膿性の鼻水や頭痛、嗅覚障害といった症状がある場合、慢性副鼻腔炎が疑われます。

 

慢性副鼻腔炎の治療では長期の薬の服用のほか、定期的な鼻の処置が必要です。その中でも、アレルギーが原因とされる難治性の副鼻腔炎「好酸球性副鼻腔炎」では、最近になって従来の治療と異なる治療法が認可されました。

 

ここでは副鼻腔炎の治療に関して概説します。

 

目次

 

 

急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎、原因や症状

副鼻腔炎の原因はインフルエンザや風邪のウイルス、細菌による感染が最も多いです。

 

感染により鼻腔の粘膜が腫れて奥にある副鼻腔への細い管がふさがることにより、副鼻腔の中の圧力が増加して痛みが生じます。このとき、同時に発熱がみられることもあります。この初期段階の症状が見られる状態が急性副鼻腔炎です。

 

急性副鼻腔炎では、目に近い部分での副鼻腔では視力障害などの症状を伴うことがあります。この段階での早期の受診、治療により後述する慢性副鼻腔炎を予防することが可能となります。

 

急性・慢性副鼻腔炎の症状

 

慢性副鼻腔炎では、発熱・痛みはほとんどなく、どろっとした鼻汁が出る、倦怠感が強い、鼻がつまる感じが続く、においがわかりにくくなるという症状がみられます。

 

体のだるさなどが続くため風邪やアレルギー性鼻炎などと間違えやすいのですが、こうした症状が一ヶ月以上続くときは、耳鼻咽喉科などを受診して検査を受けましょう。原因(細菌感染、アレルギー、その他)を特定し、適切な治療を受けることが大切です。

 

症状が長引くと鼻のポリープ「鼻茸」ができることも

 

鼻茸とは

 

慢性副鼻腔炎の症状を放置しておくと、頭痛の悪化や集中力の低下に加え、粘膜が腫れてきのこ様のポリープ「鼻茸」が生じることがあります。嗅覚障害の進行から菌血症・髄膜炎につながることもあるので注意しましょう。

 

慢性副鼻腔炎の中でも、気管支喘息などのアレルギー疾患と合併し、抗菌薬治療で反応しない難治性のタイプは「好酸球性副鼻腔炎」と診断されます。こちらの場合では、嗅覚の低下・再発しやすい鼻茸が特徴です。

 

鼻の中にキノコが生える!?
怖い「鼻茸」を防ぐには…

 

 

治療法解説その1:外来で行う処置・局所療法

ここからは、慢性副鼻腔炎の治療法について説明していきます。

 

耳鼻咽喉科外来では、麻酔薬・血管収縮薬を投与して鼻の中の粘膜の腫れを抑え、鼻水の吸引を行います。

 

また、鼻の穴に抗菌薬・ステロイド薬を吸い込むネブライザー治療のほか、麻酔をしてから炎症がおきている副鼻腔の洞に針を刺し、生理食塩水で副鼻腔内を直接洗浄する方法もあります。なお、副鼻腔洗浄は痛み・頬の腫れや強い場合に行われます。

 

慢性副鼻腔炎の治療法における外来治療

 

治療法解説その2:薬物療法

 慢性副鼻腔炎の薬物療法では、三ヶ月程度の抗菌薬(マクロライド系抗菌薬)と去痰剤の服用を継続します。

 

その一方で、こうした治療に反応しない好酸球性副鼻腔炎の場合は、原因と推定されているアレルギー症状を抑えるために、ロイコトリエン拮抗薬・抗ヒスタミン薬の内服、吸入あるいは内服のステロイド投与が行われます。

 

 

治療法解説その3:手術療法

近年では内視鏡を使って鼻茸や炎症部分を切除する低侵襲(傷や出血など患者の負担が少ないこと)手術が行われます。

 

内視鏡手術は、局所麻酔の後に鼻の穴から内視鏡を入れ、鼻茸を切除して副鼻腔・鼻腔の通り道を広げます。それによって空気や分泌物の出入りがしやすい状態にするのが目的です。

 

従来の手術と異なり、頬の腫れ・しびれなどの後遺症はほとんどありません。

 

 

新しい薬物療法、「注射薬」とは?

 生物学的製剤(注射薬)とは

 

これまで説明したような治療に反応しない難治性の好酸球性副鼻腔炎では、新規の生物学的製剤(注射薬)を定期的に行う方法が認可されました。

 

生物学的製剤はこれまでの慢性副鼻腔炎治療薬のメカニズムとは異なります。鼻の中で起こっている炎症を引き起こす物質(インターロイキン-4やインターロイキン13など)の働きを低下させることにより、炎症を抑えて鼻茸を小さくするなどの効果が期待されています。

 

生物学的製剤(注射薬)って?
治療法を詳しく知ろう

 

 

慢性副鼻腔炎の治療期間やアフターケアは?

慢性副鼻腔炎と診断された場合には、内服治療は最低でも三ヶ月間必要とされています。

 

再発の可能性もあることから、おおよそ1~2年間は定期的に通院し、鼻うがいなどのセルフケアを怠らないように心がけましょう。

 

 

まとめ

 慢性副鼻腔炎治療のまとめ

 

慢性副鼻腔炎の治療は、これまでの抗菌薬・去痰剤の内服に加えて、内視鏡的な手術が行われるようになりました。また、難治性とされていた好酸球性副鼻腔炎にも生物学的製剤という新しい治療法が加わりました。

 

慢性副鼻腔炎を放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあります。治療を受けることで症状を抑えることができるので、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

その症状、治療で改善できるかも。
受診前に慢性副鼻腔炎についてチェック!