渡邊 荘先生
2000年筑波大学卒業。昭和大学講師を経て、2016年国立国際医療研究センター国府台病院耳鼻いんこう科医長(2018年より診療科長併任)。耳鼻咽喉科専門医・指導医、アレルギー専門医。鼻・副鼻腔疾患、アレルギー疾患を中心に、耳や喉などその他の領域についても広く診療に取り組んでいる。

朝起きて、喉にイガイガした違和感があったり、咳をしてしまうことはありませんか?

寝ている間の口呼吸や、空気が乾いた場所での呼吸で喉が渇いてしまうと喉が痛くなったり風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなったり等の体調のトラブルにつながることもあります。

また、感染症の流行もある昨今、「オフィスや電車などの人の多いところでは咳をしづらい」と気を遣っている人も多いのではないでしょうか。

今回は、喉の乾燥について、メカニズムやケアの仕方を耳鼻科医の渡邊荘先生に聞きました。

質問者
乾燥した季節、朝起きて喉に不快感が…どうしてこうなるのでしょうか?
渡邊 荘先生

渡邊 荘先生

喉や口、鼻など空気の通るところは基本的に水分を含む粘膜で覆われています。
外部から乾いた空気が入ってくると粘膜中の水分が蒸発しやすくなってしまい、パサパサとした乾いた状態になってしまいます。この粘膜の乾燥状態が不快感の原因となります。
日中は鼻で呼吸していると思いますが、就寝時は口呼吸の割合が増えやすく直接喉に空気が入り喉が乾燥しやすくなります。
質問者
口の中が乾燥すると、どんなことが起こってしまうのでしょうか?
渡邊 荘先生

渡邊 荘先生

喉の粘膜は外から侵入するウイルスや細菌を防御するバリアにもなっています。口呼吸や空気が乾いた場所での呼吸により、粘膜が乾きこのバリアが弱くなることで感染症が引き起こされたり雑菌による炎症が起きやすくなります。


また喉にはウイルスや細菌を排出する繊毛運動という機能が備わっています。細胞表面の産毛のような細かいひだが動くことでウイルスや細菌を追い出す機能で、表面の粘液でウイルスや細菌を絡めとり、粘液ごと排出します。しかし乾燥で喉の粘液量が少なくなると、ウイルスや細菌を排出する効果が低下することが考えられます。


さらに粘膜が乾いていると外部から侵襲してきたウイルスや細菌による刺激を受けやすくなり、喉の表面が刺激を受けることでその反射反応として咳が出やすくなります。
口の中が乾燥すると、どんなことが起こってしまうのでしょうか?
質問者
乾燥しないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?
渡邊 荘先生

渡邊 荘先生

1つ目は、乾燥した空気を口に入れないことが重要です。これは加湿器などで周りの空気を湿度の高い状態にすることで対策が可能です。

2つ目に、こまめに水分を摂ったり、うがいをしたりすることで粘膜を潤してあげることも効果的です。飴を舐め唾液量を増やしても同様の効果が期待できます。就寝時は寝室に水を置いておきトイレに行く際や目が覚めた際に一口飲むなどしましょう。

3つ目として、口や喉の湿った空気ができるだけ外に逃げないようマスクを着用することも乾燥対策になります。鼻詰まりなどで就寝時に口呼吸が多くなってしまう方は就寝時もマスクを付けると効果的です。また、最近は加湿するマスクもあります。
乾燥対策
マスクで加湿する時のメリットやポイントを教えてください!
渡邊 荘先生

渡邊 荘先生

通常のマスクは加湿された空気を逃さない効果がありますが、マスクに外からの空気を加湿できる機能があると乾燥した空気を取り込まないという点も同時に対策ができます。

マスクの使用は、乾燥による朝起きた時の喉の痛み、唇やその周りの肌のカサカサ感を抑えることができますし、喉が乾燥しているとウイルスや細菌が粘膜に入りやすくなるため、風邪などの感染予防にも役立ちます。
加湿機能付きマスクのメリット
最後に、乾燥対策に向けて、先生から一言お願いします!
渡邊 荘先生

渡邊 荘先生

口や喉、鼻など空気が通る部分が乾燥すると粘膜の機能が弱まり異物が侵入しやすくなります。粘膜が傷つくと炎症が起こったり、乾燥を防ぐためにマスクを着用する、更に吸い込む空気をできるだけ加湿するということを意識して生活されると良いかと思います。
喉の不快感や咳が出やすくなったり、バリア機能が低下する原因にもなる“乾燥”について、メカニズムや予防法を教えて頂きました。

乾燥した日が続く季節、喉が乾燥してしまわないように、就寝時の加湿も忘れずに過ごしてみてください。
乾燥予防の習慣として、”乾燥してしまう前に” 加湿マスクを是非取り入れてみてくださいね!