暑い季節が去り一気に肌寒くなりましたが、実は暑い時期に限らず、これからの乾燥する季節でも水分摂取は重要です。毎日多めに水を飲むと良い、とマイボトルに水を入れて職場に持ってこられる方なども最近増えたように感じます。

 

本コラムでは水分摂取や代謝についてお話いたします。水分が人体に必要な理由や、水分摂取のメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

目次

人体に備わる代謝という機能の役割について

「代謝(もしくは新陳代謝)」という言葉をよく目にするかもしれませんが、いまいち意味が分からないという方も少なくないかもしれません。

 

人体における代謝とは、簡単に言うと、人間が食べたものが胃や腸で分解されることで活動に必要なエネルギーが作られると同時に、不要なものが尿や便として、体外に排出されることを言います。たとえて言うと、車にガソリンを入れて(食事をする)、エネルギーを取り出し車を動かし、不要なものが排気ガスとして排出される、ようなものです。

 

皆さんも毎日食事をしていることと思いますが、それらは日々の楽しみや栄養補給だけではなく、エネルギーを生み出すという大事な役割があるのです。そして、トイレで尿や便を出すのもまた、不要なものを体外に出すという大事な行為です。我々人類をはじめ、生物にとって「代謝」は欠かせないものなのです。 

水分を摂ると代謝が促進、活発になるメカニズム

では、水分を摂るとなぜ代謝にいいのでしょうか。理由は大きく分けて二つあります。

 

一つは、「血管の中を流れる血液」と関係しています。食べ物が胃や腸で分解された後、必要なエネルギーは、胃や腸に繋がっている血管から吸収されます。そして、血液の中を通って、エネルギーが全身に運ばれるのです。つまり、エネルギーを吸収し運び出す「血液=水分」が多ければ代謝はスムーズになりますし、逆に水分が不足すると十分な代謝は行えないのです。

 

もう一つは、尿と関係しています。エネルギーを作り出すと、どうしても不要なものも生まれてきますので、それを体外に出すことも重要です。不要物の多くは便や尿として排泄されます。そのため、水分が十分に摂取できないと尿が出にくくなりますが、そうなると「不要物を体外に出すことができなくなる」というデメリットにつながります。

 

エネルギーを脳をはじめとした全身にいきわたらせ、そして不要なものを体外に排泄し代謝を促進するうえで、水分摂取は欠かせないのです。 

代謝が促進されることで考えられるメリット

水分摂取により代謝が促進されると説明しましたが、ではそもそも、代謝が促進されると、どのような利点があるのでしょうか。

 

一つには、心身共に元気になるというメリットがあります。ガソリン満タンで排気ガスが勢いよく出てくるスポーツカーと、ガソリンがほとんど入っておらず排気口も壊れていて十分に排気ガスを出せない車では、どちらが速く走れるでしょうか?もちろん前者ですね。代謝が促進されることで、身体や脳に十分なエネルギーがいきわたることで、元気に過ごすことができるようになります。

 

もう一つは、これも最近よく聞く「デトックス効果」が挙げられます。デトックスとは体内に溜まった老廃物や毒素を排出させることを指しますが、上で書きましたように、水分をよく摂ることで身体の不要物が外に出されやすくなる効果を得ることができます。美容効果、健康増進効果を得ることができるでしょう。

 

そのほか、エネルギーが作られる過程では熱が作られますので(電池をずっと使うと熱くなりますよね)、代謝はダイエットにも効果があるといわれています。 

お茶や、スポーツドリンクなど他の水分でも同じ効果?

では具体的に何を飲めばいいのでしょうか。結論から言いますと「基本的には水とカフェインレスのお茶類」がおすすめです。

 

スポーツドリンクなどはミネラルやビタミンを補充できるメリットはありますが、市販の物にはかなりの糖分が含まれており、飲みすぎるとオーバーカロリーになる可能性がありますので飲みすぎには注意です。どうしても甘いものを飲みたい場合には0カロリーの物がおすすめできますが、こちらも完全に0というわけではなく、また甘いものには依存性もあるといわれていますので、1日1本まで程度にしておくのが良いと思います。

 

コーヒーやカフェイン入りのお茶、エナジードリンクなどは、カフェインに注意が必要です。カフェインは適量であればメリットも多いものですが、過剰に摂取しすぎると不眠などの原因となります。当然ですが、水分摂取を目的としたお酒の飲みすぎはご法度です。酔ってしまうなどリスクはもとより、過度の飲酒は様々な病気のリスクになります。 

適切な水分摂取量や注意点について

水分は「体重1キロにつき約35ml」が目安と言われています、例えば60kgの方ならばおおよそ2.1リットルです。しかしながら、運動量(汗をかけばその分水分が必要です)や食事量(食べ物にも)によっても変わってくる場合もあります。多いなと感じるかもしれませんが、1日数回に分けて500mlの水を飲むと考えればそこまで抵抗はないかもしれません。

 

何事も過ぎたるは及ばざるがごとしで、あまりにも水分を摂りすぎることにも注意が必要です。水分を摂りすぎると、身体に水がたまって「むくみ」を生じやすくなります。目の下の所や足に出やすいですね。特に危険なのが「脳がむくんでしまうこと」です。こうなると意識がもうろうとしたりすることもあり危険な状態です。

 

また、高齢の方や腎臓が悪い方、透析を受けている方などでは特に注意が必要ですが、心臓に水が溜まって心不全になったり、肺に水が溜まって肺水腫を起こすこともあります。上記の目安を参考に、多すぎない範囲で水分摂取を心がけてください。

 

最後に硬水と軟水についてもお話しておきます。カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが多い水を硬水、そうでない水を軟水と呼んでいます。硬水ではミネラルを摂取できるので、便秘や骨粗しょう症を予防したりできるなどのメリットがあります。

 

しかし日本の水の多くは軟水なので、硬水は少々お値段がすることと、日本人の口には軟水の方が飲みやすく硬水はどうしても飲みづらい、というデメリットがあります。ミネラルは他の食事やサプリメントでも補えますし、水分摂取ということに関しては、好みに合わせて、無理に硬水を飲まなくてもよいと思います。 

まとめ

代謝はエネルギーを生み出し、余分なものを体外に出す大事な働きであり、そのためには水分が重要であるとお話ししました。これからの季節は乾燥しやすく、暑い季節同様に水分摂取が重要になります。代謝促進も合わせて、適切な量の水分摂取を心がけてください。

 

参考文献:厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html

プロフィール

医師 赤木孝匡
甲府共立病院での初期研修ののち、救急医療、在宅医療、総合診療などの業務に従事。現在は浅井病院精神科での勤務を中心に、精神科外来・スーパー救急病棟、精神科訪問診療、内科合併症管理などを担当している。