かさ、ステッキ、段ボール、棒や板などで、骨折部分が動かないように痛くない位置に固定します。骨折部分の上下の関節より長くすることがポイントです。これにより、損傷部位の腫脹(腫れ)や血管・神経の損傷を防ぎます。
2.冷却する(Ice)
骨折したと思われる部位を中心に、少し広めの範囲を氷入りのビニール袋や冷却パックなどで冷やします。冷やすことで、炎症を抑えて痛みを緩和します。
通常、15~20分くらいで患部の感覚がかなり鈍くなります。この時点でいったん冷却を止め、また痛みが出てきたら冷却を繰り返します。
患部に直接氷を当てると、凍傷を引き起こす可能性があるため、タオルに包んで当てるようにしましょう。保冷剤やアイスノンなどの活用もおすすめです。
3.圧迫する(Compression)
腫れや内出血を防ぐために、伸縮性のある弾力包帯やテーピングで、骨折部位を軽く圧迫気味に巻いて固定します。
強く巻きすぎると局部的に血流が低下することがあるため注意が必要です。
4.高く挙げる(Elevation)
例えば、下肢の骨折の可能性がある場合は、仰向けの状態で足に足枕のようなクッションとなるものを挟み込み、受傷部位を心臓より高く挙げるようにします。
骨折した部位を心臓より高い位置に保つことで、内出血を防いで痛みも抑えます。
その他
・骨折とともに外傷を伴っており、そこから出血している場合は、その手当てを行う
・骨がつき出している開放骨折が認められる場合は、その上に清潔なガーゼか布を当て、シーツなどでくるむ
応急処置の後はすぐに病院へ
応急処置の後は、すぐに救急病院を受診しましょう。交通事故などにより、意識消失、ショック、頭、頸部、背部の外傷や大量出血を伴っている場合は、救急車を呼んでください。
また、傷口から骨が見えてしまっている開放骨折は、受傷してから8時間以内に治療を受けることで治癒率が上昇すると言われています。
骨折時にやってはいけないことは?
受傷部位を自己判断で引っ張ってしまうことは、やってはいけないことの代表例です。指の骨が骨折している場合もあり、それを知らずに引っ張ると、指が変形してしまうことがあります。
自己判断せず、整形外科の医師に診てもらいましょう。
最後に建部先生から一言
骨折には、手の骨のヒビのような軽いものから、開放骨折や骨盤骨折のように生命を脅かす恐れのあるものまで存在します。
骨折は、適切な応急処置とその後の対応次第で早く完全に回復するかどうかが変わってきます。上記で紹介した「RICE処置」と「整形外科への受診」を心に留めておきましょう。
プロフィール
- 監修:医師 建部 雄氏
- 京都市生まれ。社会人を経て医師を志す。2001年、昭和大学医学部医学科卒業。 卒後、東京都内の大規模総合病院にて救急科の経験を積む。 その後、阪神淡路大震災において内科医が避難所等で切実に必要とされていた事実を知り、より多くより幅広く患者さんに対応できる医師を目指して総合内科へ転向を決意。 急性期病院・クリニックの勤務を経て、最も身近な医師としての研鑽を積んでいる。 現在は、横浜市内の総合病院に勤務中。週末を中心に休日夜間の非常勤先病院 救急外来勤務をほぼ趣味としており、失敗も成功も含めて経験は豊富。