水銀中毒の症状

・無機水銀中毒
無機水銀による水銀中毒の代表的な症状は、腎尿細管の壊死です。急性中毒の場合には胃および腹部の激痛、吐き気などが見られます。消化器系に障害が生じるため、血の混じった下痢をもよおすこともあるでしょう。重症化するとそのまま腎障害へと至ることになります。
  
・メチル水銀中毒
メチル水銀による水銀中毒では、中枢神経系への影響が見られます。これは、メチル水銀が血液と脳との関門である血液脳関門を通過してしまうためです。初期では、四肢や口唇などにしびれが出ます。やがて指の震えや歩行障害が見られるようになり、視野の狭窄を伴うこともあります。日本国内では、水俣病が有名です。

水銀中毒の原因

・無機水銀中毒
自然発生的要因としては、消毒剤や殺菌剤などの製造に従事している人に見られます。また、写真関係の職業の場合にも考えられる中毒です。経口で摂取した場合、腸管では10%以下ですが無機水銀が吸収されます。すると血液中でアルブミンやグルタチオンと結合し、腎尿細管細胞に溜まっていくこととなります。
   
・メチル水銀中毒
メチル水銀中毒の原因としては、水俣病のように公害によるものがよく知られています。知らず知らずのうちに水銀を含む食品を摂取していたというケースが多いでしょう。メチル水銀は、経口による消化管吸収のみならず、皮膚や呼吸器からも吸収されます。メチル水銀はほとんどすべてが吸収されてしまうため、肝臓、腎臓、脾臓などに蓄積していくこととなります。そして血液脳関門を通過するため、神経系に影響をおよぼします。

水銀中毒の治療法

水銀中毒の診断は、血液、毛髪、尿を検査することで行われます。急性中毒の場合には、樹脂やキレート剤などを用いることで、排泄を促すことになります。慢性中毒になってしまうと対応は困難であり、中枢神経系に影響が出てからでは有効な治療はほとんどありません。異変に気づいたら、すぐに水銀を含有する可能性のある食品の摂取を中止することが賢明です。