寝違えとは、睡眠している間に首や肩などに過剰な負担がかかる体勢を無意識に取ってしまうことで、目が覚めた際に頚部(首筋あたり)から肩周囲にかけて痛みを自覚するものです。日常的にありふれた症状であり、ほとんどの人が少なくとも一度くらいはこれまでに経験したことがあるのではないかと思います。 

 

今回は、寝違えとはどういう状態なのか、そして寝違えたときの対処策などを中心に解説していきます。

 

目次

寝違えとはどうなっている状態なのか?

ある朝に起床すると突然首や脇が痛くて動かせないといった症状はいわゆる「寝違え」と呼ばれています。一度寝違えると首の後ろや肩にかけての痛みを自覚するのみならず、首を動かすと痛みが悪化する、あるいは痛みのせいで首を上下左右にまったく動かすことができない場合もあり、日常生活に支障をきたしてとても辛い症状を呈します。

 

寝違えるとなぜ痛みが出現するかについては、画像検査などで明らかな異常所見を指摘できず、いまだに様々な意見があり明確な原因は特定されていません。睡眠中に不自然な姿勢が続いて一部の筋肉が血液供給不足の状態に陥ることが影響していると考えられています。

 

それ以外にも通常であれば行わない作業や労働をして一部の筋肉がこむら返りのように痙攣している、あるいは頸椎の後ろ側に存在する椎間関節内の関節包に炎症が引き起こされることで首の後ろが痛くなるなどの意見が唱えられています。

 

いずれにしても、寝違えは筋肉の炎症由来のものが多いとされているため、どういった経過で発症して何が直接的な原因で痛みを感じるのかを正確に判断することが必要であると考えられます。 

寝違えはどのような場合に起こりやすいか

寝違えは、一般的に不自然な姿勢で寝ることで首に過剰な負担がかかる場合に起こりやすいと考えられており、首から肩にかけて筋肉や靭帯などに急激に炎症が引き起こされて、痛みや運動制限に繋がると伝えられています。

 

睡眠している長時間に渡り、首が正常ではないあらぬ方向に曲がった状態が継続されると自然に首周囲の筋肉が一時的な虚血状態になり、筋肉も凝りやすくなります。その状態で急に起床してから首を動かすことによって寝違えが起きやすいと考えられています。 

 

運動を実行する際にも、ストレッチや準備運動をせずに突然に激しい運動をすれば肉離れを起こして筋肉を損傷するのと同様に、睡眠中に凝り固まった首や肩の筋肉を急激に動かすことで寝違えが引き起こされると思われます。

寝違えと肩凝りとの見分け方

寝違えと肩凝りは症状としてよく類似していますが、簡単な見分け方はあるのでしょうか。

 

寝違いの場合には首が回せない、首周囲がズキッと激しく痛むなどの症状が中心である一方で、肩凝りについては肩が凝り固まって疲労しやすい、肩周囲が締め付けられるように違和感を覚えることが多いと言われています。両者とも頭痛やめまい症状が併発することもあり、時には脳の重い病気などが潜んでおり治療処置を必要とするケースもありえます。

 

肩凝りは、多くの場合には姿勢が悪く運動不足などが関連して肩周囲の筋肉が緊張し、筋肉内の血液循環が悪くなることで発症すると言われています。頚椎症の症状として引き起こされる場合もあります。 

 

この肩凝りの状態が長期的に続いて筋肉が傷みやすい状況になっている結果として、わずかな外力が契機となって寝違えを引き起こすことに繋がるとも考えられており、両者は若干の違いはあるものの無関係ではないと判断できます。

寝違えた際の対処法

万が一、寝違えてしまった際には基本的には首など患部を安静に保つことが第一の対処法となります。

 

仮に症状がひどくて日常の生活動作や首周囲の運動が難しい場合には、痛みの強い部位に冷湿布を貼る、もしくは痛みや炎症を抑える解熱鎮痛薬を内服することも有効的と考えられます。通常であれば、1週間程度で少しずつ疼痛症状は和らいでいくことがほとんどですが、痛みを我慢して首を無理に動かすと症状を悪化させることがあるので注意しましょう。

 

また、首や肩、脇は同じ支配神経でつながっていることが知られています。脇もほかの部位と同様にその神経を圧迫しやすい部位であるために、脇の部分が長時間圧迫されることで首の部位に悪影響が出ている場合もあります。脇の圧迫が原因で違和感を感じる際には脇の下をストレッチして血行を良好にすれば首の痛みの緩和が期待できます。一方で内部の筋肉の炎症により痛みが感じられる場合には過度に揉みほぐすことは逆効果になるため注意が必要です。

寝違えを起こさないためには

ここまで寝違えが起こった場合について考えてきましたが、寝違えを起こさない睡眠環境を整えることも非常に重要です。寝違え予防に有効と思われる対策を以下紹介します。

 

・ベッド、布団で寝る

床やソファで寝る、机に突っ伏して寝るなどの行為は寝違えのリスクが高まります。適切な寝具以外での睡眠は頭の位置が安定しない、寝返りが打ちにくく頭の向きが固定されるなど寝違えが発生しやすい状態になります。

 

・自分にあった枕を選ぶ

枕が高すぎるもしくは低すぎる場合は、常に首に負担がかかることになります。特に横向き、うつ伏せが寝やすい人は首が横に向くことが多く寝違えやすいと言えます。最近は横向き用、うつ伏せ用の枕も発売されているので、自分にあった首が楽に感じる枕を選び使用することが重要です。

 

・睡眠時間を6~9時間程度にする

寝ている時間が長くなると、それだけ首に負担がかかるや血行不良の時間も増える可能性があり、血行不良の時間も増えます。 

まとめ

「寝違え」は、首周辺の筋肉が軽度の肉離れを起こして首周囲の部分に痛みを自覚する状態を指しています。寝違えを引き起こすと、首を少し動かすだけで強い痛みを覚える、あるいは一定方向にしか首を動かせずに日常生活に影響するだけでなく、痛み症状のせいで眠れずに睡眠障害に陥ってしまうことも考えられます。今後は、寝違えの根本的な原因を知って、寝違えてしまった時にどのように対処すればいいかを認識して寝違えによる痛み症状を改善させましょう。

 

プロフィール

監修:医師 甲斐沼 孟
国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長。 救急診療のみならず、消化器外科や心臓血管外科、総合診療領域に精通しており、学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行う。