お風呂に浸かると血流が良くなり、体が温まるだけでなく、疲れの回復やリラックス効果が期待できます。さらに、重炭酸入浴剤を使えば、炭酸ガスの働きによってより効率的に体を温めることができます。本記事では、入浴のメリットや重炭酸入浴剤の効果、通常の入浴剤との違い、入浴時の注意点について解説します。

目次

入浴で身体を温めるメリット

お風呂に浸かることで、血管が広がり血流が良くなります。血流が促進されると、体内の老廃物が排出されやすくなり、筋肉のこりがほぐれ、疲れが取れやすくなります。肩こりや足のむくみが気になる人にとっても、血行促進は大きなメリットとなります。

 

また、体の奥の温度(深部体温)が一時的に上昇し、その後緩やかに下がることで自然と眠気を感じやすくなります。特に、寝る1~2時間前にぬるめのお湯(38~40℃)に浸かると、スムーズに眠りにつきやすくなります。

 

さらに、湯船に浸かることで副交感神経が優位になり、緊張がほぐれリラックスしやすくなります。忙しい毎日の中でストレスを感じている人にとって、入浴は手軽に心身を落ち着かせる方法の一つです。

重炭酸入浴剤が入浴効果を高める科学的根拠

通常の入浴でも血流は良くなりますが、重炭酸入浴剤を使うことでその効果がさらに高まるとされています。これは、お湯に溶け込んだ炭酸ガスが皮膚を通して吸収され、血管を広げる働きを持つためです。

 

皮膚には脂質バリアがあるため、一般的な物質は吸収されにくいとされています。しかし、二酸化炭素(CO₂)は分子量が小さく、親油性・親水性の両方の特性を持つため、皮膚を透過しやすいことがわかっています。そのため、炭酸泉に浸かると皮膚のガス分圧(PCO₂)が上昇し、経皮吸収が起こることが確認されています(※Hartmann et al., 1997)。

炭酸ガスが体内に吸収されると、血液中の二酸化炭素濃度が上昇し、体は酸素を取り込もうとして血管を拡張します。この現象は「ボーア効果」と呼ばれ、血流促進に重要な役割を果たします。さらに、血管の内皮細胞から一酸化窒素(NO)が分泌されることで、血管がさらに広がり、よりスムーズな血流が促進されます(※Steffen et al., 1982)。

 

実際、ドイツでは血流改善の治療法として炭酸泉が活用されており、人工炭酸泉(CO₂濃度1000ppm)に入浴すると皮膚血流が50%以上増加するという研究結果もあります(Steffen et al., 1982)。また、日本国内の研究でも、通常の入浴と比べて、炭酸ガスを含むお湯のほうが血流促進の効果が高いことが確認されています。

一般的な入浴剤との違い

一般的な入浴剤と重炭酸入浴剤には大きな違いがあります。通常の入浴剤は香りや色を楽しむことを目的としたものが多く、温浴効果を高める成分が含まれています。一方で、重炭酸入浴剤は、炭酸ガスを長時間持続させることで血流を促すことを目的としています。

 

また、一般的な入浴剤の炭酸成分は泡としてすぐに抜けてしまうのに対し、重炭酸入浴剤の炭酸ガスはお湯の中に長く溶け込んでいるため、より安定した血流促進効果が得られます。血行促進を目的とする場合は、重炭酸入浴剤を選ぶのが適しているでしょう。

入浴する際の注意

お風呂に入ると汗をかくため、体内の水分が失われやすくなります。特に炭酸ガスの作用で血流が良くなると、さらに発汗しやすくなるため、入浴前後にコップ1杯の水を飲んでおくと安心です。

 

また、お湯の温度が高すぎると交感神経が刺激され、リラックス効果が半減してしまいます。炭酸ガスは高温では抜けやすくなるため、適温は38~40℃程度とされています。ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、血流促進や疲労回復の効果を実感しやすくなります。

 

重炭酸入浴剤を使用する際には、給湯器への影響も考慮する必要があります。製品によっては追い焚きを推奨していないものもあるため、使用前に説明書を確認しましょう。入浴後は、肌の皮脂が落ちやすくなるため、乾燥を防ぐためにも保湿ケアをするとよいでしょう。