夏にはエアコンをかけて体が冷えて、冬場には季節による寒さによって冷え性が悪化するという悩みをお持ちの方は少なからずいらっしゃるでしょう。誰しも体が冷えて体温が低下し過ぎる状態が続けば、肩こりやむくみ、月経不順など多種多様な身体の不調を引き起こすと考えられています。

 

特に女性は、男性と比較して身体に付着している脂肪成分が多く筋肉量が少ない傾向があることから、基礎代謝が低下して体が冷えやすいことが知られており、体を温めるだけで様々な不調を改善させることが期待できます。今回は、体を温めることで考えられるメリットや積極的に温めたほうが身体の部分を中心に解説していきます。

 

目次

体を温めることで考えられるメリット

一般的に、体温を上げると体の免疫力や抵抗力が向上すると言われています。我々は、常に細菌やウイルスなどを始めとする病原体の侵入危機にさらされており、自然と体調を整える免疫機能と呼ばれる仕組みが備わっています。過剰な疲労やストレスが溜まり体を防衛する免疫力が低下すると、風邪をひきやすくなったりしますので、抵抗力を高めるためには体温を上げて血流の巡りを良好に保つことが効果的と考えられています。

 

血流が良くなれば代謝機能が上昇して、健康的な生活を送れるのみならず、痩せやすくもなるためにダイエットにも有効に働くと伝えられていますので、自分で継続して実行できる工夫策で体を温めることができるように心がけましょう。

積極的に温めたほうがいい部分はあるか

体をあたためるのにどの部分を前向きに温めれば効果的なのでしょうか。

 

主に、首、腰部、太ももの部分が推奨されており、特に首周辺は体の中でもっとも寒さ感覚を感じやすい部位であるだけでなく、体温が奪われやすい部分でもあります。太い血管が首の近くにあるため、首をあたためると全身に温かい血液が循環します。また、お腹や下半身、足首などを冷やさないことも忘れてはならないことであり、腹巻やレッグウォーマーを普段から積極的に身に付けて、靴下の重ね履きも時には実践しながら腹部や足先を冷やさないように注意しましょう。

 

頭痛やめまい、倦怠感といった症状を日常的に抱えている場合は、耳の奥を温めると症状が和らぐ可能性があります。特に、仕事のプレッシャーや心配事で寝付けづらい人、あるいは隣人の騒音などにストレスを感じて憂鬱な気分になりやすい方などは専用のイヤーピースを用いる事で、リラックスした状態で周囲の雑音による入眠障害を回避してくれることが期待できます。耳の部分には自律神経など多くの神経が集合しており、市販の発熱体などを耳の窪みに密着させて耳を温めることで、自然な気持ちよさに包まれると同時にリフレッシュすることが出来ます。

夏でも体を温めた方がいいのか?

暑い夏はクーラーによる冷風や冷たい食べ物や飲み物を多く摂取することで身体を冷やす機会が多くなります。クーラーなどのエアコンは夏場には欠かせないアイテムですが、直接的に体に冷風が当たる、あるいは部屋が冷却されすぎて室外と室内で気温の大きな高低差が生じることで手足の冷えやむくみ、疲労感、頭痛など体の不調を訴える場合も決して少なくありません。

 

夏場は、クーラーの冷風やアイスクリームなどの冷たい食べ物で体が冷えて不調を感じる方が多いと言われていますので、夏でも体を温める食べ物をバランスよく摂取する、適度に運動するなど工夫して体を冷やしすぎないように心がけましょう。

 

特に、夏場においても湯船にじっくり浸かって体を温めると、下半身に水圧がかかって血液やリンパの流れが良くなることで体温を効果的に上昇させることが可能となりますし、首の後ろを蒸しタオルなどで温めると効率的に身体の温度を上げることが出来ます。お風呂につかれば、老廃物が排出されてむくみ症状が改善されやすくなり、内臓の働きを活発化するのみならず心臓に戻ってくる血液量が増えて全身の血流が良好になって体温が上がると考えられています。 

 

通常では、38度~40度のお湯に30分程度浸かる習慣を持つのがお勧めされており、お風呂の湯にローズマリーやラベンダーなどのアロマオイルを入れると血行促進されるだけでなく更にリラックス効果もあわせて期待できることでしょう。

温め過ぎには注意も必要。適度な温め方の判断基準とは

体の冷えは健康にとって大敵ですが、だからと言ってやみくもにからだを温め続けるのも夜間の睡眠の質を低下させるなど注意が必要となります。基本的に、人の体温というのは皮膚などで測定される表面体温と内臓の温度を示す深部体温に分かれることが知られており、お互いに無意識に調整しています。

 

皮膚表面が温まると汗をかいて放熱して深部体温を下げることになりますし、その逆に皮膚の表面が冷えてしまうと毛穴や血管を収縮させて蓄熱する機能が働くことで深部体温を一定に保とうと調節されます。

 

例えば、良質な睡眠を得ようとする場合には、就寝する1時間以上前に表面体温と深部体温を上昇させておき、その後徐々に深部体温が下がっていくにつれて眠り始めのレム睡眠の時に深く眠れて体が回復する運びとなります。一方で、入浴後に身体の表面を冷やしてしまうと、自然と毛穴や血管を収縮させて蓄熱しようと働いて深部体温は高めに設定されてしまい、深い睡眠が妨げられることに繋がります。

 

したがって、適度な身体の温め方の基準としては、入浴後まだ体があたたかいうちに上着を羽織ってレッグウォーマーなど装着して足先を温めておけば、足先から汗などの水分が蒸散されて放熱が促進され深部体温が下がりやすくなるというわけです。

 

その反対に、あたためすぎに注意したいのが布団の中です。睡眠中にも汗による放熱は続いており、その熱を逃がす役割を阻害して邪魔するのが電気毛布などの保温グッズであることが知られていますので、電気毛布などを使用する際には就寝前に限定して、就寝するタイミングで電源を切るように心がけましょう。

まとめ

手足が冷えてよく眠れない、身体が冷えて不調になりやすいなど、冷えに関する悩みを抱えている人は決して少なくありません。ありふれた悩みだからといって、軽視するのは危険であり、体が冷えやすい状態を放置しておくと深刻な病気につながることも懸念されます。

 

体を温めれば、これまで自覚していた冷えを解消できるだけでなく色々な健康に関する不調体質を改善できることが期待できます。何よりも続けることが重要ですので、毎日続けやすい運動、ぬるま湯への入浴、そして耳を温めて全身を保温することを習慣化して、体調を整えて健康な毎日を送ることができるように努めましょう。

プロフィール

監修:医師 甲斐沼 孟
国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長。 救急診療のみならず、消化器外科や心臓血管外科、総合診療領域に精通しており、学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行う。