上腕二頭筋腱断裂とは
上腕二頭筋腱断裂は上腕二頭筋腱炎(腱鞘炎)と並んで発生しやすい上腕二頭筋長頭腱の障害です。上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を滑動するため、腱の炎症や変性、断裂を起こしやすくなります。外傷やスポーツ、重量物挙上などで、この長頭腱が単独で断裂する場合と、腱板断裂に合併して起こる場合があります。
症状
上腕二頭筋腱断裂の症状として、外傷やスポーツで起こる断裂は前駆症状がなく、断裂が発生すると、断裂音とともに肩前面に疼痛が生じます。同時に断裂腱が結節間溝から遠位に引き出されるため長頭の筋腹が弛緩し、同部が局所的に盛り上がって見えます。疼痛は3週間程度で軽快する事が多いです。一方で、腱板断裂に合併する断裂は、長頭腱の完全断裂が起こる前段階である不全断裂を呈する期間があり、その間は結節間溝付近の痛みを伴います。
完全断裂になると、3週間程度で痛みは軽快します。診断は特有の盛り上がりを認めれば容易となります。関節造影では結節間溝から造影剤の流出を認め、MRIでは遠位に引き出された断裂腱が認められます。
原因
上腕二頭筋腱断裂の原因としては、スポーツなどによる上腕二頭筋腱への過負荷があります。上腕二頭筋長頭腱は結節間溝の中を動きますが、オーバースロー投球のコッキング肢位で緊張し、加速期に肩峰と烏口肩峰靭帯の下で圧迫され、内旋に伴ってさらに摩擦が加わります。この摩擦が繰り返される事によって筋腱の障害が発生し、外転外旋時痛や結節間溝への圧痛が出現するようになります。
診断法として、肘の屈曲とともに前腕を回外させて痛みを誘発させるヤーガソンテスト、前腕回外位で肘を伸展したまま抵抗下に上肢を挙上させるスピードテストなどがあります。
また、体操競技で倒立、懸垂などの際に静的な力と動的な力の両方が作用し、長頭腱の腱炎、脱臼、断裂などが起こることがあります。
治療法
上腕二頭筋腱断裂の予防としては、肩関節や上腕二頭筋への過負荷を避ける事が必要となります。そして、症状が出現した場合には適切な対応を行い最低限の症状で抑える事が必要となります。
スポーツによる過負荷が原因である場合には、運動フォームの矯正、上肢のみならず、体幹や下肢を含む関節可動域の改善、筋のストレッチと筋力強化などの保存療法で症状が軽快する場合が多くあります。
急性期の疼痛は抗炎症薬などによる対症療法で軽快が見られます。筋力低下が問題になる場合には、断裂した長頭腱を結節間溝、烏口突起、共同腱などに固定する腱固定術が行われる場合があります。
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