肺水腫とは
肺は肺胞(はいほう)という最小の構造物に空気を取り入れます。肺胞の周囲には毛細血管がからみつき、空気と血液が接触して酸素と二酸化炭素が受け渡されます。 肺水腫とは、血液の液体成分が浸み出して肺胞や気管支に溜まった状態をさします。肺で酸素の取り込みは障害され、重症化すると呼吸障害がおこります。
肺水腫の症状
肺水腫によく見られる症状は、呼吸困難と泡状やピンク色の痰です。軽い運動でも息切れが多くなることに始まり、徐々に安静にしていても息苦しく感じるようになります。また、横になるより座位のほうが呼吸が楽であり、夜間に呼吸困難が起こりやすいといった特徴があります。
その他、進行すると皮膚や唇が紫色になるチアノーゼの症状や、頻脈、尿量の減少により顔や手足にむくみが見られるといった症状があり、喘息のような「ヒューヒュー」という喘鳴や、血が少し混ざったような泡状のピンク色の痰も出ます。
肺水腫の原因
肺水腫になる原因は、大きく分けて2つあります。ひとつは、心臓に原因がある「心原性肺水腫」です。心臓弁膜症や高血圧症などの心臓疾患により、心臓から全身へ血液を送り出す力が弱まり、血液が肺に多くたまります。その結果、肺の毛細血管内の圧力が上昇し、血液の液体成分が肺組織に浸み出し肺胞などにたまってしまいます。
もうひとつは、心臓以外に原因がある「非心原性肺水腫」です。重症肺炎や敗血症、刺激性ガスの吸引、外傷、膵臓炎など、さまざまな要因で起こります。その他、急激に高所に登るために起こる重篤な高山病の一種である「高地肺水腫」があります。また気胸などの治療でしぼんでいた肺を急激に膨らませてしまうと、「再膨張性肺水腫」が起こることもあります。
肺水腫の治療法
肺水腫の原因となる疾患を治療することが一番の予防です。特に心臓に問題がある場合は、定期的に医師の診察を受け、高血圧にならないよう血圧を制御する、血中コレステロール値に注意する、喫煙しない、塩分を控える、適度な運動をする、といった対策をとることで、肺水腫のリスクを軽減することが可能です。「高地肺水腫」にならないためには、登山前から体調を整え、ゆっくり高度を上げて高地の環境に順応していくことです。急性高山病の予防薬の服用も効果的です。
実際に肺水腫を発症してしまった場合の治療も、基本的には原因となっている心疾患や炎症などの治療を行うことが基本になります。肺に溜まった水を排出するための利尿薬や肺の炎症をおさえる薬の投与を行ったり、呼吸状態が悪い場合には酸素投与を行ったりします。
- このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法、専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません
- 専門家の皆様へ:病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください