ミトコンドリア異常症とは
1つ1つの細胞の中には、ミトコンドリアという小器官があり、ここで生命活動に必要なエネルギーが作られます。ミトコンドリア病とは、ミトコンドリアの異常のために細胞が正常に働かなくなった結果、様々な細胞組織や臓器機能が低下する病気です。あらゆる臓器であらゆる症状が現れる可能性があり、発病者によって異なった症状が現れるのが特徴です。
ミトコンドリア異常症の症状
ミトコンドリア異常症の症状は発病した患者によって異なるため、いちがいに特定することは困難です。また、発症する年齢、重症度にも個人差があります。しかし、発病者の中でも比較的共通している症状をもとにすれば、ミトコンドリア異常症の中でも脳卒中に似た症状が現れるMELASや痙攣やミオクローヌスという意識しない体の動きを主とするMERRF、そして眼球の動きが麻痺してしまう慢性進行性外眼筋麻痺症候群という三種類の個別的な病名をつけ、分類することができます。これら三種類の病型は、ミトコンドリア脳筋症の三大病型とされています。
他にもミトコンドリア異常症が原因と考えられる心筋症やレーバー病、ミトコンドリア糖尿病やリー脳症などを発症する可能性があります。
ミトコンドリア異常症の原因
細胞の中に存在する核には遺伝情報を担っているDNAがありますが、ミトコンドリアの内部にも独自のDNAが存在します。すなわち、ミトコンドリア異常症の原因は細胞核のDNAではなく、ミトコンドリアDNAの変化によるもの、と考えられています。また、両親の遺伝子が子どもに受け継がれる際、細胞核のDNAは両親双方から受け継がれるのに対し、ミトコンドリアDNAに関しては母方だけのDNAだけを受け継ぎます。そのため、母方のミトコンドリアDNAの変化が子どもに遺伝された結果、高い確率で発症します。
ただし、こうした母系遺伝とは関わりなく、ミトコンドリアDNAがある日突然変化する可能性もあるため、明確に遺伝性と断言するには疑問が残ります。
ミトコンドリア異常症の治療法
多様な症状と発病年齢によって原因を特定するのが困難なミトコンドリア異常症には、はっきりとした予防法が確立されていないのが現状です。そのため、脳波検査や遺伝子検査などで症状の原因を特定する、という発病後の診断・治療がミトコンドリア異常症における中心的な対応となります。その際、一つの診療科だけで検査を済ませるのではなく、原因究明のため複数の診療科に受診する必要があります。治療にあたってはミトコンドリア機能を高めるビタミン剤などが投与されることになります。
しかし、ミトコンドリア脳筋症の三大病型の一つであるMELASの場合は、アミノ酸の一種であるアルギニンの投与によって治療もしくは予防することが可能、と考えられています。
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