症状

直腸粘膜脱の主な症状は、粘膜が肛門の外に脱出してしまう他に粘血が出たり、便秘、下痢、排便回数の増加などが挙げられます。なかでも排便時にすっきりと出しきれていない感覚が特徴的で、発病した患者の多くが排便時に長く力むか、肛門に指を入れて強制的に排出させようと試みることが原因です。
  
また、直腸より粘膜が脱出してしまうことで、多数の潰瘍やぶつぶつとした粘膜、ポリープ状に隆起したものが現れます。特にポリープ状に隆起したものは、直腸の線種やがんと表面的に類似するため肉眼での判別が困難です。直腸粘膜脱による症状かどうかを適切に判別するためには、症状の観察と共に病変部の一部を採取して詳しく検査する必要があります。

原因

直腸粘膜脱は脆弱な骨盤底ないし会陰下垂症の発症を原因に発症することが多いとされています。また、大きな痔核やポリープが肛門の外に脱出する際に、一緒に引っ張られることが原因となる場合があります。
  
しかし、発症にいたる患者の特徴として主に便秘症などの排便症状を患っている場合が多く確認されています。即ち、排便のためにトイレで長らく力んだり、肛門に自分の指を入れるなどの強引な排便方法が、病態を悪化させている可能性があるのです。
  
また、直腸粘膜脱を多く発症した結果、直腸粘膜脱症候群の発症にいたると考えられており、先天的形態異常説や炎症性腸疾患説、虚血性腸疾患説や機械的刺激説など多数挙げられている発症原因の有力説の一つとして数えられています。

治療法

直腸粘膜脱の発症は主に排便習慣の改善によって、一定の予防効果を得ることができます。特に、排便時にトイレで長くいる癖があると発症するリスクが高まるため、排便を済ませて尚も便意が残っている場合であっても、一時的にトイレより出るなどの対応が必要となります。
ただし、発症の原因が偏った排便習慣だけに限らず、体質的に発症してしまう可能性があるので、自主的な予防法には限界があります。
  
また、老化が原因で発症にいたる可能性もあることから病気として認知されていない場合があるため、粘膜の切除手術を受ける前に排便習慣の改善などが基本的に行なわれます。近年ではレーザー照射による治療法が行なわれていますが、完全な治療法は予防法と共に確立されていないのが現状です。