住血吸虫症とは
住血吸虫症とは、住血吸虫科に属する寄生虫(5種類の住血吸虫)が静脈内(腸管と泌尿生殖器)に寄生することで起こる疾患です。感染経路は、住血吸虫の幼虫が含まれる水に触れることで幼虫が人の皮膚から人体に侵入して感染します。急性期には下痢などを起こしますが、その後肝臓に寄生して肝硬変になることがあります。WHO(世界保健機関)の、2012年の報告では世界78ヶ国で2億4,900万人が治療を行う必要があるとされました。
住血吸虫症の症状
住血吸虫の幼虫が皮膚から侵入したときに痒みを伴う発疹が現れますが、泌尿生殖器に寄生する住血吸虫では現れないことが多いです。住血吸虫症が慢性化した場合では、腸管に寄生する住血吸虫と泌尿生殖器に寄生する住血吸虫が産卵することにより様々な症状が現れます。
腸管に寄生した場合は、腹痛、下痢、血便が現れて進行すると肝脾腫、門脈圧亢進、腹水、食道静脈瘤の形成などが発症してそこから出血が生じます。稀に脳や脊髄などに神経症状が現れる場合もあります。
泌尿生殖器に寄生した場合は、一般的な症状は血尿が現れ、進行すると膀胱尿管の線維症や腎障害が現れます。また、合併症として膀胱ガンを起こす可能性があります。女性では、生殖器病変、膣出血、性交痛、外陰部結節がみられ、男性では精嚢、前立腺、その他の臓器に病変を起こすことがあり、不妊の原因にもなります。
住血吸虫症の原因
住血吸虫症は熱帯地域や亜熱帯地域でよくみられ、90%がアフリカで発症しているとされています。腸管に寄生する住血吸虫は、アフリカ、中東、カリブ海諸国、ブラジル、ベネズエラ、スリナムで分布するマンソン住血吸虫、中国やインドネシア、フィリピンで分布する日本住血吸虫(日本では撲滅)、カンボジアとラオスで分布するメコン住血吸虫、中部アフリカで分布するインターカラーツム住血吸虫の4種が原因です。泌尿生殖器に寄生する住血吸虫は、アフリカや中東に分布するビルハルツ住血吸虫が原因です。
住血吸虫は、淡水産巻貝を中間宿主として哺乳類を終宿主にし、いずれの種も似たような生活環をしています。感染した巻貝から幼虫を水の中へ放出して、幼虫は水に触れた人に皮膚から侵入し、人体の中で成虫になり産卵して、人の大便や尿から虫卵を排出させ、淡水で孵化した幼虫が巻貝に感染し、この生活環が人に感染を広げ被害が及んでいます。
住血吸虫症の治療法
住血吸虫症の治療は、抗寄生虫薬のプラジカンテルという薬を使用します。この薬は成虫に対して効果があるために成虫になった頃に投薬を行います。WHOでは現在、住血吸虫症の予防として感染リスクの高い地域で定期的にプラジカンテルの集団投薬を行い感染制御をしています。また、感染制御は過去40年以上に渡り、ブラジル、カンボジア、中国、エジプト、モーリシャス、サウジアラビアなどの数ヶ国で成功しています。
感染リスクがある地域では、予防として淡水に入らないことが重要です。飲料水は安全な水を飲むようにして入浴時には1分程度沸騰したお湯を使い入浴します。
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