多嚢胞性卵巣症候群という病気をご存知ですか?若い女性でもなる可能性がある病気で、若いからと検診を怠ると、後々さまざまなトラブルが起こる可能性があるそうです。
そこで今回は、多嚢胞性卵巣症候群について、医師に解説していただきました。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?
多嚢胞性卵巣症候群とは、卵巣の中に卵胞といわれる小さな袋がたくさんできてしまう病気です。20~40代の若い女性のうち6~10%の方が発症すると言われています。
この病気は。ホルモンの分泌異常が原因で起こると言われていました。しかし、近年は、遺伝や環境因子などさまざまな要素が複雑に絡んで発症するとも考えられています。
どのような症状が出る?
多嚢胞性卵巣症候群の具体的な症状には、以下が挙げられます。
・月経異常(無月経や生理不順、無排卵など)
・LH(女性ホルモンの一種である黄体ホルモン)の上昇
・アンドロゲン(男性ホルモンの一種)の上昇
・インスリン(血糖値を下げるホルモン)の反応が悪くなる など
このような状態が続くと、さらなる影響が体に起こります。まず、無月経や生理不順の状態が続くと、子宮内膜がいつまでも子宮内に剥がれずにとどまってしまうため、子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが上がります。
無排卵は、妊娠に不可欠な卵子が卵巣から排出されないため、不妊の大きな原因にもなります。その他の影響には、アンドロゲンの上昇によって起こる男性化があります。具体的には、多毛、にきび、肥満などが起こると言われています。
また、インスリンの反応が悪くなることで2型糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞などの心血管疾患、メタボリックシンドロームを引き起こすと言われています。多嚢胞性卵巣症候群は、もはや卵巣のみの問題ではなく、女性の体全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。
多嚢胞性卵巣症候群の治療
この病気の治療法は、妊娠希望があるかどうかで大きく2通りに分かれます。
妊娠希望の場合
妊娠希望の場合、排卵を促す治療がメインになります。まずは排卵誘発剤を内服することから始めることが多いです。排卵が起こらない場合は、糖尿病の薬でインスリンの抵抗性に対する治療をしたり、女性ホルモンの薬を使用します。
その他に、カメラをお腹の中に入れる腹腔鏡手術で、卵巣に直接穴をあける手術をすることもあります。肥満の方は、減量も同時に行っていきます。減量することで、排卵機能が改善することがあるからです。
妊娠希望がない場合
妊娠希望がない場合は、カウフマン療法(2種類の女性ホルモン剤の内服)や、低用量ピルで定期的に生理を起こし、子宮体がんの予防と男性化に対する治療を行います。
糖尿病の薬の服用や減量で、糖尿病の予防を行うこともあります。
肥満はリスクになる?
多嚢胞性卵巣症候群は、必ずしも肥満の方が多いわけではありません。肥満の有無にかかわらず、多嚢胞性卵巣症候群は、脂質異常症やメタボリックシンドローム、心筋梗塞などの心血管疾患や脂肪肝のリスクが高くなります。
そのような病気にかからないよう、まず生活習慣の改善をすることが重要です。
最後に医師からアドバイス
月経異常や妊娠希望などで婦人科を受診し、多嚢胞性卵巣症候群が偶然見つかるケースがよくあります。しかし、自覚症状が特になく、実はこの病気だったケースも多くみられます。
多嚢胞性卵巣症候群は、婦人科で超音波検査やホルモン検査などを行わないと、診断が難しい病気です。診断せずにそのまま放置すると、他の合併症を引き起こす可能性があります。
思い当たる症状がある方はもちろん、婦人科に受診されたことがない方も、ぜひ一度婦人科を受診されてみてくださいね。
(監修:Doctors Me医師)