ビタミンB1欠乏症とは
ビタミンB1(チアミン)は水溶性ビタミンのひとつで、人間が生命維持をする上で欠かすことのできない物質です。ビタミンB1の欠乏によって引き起こされる疾患は主に2つあり、「脚気」と「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」が考えられます。かつては栄養失調、現代では偏食がビタミンB1欠乏症の原因となります。
ビタミンB1欠乏症の症状
主な2種類のビタミンB1欠乏症のうち、脚気では末梢神経が、ウェルニッケ・コルサコフ症候群では中枢神経に影響が出ます。脚気の具体的な症状としては、全身の倦怠感や手足のむくみ、しびれ、動悸、食欲不振などが考えられます。重度になると筋力低下や心不全(脚気心と呼ばれます)を引き起こすこともあります。一方のウェルニッケ・コルサコフ症候群では、歩行困難や眼球運動の麻痺といった症状が見られます。病状が進行し慢性化した場合には、記憶力の低下や健忘症、作話といった精神疾患も現れるようになります。
以前は運動の失調を「ウェルニッケ脳症」、精神疾患を「コルサコフ症」と呼んでいましたが、現在では同一の病気だと考えられています。
ビタミンB1欠乏症の原因
ビタミンB1は、糖質がエネルギーに変換される際に欠かせない補酵素です。そのため不足していると神経系の不調が出ることになります。脚気は、米中心の食生活だった日本では昔から多く見られた疾患で、国民病と呼ばれていた時代もありましたが、戦後になって食糧事情が変化したことで罹患者は激減しました。しかし現代人はインスタント食品の普及に伴って偏食傾向がありますので、極端な偏食家の場合にはまれに発生します。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、アルコール摂取量が多い人に発生しやすい病気です。アルコールを分解するためにはビタミンB1を消費しますので、飲酒量が多いとビタミンB1が不足してしまうためです。
ビタミンB1欠乏症の治療法
ビタミンB1は人間の体内では作られません。そこで外から取り入れる必要性があるのですが、ビタミンB1は水溶性のビタミンであるため、大量に摂取してもすぐに体外へ排出されてしまいます。貯めておくことができませんから、毎日ビタミンB1を含む食品を食べるよう心掛ることが大切です。ビタミンB1を多く含む食品としては、豚肉、ウナギ、ごま、落花生などが代表的です。ただし、偏食はほかの栄養素が欠乏する原因となります。なので、これらの食品だけを食べるのではなく、バランスのよい食事が大切です。
治療はビタミンB1の補充が中心で、方法としては経口または注射により補充し、一日につきおおよそ50mgから100mgを投与します。重症例の場合は100mgから1000mgの投与が行われます
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