上大静脈症候群とは
上大静脈(上半身の静脈血を心臓に戻す役割をする静脈)が閉外部からの圧迫を受けて閉塞もしくは狭くなると、頭や腕などからの静脈血の還流が阻害されます。これによって生じるさまざまな症状を総称して「上大静脈症候群」といいます。
上大静脈症候群の症状
上大静脈症候群の主な症状としては、上半身からの静脈血の還流が阻害されるために、上半身にうっ血や腫れが生じます。主として頭部(顔面)や頚部に症状が現れやすくなります。上大静脈の閉塞すると、奇静脈が側副経路(バイパス)として発達し、静脈血は下大静脈を通って右心房に注ぐようになります。上大静脈の閉塞の場所や程度だけでなく、側副血行路の発達度合いによっても症状は異なってきます。
頭部や頚部の腫れやうっ血のほかの症状は、皮静脈の拡張、頸動脈の拡張、上腕の浮腫などです。また、上大静脈の閉塞に伴う低心拍により、呼吸困難、頻脈、チアノーゼなどが引き起こされることもあります。
上大静脈症候群の原因
上大静脈症候群は、悪性リンパ腫、血栓性静脈炎、胸部大動脈瘤、縦隔腫瘍、転移性肺がん、悪性甲状腺腫、心外膜炎、ベーチェット病などの病気に起因します。そのうち約8割は肺がんや縦隔腫瘍、大動脈ガンなど胸部の悪性腫瘍によるものです。肺がん患者の約2~3%に上大静脈症候群がみられます。上大静脈が腫瘍や瘤などで圧迫されることによって閉塞が生じ、静脈血の還流障害、上半身の静脈圧の上昇を引き起こします。また、長期間カテーテルを静脈内に留置したことにより血栓が生じ、上大静脈を閉塞してしまうケースも増えています。
上大静脈症候群の治療法
上大静脈症候群は、悪性腫瘍などの病気に起因するものがほとんどなので、予防することは困難です。しかし、肺がんが原因となるものが大半を占めていることから、喫煙などの生活習慣や食生活を見直すことが間接的な予防につながります。治療は、根本的に原因となる病気の治療となるため、病気によって異なります。例えば、原因が良性腫瘍ならば摘出手術を、悪性リンパ腫なら放射線治療と抗がん剤による治療をおこないます。肺がんや原因となる病気の治療が困難な場合は、対症療法が中心になります。
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