ニューモシスチス肺炎の症状

ニューモシスチス肺炎では肺の進行性の硬化現象が起こります。組織学的には肺胞が肺胞マクロファージとPneumocystis Jiroveciの嚢子からなる泡沫状好酸性物質によって満たされるようになります。
  
症状としては発熱や進行性息切れが特徴で、運動によって悪化することが多く空咳を伴います。初期には呼吸困難は軽度ですが、数週間にわたってゆっくりと進行していきます。胸部X線写真では肺浸潤影の進展が観察されます。病院に受診した時点ではすでに呼吸障害が進行していることが多く、重症化しやすいため早期に適切な治療が必要です。

ニューモシスチス肺炎の原因

ニューモシスチス肺炎の原因となるP.jiroveciは世界中のいたるところに存在し、人口の70%以上の人が5歳までに抗体を獲得しているために、すべての人がこの病原体を吸入していると考えられています。
  
健常者ではニューもシスチス肺炎を発症することはありませんが、AIDS患者では最も頻度の高い日和見感染症です。1980年代にプロテアーゼ阻害薬が作られる以前にはAIDS患者の80%がニューモシスチス肺炎を発症していました。
  
P.jiroveciは肺においてのみ増殖するため、病変は肺に限局します。病原体が宿主細胞から栄養を得て生活環を繰り返して増殖していくうちに、次第に肺胞内にこの病原体と肺胞マクロファージが貯留するようになり、患者はガス交換することができなくなり呼吸不全状態を呈します。

ニューモシスチス肺炎の治療法

ニューモシスチス肺炎は免疫不全者にのみ発症することが多いため健常者は特別な予防手段を講じる必要はないといっていいです。AIDS患者などの免疫不全者は一次予防としてST合剤、ペンタミジン、ダプソンといった薬を予防的に服用します。この適切な予防によっても発症を防ぐことができなかった場合、二次予防(治療)を行いますが、内容は一次予防と同じです。
  
ニューモシスチス肺炎は予防が強く推奨されている日和見感染症なので、AIDS患者は適切な薬を服用することにより日々予防することとなります。ニューモシスチス肺炎の第一選択薬となるST合剤は副作用の頻度が高く、発熱や発疹、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症などが起こるので注意が必要です。