疫痢とは
疫痢は、細菌性赤痢の重症型で、2〜6歳くらいの小児にみられる疾患です。血圧低下などの循環障害を引き起こし、短時間で死に至ります。日本では、1994年に死亡例が報告されているものの、1964年以降は、ほとんどみられなくなりました。
疫痢の症状
細菌性赤痢は、1~3日の潜伏期間のあと、悪寒を伴う急激な高熱、全身倦怠感、水様性の下痢などの症状があらわれます。発熱は1~2日間続き、腹痛やしぶり腹(頻繁に便意をもよおすけれども便がでなかったり、あるいは出ても少量であったりする状態)、膿粘血便などがみられます。赤痢という病名は、便成分がほとんどなく膿粘血便がみられることに由来しています。疫痢は主に2歳から6歳くらいの小児にみられる細菌性赤痢の重傷型のことをいいます。細菌性赤痢にみられる症状のほかに、意識混濁、血圧低下、けいれんなどを引き起こし、短時間で死亡する確率の高い疾患です。
疫痢の原因
疫痢(細菌性赤痢)は赤痢菌によっておこります。赤痢菌には大腸菌によく似たグラム陰性桿菌で、10~100個と非常に少ない量で感染します。赤痢菌は、1897年(明治30年)に志賀潔によって発見されたことにより、「Shigella」という学名が付けられました。赤痢菌には、S. dysenteriae(志賀赤痢菌)、 S. flexneri(フレキシネル菌)、S. boydii(ボイド菌)、S. sonnei(ソンネ菌)の4つがあります。志賀赤痢菌やフレキシネル菌は赤痢の典型的な症状を呈し、特に志賀赤痢菌は重症化しやすいですが、日本では、軟便や軽度の発熱など比較的症状が軽いソンネ菌が多くなっています。
疫痢の治療法
細菌性赤痢は、インドネシア、インド、タイ、ベトナムなどアジアが主要な感染地域です。主に、患者や保菌者の糞便や手指、水、ハエ、食品などを介して感染します。衛生環境の悪い地域で多く、衛生水準が向上すると発生は激減します。日本では過半数が国外感染で、国内では二次感染が多くみられます。日本で疫痢がみられることはほとんどなくなりました。国外感染が多いことから、細菌赤痢の発生地域では、生水、生もの、氷などは飲食を避け、国内の二次感染も含め、石鹸などによる手洗いの励行が予防の基本となります。
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