パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの情報通信機器によるビデオ通話によって、自宅などにいる患者と医師をつなぎ、医療行為を行うことをオンライン診療といいます。

 

仕事が忙しくて通院の時間が取れない、医療機関が遠方で通うのが難しい、体調などの面で外出できないといったときにも診察を受けることができます。

 

オンライン診療を受けるためのネットワークサービスの種類はさまざまです。普段目にすることが多い「LINE」や「Skype」などを使っている医療機関もあれば、IT企業が独自に開発したオンライン診療システムを導入しているところもあります。

 

■遠隔医療とオンライン診療

医師不足による地域の医療格差や被災地への速やかな医療提供といった目的で導入が進められてきたのが「遠隔医療」です。遠隔医療は「通信技術を活用して離れた2地点間で行われる医療活動全体」という幅広い行為を指します。

 

この遠隔医療のうち、「情報通信機器を通して医師と患者をリアルタイムでつなぎ、診察や診断内容の説明、薬の処方などの診療行為を行うこと」をオンライン診療と呼びます。ただ、最近ではオンライン診療と遠隔医療がほぼ同じ意味で使われる場面も増えてきました。

 

参考

一般社団法人日本遠隔医療学会

図説・日本の遠隔医療2013

http://jtta.umin.jp/pdf/telemedicine/telemedicine_in_japan_20131015-2_jp.pdf

 

 

2、オンライン診療(遠隔医療)ではどんな医療行為が受けられる?

オンライン診療の具体例としては

 

  • 高血圧患者の血圧コントロールの確認
  • 離島の患者を骨折疑いと診断し、ギプス固定などの処置の説明を実施
  • 慢性頭痛に処方される効果が強い薬の調節やフォロー
  • 外出が難しい重症心身障害のある患者に長期的な服薬管理の指導
  • 各種がん検診や血液検査の結果説明 
  • 精神疾患に対するカウンセリング 

 

などが挙げられます。オンライン画面での問診のほか、チャットでの文字のやりとりや画像情報などが補助的に用いられることもあります。

 

 

3、初診は厳しい!?オンライン診療を受ける条件

 

 オンライン診療の流れ

 

 

実はオンライン診療には制約が多く、利用のハードルは低いとは言えません。その理由のひとつが「原則、初診では利用できない」ことです。

 

病院に行って医師との対面診療(初診)を済ませ、病気に対しての診断や治療の方向性など一定の判断が出た患者でなければ、原則オンライン診療を受けることはできません。また、

 

・対面診療を重ねるなど、医師と患者の間で信頼関係が結ばれていること

・患者の症状が安定していること

・患者がオンライン診療を希望し、医師も許容していること

 

なども、オンライン診療を受けるための検討条件です。

 

■初診からオンライン上での医療行為が可能なケース

患者の状況次第では、医師の判断によってオンライン上での初診が行われる可能性もあります。ただ、オンライン診療は対面診療と比べてリスクが高く、やむを得ずオンライン上で初診が行われても、その後には必ず対面診療を行う必要があります。

 

一方で、以下のような健康増進や医療に関する相談行為については初回からオンラインで行うことができます。

 

・オンライン受診勧奨

患者を適切な医療機関への受診に導くためのやりとりがメインで、検査や治療は行いません。問診などで患者の症状を把握し、「こういった色や形状の発疹はじんましんの可能性があります。皮膚科を受診してください」といったアドバイスを行います。セカンドオピニオンもこれに該当します。

 

・オンライン健康相談(遠隔健康医療相談)

応答マニュアルに沿って小児科医師や看護師などが電話で子どもの症状への対処法をアドバイス する「子ども医療電話相談」や、「発疹がある場合は皮膚科を受診してください」といった医師の判断を伴わない一般的な情報提供や受診勧奨が該当します。医師以外でも対応が可能で、電話やメール、チャットで相談できるサービスもあります。

 

参考

厚生労働省

子ども医療電話相談事業(♯8000)について

https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html

 

遠隔医療の種類

 

そのほか、健康診断などで疾病を見逃すリスクが低い患者の禁煙外来、対面診療が難しい事情がある患者の緊急避妊に関する診療は例外的にオンライン上での初診が認められています。

 

 

4、新型コロナについてオンライン診療は受けられる?

新型コロナウイルスの特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されると同時に、新型コロナウイルス感染症拡大を防ぐため、収束までの期間限定で初診からオンライン・電話診療を利用できる見通しとなりました。(2020年4月7日時点)。

 

ただ、熱があったり咳がひどかったりなど、注意して診察する必要がある症状の場合は、医師の判断によってはオンライン診療が受けられない可能性もあります。

 

参考

内閣府

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」について

https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2020/20200407_taisaku.pdf

 

 

「この症状は風邪?新型コロナ?」「病院には行ったほうがいいのだろうか」といった疑問や不安に対し、受診アドバイスを行うオンライン受診勧奨は通院歴がなくても(初診でも)受けることができます。新型コロナウイルスのオンライン相談窓口を開設している医療機関もあります。不安に思ったら相談してみるのもいいでしょう。

 

 オンライン受診勧奨の流れ

 

参考

厚生労働省

新型コロナウイルス感染症対策としての オンライン診療について

https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000606864.pdf

新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての電話や情報通信機器を用いた診療等の 臨時的・特例的な取扱いについて

https://www.mhlw.go.jp/content/000611278.pdf

 

 

4、オンライン診療の対象疾患は?

基本的にオンライン診療には疾患の制限はなく、先に挙げたオンライン診療を受ける条件に該当していれば受けることができます。

 

実際にオンライン診療が用いられている例としては、高血圧症、男性脱毛症(AGA)、アレルギー性鼻炎などが多く、次いで月経困難症、生活習慣病、気管支ぜんそくなどがあります。

 

■保険適用(3割負担)の対象は狭く、条件も厳しい

一方で、保険適用(3割負担)の対象範囲は狭く、適用条件も厳しくなっています。

 

オンライン診療の保険対象疾患

 

上記疾患で保険適用を受ける条件は以下の通りです。

 

・3ヶ月以上同一医師と対面診療を重ねていること

・症状が急変した場合は対面診療に切り替えること

・夜間休日問わず症状が急変した場合に対面診療が可能になるような環境を整えること(事前に受診可能な別の医療機関なども説明しておくこと) など

 

参考

厚生労働省

令和2年度診療報酬改定の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605491.pdf

 

■新型コロナ以外もオンライン診療の対象範囲を拡大

院内感染や医療機関の混雑を避けるため、新型コロナウイルス感染症以外の慢性疾患で通院している患者の対面診療をオンライン診療に切り替えることが可能になりました。また、軽症・無症状の新型コロナウイルス感染症患者が自宅・ホテル療養した場合にもオンライン診療を行うことができます。

ただし、この措置も収束までの暫定的なものです。今後オンライン診療がどのように広がっていくのかは、まだ議論の途中と言えるでしょう。

 

 

5、オンライン診療の料金は?

保険適用(3割負担)の疾患であれば、通常の対面診療の値段とそれほど変わりません。ただ、自費診療で行われているオンライン診療も多いのが現状です。では、自費診療ではいくらくらいかかるのでしょうか。

 

■がん治療のオンライン診療(受診勧奨)を行う医療機関の場合

オンライン上でがんのセカンドオピニオンを行っている病院の例を見てみましょう。

 

患者の主治医の診断や治療方針に関して、この病院の専門医が意見を提供して、どのように治療法を選ぶかの参考にしてもらうことを目的としています。薬の処方や治療は行いません。オンライン診療の時間は原則30分で、相談料は約21600円です。これに加えて、予約料5400円がかかります(合計27000円)。

 

自費診療の場合は病院ごとに価格も異なり、診察時間10分で2000円、延長5分ごとに1000円ずつ加算されるという病院もあります。あらかじめ病院のサイトをチェックしたり問い合わせたりして、いくらくらいかかるのか確認しておくと安心です。

 

なお、新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでの間は、慢性疾患についても診療報酬が加算されることになり、オンライン診療の料金が変わる可能性があります。詳しいことはかかりつけ医に聞いてみましょう。

 

参考

日本医師会

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて

http://www.saitama.med.or.jp/hoken/iryouhoken/shiryou/304.pdf

 

 

7、オンライン診療について理解を深めよう

現時点ではオンライン診療を取り入れていない医療機関も多いですが、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、オンライン診療はさらに広まっていくと見られています。

 

とはいえ、オンライン診療に関する制度や受けるための条件は複雑で、診察代も安くはありません。メリットとデメリットを学んだ上で、自分が医療機関とどう付き合っていくか、どういう受診方法が最適なのかを考えていきましょう。

 

参考

オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成 30 年3月厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000516467.pdf

オンライン診療に関するアンケート(医師向け) 集計結果

https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000504416.pdf

規制改革実施計画 平成30年6月15日閣議決定

https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000477772.pdf

 

 

オンライン診療(遠隔医療)とは

パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの情報通信機器によるビデオ通話によって、自宅などにいる患者と医師をつなぎ、医療行為を行うことをオンライン診療といいます。

仕事が忙しくて通院の時間が取れない、医療機関が遠方で通うのが難しい、体調などの面で外出できないといったときにも診察を受けることができます。

オンライン診療を受けるためのネットワークサービスの種類はさまざまです。普段目にすることが多い「LINE」や「Skype」などを使っている医療機関もあれば、IT企業が独自に開発したオンライン診療システムを導入しているところもあります。

遠隔医療とオンライン診療


医師不足による地域の医療格差や被災地への速やかな医療提供といった目的で導入が進められてきたのが「遠隔医療」です。遠隔医療は「通信技術を活用して離れた2地点間で行われる医療活動全体」という幅広い行為を指します。

この遠隔医療のうち、「情報通信機器を通して医師と患者をリアルタイムでつなぎ、診察や診断内容の説明、薬の処方などの診療行為を行うこと」をオンライン診療と呼びます。ただ、最近ではオンライン診療と遠隔医療がほぼ同じ意味で使われる場面も増えてきました。

一般社団法人日本遠隔医療学会
図説・日本の遠隔医療2013

オンライン診療(遠隔医療)ではどんな医療行為が受けられる?

オンライン診療の具体例としては

・高血圧患者の血圧コントロールの確認
・離島の患者を骨折疑いと診断し、ギプス固定などの処置の説明を実施
・慢性頭痛に処方される効果が強い薬の調節やフォロー
・外出が難しい重症心身障害のある患者に長期的な服薬管理の指導
・各種がん検診や血液検査の結果説明 
・精神疾患に対するカウンセリング 

などが挙げられます。オンライン画面での問診のほか、チャットでの文字のやりとりや画像情報などが補助的に用いられることもあります。

初診は厳しい!?オンライン診療を受ける条件

オンライン診療の流れ


実はオンライン診療には制約が多く、利用のハードルは低いとは言えません。その理由のひとつが「原則、初診では利用できない」ことです。

対面診療(初診)により、病気に対しての診断や治療の方向性など一定の判断が出た患者でなければ、原則利用することはできません。加えて、

・対面診療を重ねるなど、医師と患者の間で信頼関係が結ばれていること
・患者の症状が安定していること
・患者がオンライン診療を希望し、医師も許容していること

なども、オンライン診療を受けるための検討条件です。

初診からオンライン上で可能な医療行為は?


患者の状況次第では、医師の判断によってオンライン上での初診が行われる可能性もあります。しかし、オンライン診療は対面診療と比べてリスクが高いという意見もあり、やむを得ずオンライン上で初診が行われても、その後には必ず対面診療を行う必要があります。

一方で、以下のような健康増進や医療に関する相談行為については初回からオンラインで行うことができます

オンライン受診勧奨
患者を適切な医療機関への受診に導くためのやりとりがメインで、検査や治療は行いません。問診などで患者の症状を把握し、「こういった色や形状の発疹はじんましんの可能性があります。皮膚科を受診してください」といったアドバイスを行います。セカンドオピニオンもこれに該当します。

オンライン健康相談(遠隔健康医療相談)
応答マニュアルに沿って小児科医師や看護師などが電話で子どもの症状への対処法をアドバイス する「子ども医療電話相談」や、「発疹がある場合は皮膚科を受診してください」といった医師の判断を伴わない一般的な情報提供や受診勧奨が該当します。医師以外でも対応が可能で、電話やメール、チャットで相談できるサービスもあります。

厚生労働省
子ども医療電話相談事業(♯8000)について


遠隔医療の種類


そのほか、健康診断などで疾病を見逃すリスクが低い患者の禁煙外来、対面診療が難しい事情がある患者の緊急避妊に関する診療は例外的にオンライン上での初診が認められています。

新型コロナについてオンライン診療は受けられる?

新型コロナウイルスの特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されると同時に、新型コロナウイルス感染症拡大を防ぐため、収束までの期間限定で初診からオンライン・電話診療を利用できる見通しとなりました。(2020年4月7日時点)。

ただ、オンライン診療の環境整備が間に合っていない面もあり、今すぐに利用できるとは限りません。熱があったり咳がひどかったりなど、注意して診察する必要がある症状の場合は、医師の判断によってはオンライン診療が受けられない可能性もあります。

内閣府
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」について


「この症状は風邪?新型コロナ?」「病院には行ったほうがいいのだろうか」といった疑問や不安に対し、受診アドバイスを行うオンライン受診勧奨は通院歴がなくても(初診でも)受けることができます。新型コロナウイルスのオンライン相談窓口を開設している医療機関もあります。不安に思ったら相談してみるのもいいでしょう。

 オンライン受診勧奨の流れ


厚生労働省
新型コロナウイルス感染症対策としての オンライン診療について

新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての電話や情報通信機器を用いた診療等の 臨時的・特例的な取扱いについて

オンライン診療の対象疾患は?

基本的にオンライン診療には疾患の制限はなく、先に挙げたオンライン診療を受ける条件に該当していれば受けることができます。

実際にオンライン診療が用いられている例としては、高血圧症、男性脱毛症(AGA)、アレルギー性鼻炎などが多く、次いで月経困難症、生活習慣病、気管支ぜんそくなどがあります。

保険適用の対象は狭く、条件も厳しい


一方で、保険適用の対象範囲は狭く、適用条件も厳しくなっています。

オンライン診療の保険対象疾患


上記疾患で保険適用を受ける条件は以下の通りです。

・3ヶ月以上同一医師と対面診療を重ねていること
・症状が急変した場合は対面診療に切り替えること
・夜間休日問わず症状が急変した場合に対面診療が可能になるような環境を整えること(事前に受診可能な別の医療機関なども説明しておくこと)
 など

厚生労働省
令和2年度診療報酬改定の概要

オンライン診療の料金は?

保険適用の疾患であれば、通常の対面診療の値段とそれほど変わりません。ただ、自費診療で行われているオンライン診療も多いのが現状です。では、自費診療ではいくらくらいかかるのでしょうか。

がん治療のオンライン診療(受診勧奨)を行う医療機関の場合


オンライン上でがんのセカンドオピニオンを行っている病院の例を見てみましょう。

患者の主治医の診断や治療方針に関して、この病院の専門医が意見を提供して、どのように治療法を選ぶかの参考にしてもらうことを目的としています。薬の処方や治療は行いません。オンライン診療の時間は原則30分で、相談料は約21600円です。これに加えて、予約料5400円がかかります(合計27000円)

自費診療の場合は病院ごとに価格も異なり、診察時間10分で2000円、延長5分ごとに1000円ずつ加算されるという病院もあります。あらかじめ病院のサイトをチェックしたり問い合わせたりして、いくらくらいかかるのか確認しておくと安心です。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでの間は、慢性疾患についても診療報酬(患者の医療費のうち、保険制度から支払われる金額のこと)が加算されることになりました。料金に変更があるかどうかなどの詳細はかかりつけ医に聞いてみましょう。

日本医師会
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて

オンライン診療について理解を深めよう

現時点ではオンライン診療を取り入れていない医療機関も多いですが、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、オンライン診療はさらに広まっていくと見られています。

とはいえ、オンライン診療に関する制度や受けるための条件は複雑で、診察代も安くはありません。メリットとデメリットを学んだ上で、自分が医療機関とどう付き合っていくか、どういう受診方法が最適なのかを考えていきましょう。

厚生労働省
オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成 30 年3月厚生労働省)

オンライン診療に関するアンケート(医師向け) 集計結果
規制改革実施計画 平成30年6月15日閣議決定

プロフィール

監修:医師 新道 悠
千葉県千葉市で生まれ、2012年に千葉大学医学部を卒業。2018年までは福岡県の病院で総合診療医として内科全般を専門に地域医療を行なう。米国の医師免許を取得し、2019年からは米国のニューヨーク マンハッタンにある病院にて内科医師として勤務。 <b>所属学会</b> 米国内科学会、日本プライマリケア学会