放射線腸炎とは
放射線腸炎とは放射線治療により放射線を腹部や骨盤のがんに照射したことによって、腸内の正常な細胞に悪影響を受け、腸管粘膜が壊死してしまう疾患です。前立腺がんや子宮類内膜腺がんの治療後に発症する確率が高く、放射線治療を受けた子宮がんの5から15%に放射線腸炎の症状が現れるとされています。
放射線腸炎の症状
放射線腸炎を発症すると、放射線療法から2ヶ月以内に吐き気や嘔吐、腸の痛みや出血、水様性下痢や腹部の痙攣、倦怠感や食欲不振などが症状として現れます。こうした早期障害は放射線治療が終了すると、およそ2、3週間でおさまるとされています。しかし、放射線治療が終了してなおも症状が改善されず、数ヶ月から数年後に発症する、という例も確認されています。また、これら早期障害に対して、腸粘膜から腸管全体に病変が広がってしまう晩期障害の場合、腸内で強い粘膜の炎症や深い潰瘍が現れます。結果、持続的ないし間欠的な下血やしぶり腹が現れ、稀に大量出血する場合があります。腸管の狭窄により腹痛や便の細小化がみられ、腸閉塞を起こすこともあります。
放射線腸炎の原因
放射線腸炎は主にがん治療の一環として行なわれる放射線治療を受けることが原因で発症する疾患です。特に子宮がんや卵巣がん、前立腺がんといった婦人科ないし泌尿器科における悪性腫瘍の治療後に、発症するとされています。これは、放射線が腹部にあたり、腸に障害を来すためです。また、治療によって照射される放射線量が60グレイを超えると発症率が上昇します。腸管細胞は骨髄や性腺と同様に常時活発的に細胞が新しく作られるところのため、放射線の感受性が高い組織となっています。そのため、婦人科や泌尿器科における放射線治療の副作用として発症するのが放射線腸炎です。また、感受性が高いがために治療開始もしくは終了して間もなくに現れる早期障害であれば、治療そのものを中断することで症状が回復することもあります。
放射線腸炎の治療法
放射線腸炎の発症を予防するには、適切な治療方法で放射線療法をうけることです。放射線腸炎を恐れて、放射線治療を行わないことは、悪性腫瘍の治療法として有効的放射線治療を避けることは、特にがん患者にとって選択肢を狭めることに繋がります。また、仮に放射線腸炎を発症したとしても、症状を緩和するための方法が多数考案されているため、無理をしてまで予防する必要がない、という考えもあります。放射線腸炎の早期障害であれば、薬の処方や治療を中断することで症状はある程度緩和します。例え、症状が緩和されなかったとしても手術による治療も可能です。
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