熱い季節になると必ずと言って良いほど、虫に関連する悩みが出てきます。なんとか駆除したいと思っていても、お家に赤ちゃんやご年配の方、妊婦さん、ペットがいると殺虫剤を使用して良いものかと不安になってしまうのではないでしょうか。今回は家庭で良く使用される殺虫剤の種類やその成分、そして人体への影響をお話していきます。
殺虫剤が虫を駆除するメカニズム
殺虫剤として知られる有機リン系やカルバメート系、ピレスロイド系、オキサジアゾール系の作用を簡単に説明すると、これらは害虫に神経毒として作用して殺虫作用を示します。
有機リン系やカルバメート系は農薬として使用されており、一般家庭ではあまり目にしないと思います。
一般家庭でよく目にするであろう殺虫剤は、ピレスロイド系とオキサジアゾール系です。
・有機リン系
マラチオン、ダイアジノン、フェニトロチオン、フェンチオン、クロルピリホス等
・カルバメート系
カルバリル、カルボスルファン、フェノブカルブ、オキサミル、メソミル等
・ピレスロイド系
ペルメトリン、フタルスリン、フェノトリン
・オキサジアゾール系
メトキサジアゾン
上記の殺虫剤のように殺傷作用はないものの、ピリプロキシフェンやメトプレンは昆虫成長阻害剤と呼ばれることもあり、その名の通り幼虫が成虫にならないようにすることで駆除効果を発揮します。
・昆虫成長阻害
ピリプロキシフェン、メトプレン
殺虫剤に使用されている成分と人体への影響
既に様々な成分を記載しましたが、現在市販されている90%の殺虫剤はピレスロイド系といわれる成分です。
ピレスロイド系は「選択毒性」という性質を持っており、この性質が「害虫には有害、人やペットには無害」という望ましい効果を生みます。これは、人(哺乳類や鳥類を含む)はピレスロイド系殺虫剤の成分を分解して無害なもの変えることが可能ですが、虫にはそれが出来ない為に強い毒性が現れるというわけです。
もちろん、完全に無害ということはなく人によっては軽いアレルギー反応を起こしてしまうこともあるので、人(妊婦や赤ちゃん、年配者等も含む)やペットには直接噴霧しないようにし、使用後はなるべく換気をしましょう。
ピレスロイド系は害虫全般に有効であり、主に家庭内で問題となる衛生害虫(蚊、ハエ、ゴキブリ類、ノミ、ダニ類等)にも有効です。
オキサジアゾール系は、くん煙(煙・霧)剤に配合されていることが多く、ピレスロイド系に抵抗性がある害虫に効果を発揮します。ピレスロイド系が効かない場合はオキサジアゾール系を試すのも良いでしょう。しかし、くん煙(煙・霧)剤を使用した後に細かい換気時間が決まっていたりすることから分かるように、人や動物にも害を及ぼすことがあります。医薬品として認可されているものは有効性や安全性は確認されていますが、しっかりと説明書を読んでから使用してください。
自然由来の殺虫剤について
ハーブ由来成分含有などと書いてある商品には、除虫菊というキク科の植物に含まれる殺虫成分「ピレトリン」を含有していることが多いです。これは、ピレスロイド系殺虫剤の由来となっている成分であり、ピレスロイド系と同じように作用します。つまり、成分としては安全かつ殺虫作用も期待できると言えます。
一方で医薬品を含まずに泡で固めるような商品や、瞬間的に凍らすような商品もあります。
これらは毒性という面では安心ですが、殺虫成分未含有の商品がどの程度有効か議論することは非常に難しいです。しかし、泡で害虫の死骸を見ずに捨てられる可能性があるのは、家庭では喜ばれるかもしれません。
まとめ
今回は殺虫剤の種類や成分、人体への影響をまとめてきました。少しでもこの記事が今年の暑い季節を乗り切ることに役立てば幸いです。殺虫剤で何かお悩みがございましたらお気軽にこの記事の著者までご相談頂ければと思います。
参照
https://www.jcpa.or.jp/labo/pdf/2018/mechanism_irac03.pdf
https://www.jcpa.or.jp/qa/a1_12.html
https://weathernews.jp/s/topics/201805/020105/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0531-6b-p_0002.pdf
プロフィール

- 薬剤師 志村駿介
- 大型調剤薬局にて調剤業務を経験。その後、市販薬やサプリメント、健康機器の販売業務にて人々のセルフメディケーションの手助けを行う。現在は薬学博士取得のためヨーロッパで最新の薬物治療や医療制度を学びながら、Malta Medicines Authorityにて医薬品の安全性評価や規制の仕事を行っている。