肩こりは現代社会において、多くの人が経験し日常的に解消したいと考えている身体の悩みと言えます。PC作業の増加、余暇時間でのスマートフォンの利用など、肩こりを引き起こしやすい生活スタイルが浸透しており、大手製薬会社の調査では調査対象者の約55%が肩こりを直近1年で経験したことがあると回答しています。(1)

 

肩こりになる原因は様々であり、人によってコリを感じる部位やコリの感じ方も千差万別です。本記事では、肩こりと胸の筋肉(大胸筋)の関係性にスポットをあて、肩や背中のコリの解消を目指していきます。多くのストレッチなどを試して効果を感じなかった方も大胸筋というアプローチによって日常的な肩こりが和らぐ可能性があります。

目次

肩こりが起こる理由とは

肩こりが起こる理由は様々ですが、基本的には「筋肉が引き伸ばされたまま固まっている」ことが原因であることが多いです。筋肉は弾力をもっており伸びたり縮んだりする身体活動の重要な部位ですが、伸ばされたまま長時間が経過すると、縮む能力が失われ伸び切ったままになりがちです。このとき筋肉に慢性的なダルさや、軽い痛み、揉むことで気持ちよさを感じる状態になります。

 

健康に伸び縮みする筋肉は揉むことで気持ちよさを感じることはなく、何も感じない、もしくは多少こそばゆく感じることがあります。

 

肩こり解消方法としてストレッチが紹介されることが多いですが、ストレッチとは筋肉を伸ばす動きです。伸びてしまっていることが原因でコリが発生している場合、さらに伸ばすことは逆効果となり得ますので注意が必要です。

大胸筋が収縮・衰えて発生する肩こりの特徴

筋肉が引き伸ばされたままだとコリが発生すると述べましたが、胸の筋肉、つまり大胸筋が縮こまってしまっている、もしくは大胸筋それ自体が衰えてしまっている場合は、肩から背中の筋肉が引き伸ばされてしまいます。

 

肩甲骨の周りの筋肉に倦怠感や軽いハリ、どんよりをした重さを日常的に感じるような肩こりが発生している場合、大胸筋が衰えていることが原因である可能性が高いといえます。

 

大胸筋は肩甲骨の位置を正常な位置に留めておく役割を持っており、大胸筋が縮む、衰えると肩甲骨は外側に移動してしまいます。このとき肩甲骨周りの筋肉が勝手に引っ張られてしまうのです。猫背気味に胸を縮めると肩甲骨が両側に離れていき、肩甲骨周りの筋肉が伸びてしまうのがわかると思います。逆に胸を張ると肩甲骨同士がギュッと近づき肩甲骨周りの筋肉が緩むのが感じ取れるはずです。

大胸筋を伸ばして肩こりを解消

腕を伸ばしてパソコンのキーボードやマウスを触る、スマートフォンを触る。こういった動作を長時間行っていると大胸筋が縮んでしまい、それが肩甲骨周りの筋肉の伸びを引き起こし、肩こりを発生させます。こういった状態になっている場合、胸の筋肉を引き伸ばすストレッチを行うことで、肩から背中にかけての筋肉の張りを解消することができます。大胸筋を伸ばす簡単なストレッチを一つ紹介します。

 

① 真っ直ぐ立ち右腕をまっすぐ伸ばし手のひらを上に向けます。

② 小指側を壁につけ痛くない程度に身体を左に捻ります。

  このとき右胸の筋肉が伸びていることを意識しながら30秒そのままの姿勢をキープします。

③ 左腕でも同じことを行います。

ストレッチ後、胸に張りを感じ、肩甲骨がグッと内側に寄っている感覚があれば効果があったと言えます。猫背も解消することができます。 

大胸筋を鍛えて肩コリを解消

大胸筋は日常生活では強い負荷がかかる部位ではないため、次第に衰え、小さくなっていきがちです。大胸筋が小さいと、肩甲骨を正しい位置で支えることができず、猫背気味になり肩甲骨が離れていき、肩や背中の筋肉が慢性的に伸びる状態に陥ってしまいます。

 

こういった場合はストレッチで一時的に大胸筋を引き伸ばすだけでは効果は小さいため、大胸筋そのものを筋トレで鍛え、肥大させていく必要があります。

 

大胸筋を鍛えるための最も効率の良い筋トレはプッシュアップ、通称腕立て伏せと呼ばれるものです。一般的な腕立て伏せの場合、腕にも強い負荷がかかり、数回でギブアップという人も多いかと思います。しかし膝をつけて行うことで、腕の負荷は抑えつつ胸の筋肉を重点的に刺激することができます。

 

① 腕を肩幅に開き膝は地面につけます。膝が痛い場合はバスタオルなど敷くのがオススメです。

② 背中を真っ直ぐに保つよう注意しながら、腕を曲げ伸ばしします。

③ 胸の筋肉が刺激されていることを意識しながら、限界回数がくるまで続けます。

膝を地面につけることで負荷が減っているので最初の数回は効果があるのか?と感じますが10回、15回と続けていくうちに大胸筋がドンドン辛くなっていくのが感じられると思います。大胸筋は肥大しやすい筋肉でもあるため、2日1度程度続けていくと1ヶ月程度もすれば胸板が厚くなり、胸が張り、肩甲骨が内側にギュッと寄った姿勢を自然に保てるようになります。

まとめ

肩こりや背中のこりの原因は様々ですが、肩甲骨周りの筋肉がダルく、重いという症状の場合、大胸筋を伸ばしあるいは、鍛えることで解消できる可能性があります。今までいろいろな肩こり解消方法にチャレンジしてきたという方も、胸の筋肉にアプローチする方法はあまり知られていないため、是非試してみてはいかがでしょうか。

 

・参考文献

(1)https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_loxonin-s/gaiyou/common/pdf/research01.pdf