血糖値は健康診断の基本項目でも測定される数値であり、多くの人にとって馴染みの深いものだと思います。血糖値が低いとダルさや眠気、吐き気などを引き起こす一方、血糖値が常時高い状態は糖尿病を引き起こすリスクがあります。

 

食事と関わりの深い血糖値ですが、睡眠という視点で見ると糖分はどのような役割を持っているのでしょうか。 

目次

血糖値とは

血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを指します。ブドウ糖は米や麺などのいわゆる炭水化物の元となっている成分で、私たちは食事を通して毎日ブドウ糖を摂取しています。糖分はエネルギーの源になる成分であり、身体活動に欠かすことのできない栄養素です。

 

一方で糖分は身体の中で常時、一定の濃度で保たれるよう調整されており、食後に一時的に血糖値が上昇した際はすい臓から分泌されるインスリンによって抑制され、糖分が足りない場合は様々なホルモンによって糖を作り出そうとします。

糖を生成するホルモン、コルチゾール

身体に糖分が足りていない状態、いわゆる低血糖になった際は肝臓から分泌されるコルチゾールというホルモンが作用して、糖を生成することが知られています。

 

コルチゾールは糖の生成に関与するだけでなく、脂肪の分解・血圧上昇にも関わり、身体を興奮状態にするという特徴も持っています。別名ストレスホルモンとも呼ばれ、身体がストレスを感じた際にも分泌され、身体を興奮状態にし、ストレスに耐えようとすることも知られています。

睡眠中もエネルギーを消費

休息である睡眠なので意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、6時間の睡眠でおよそ300キロカロリー程度を消費すると言われています。

 

300キロカロリーはどんぶり1杯分の白米と同程度、約30分のジョギングで消費する量と同じです。したがって睡眠前に糖分が十分に身体に蓄えられていない状態では、睡眠中に血糖値が低下します。

 

血糖値が低下すると糖を合成するために先に述べたコルチゾールやアドレナリンが分泌され身体が興奮状態となり、夜間に目が覚めたり、眠りが浅くなったり、寝汗や悪い夢を見るなどといったことに繋がります。

就寝前の低GI値の糖分摂取で睡眠時の血糖値が安定

睡眠時に低血糖とならないためには就寝前に糖分を摂取しておく必要があります。しかしその糖分摂取には注意が必要です。迅速にブドウ糖に分解され吸収されてしまうような食品であれば、就寝後すぐに吸収されてしまい、深夜から朝にかけて血糖値を安定させることが難しくなります。

 

そこで注目したい数値がGI値というものです。GI値とは糖質の吸収度合いを示したもので、GI値が高いほど吸収スピードが早くなります。トレーニング前などすぐにエネルギーとして活用したい場合はGI値の高いものを摂ることが有効ですが、睡眠時の血糖値を安定させたい場合はできる限り低GI値のものを選ぶ必要があります。

 

具体的にはナッツやチーズ、大豆や食物繊維を含むお菓子、はちみつなどを少量、寝る前に摂取することをおすすめします。チョコレートやクッキーなどはGI値が高いため避けたほうがよいでしょう。

血糖値スパイクと眠気

睡眠と血糖値でよくされる勘違いが血糖値スパイクによる眠気の誘発です。血糖値スパイクとは空腹時に急いで食事をしたり、GI値の高い食品を多く摂取したりすることで急激に血糖値が上昇する現象を指します。

 

血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げる役割をもつインスリンが大量に分泌され、今度は逆に血糖値が一時的に低下します。血糖値の急激な低下は倦怠感や集中力の低下、眠気を引き起こします。

 

寝る前に糖分を含むものを食べると、血糖値スパイクによって眠くなり睡眠の質が上がったと感じるだけだという議論がよくあります。しかしながら寝る前の糖分の摂取は睡眠中の血糖値を安定させるためであり、血糖値スパイクとは全く異なるメカニズムで睡眠の質を高める試みだということは理解しておきましょう。