炭疽の症状

ヒトへの感染は、皮膚炭疽、腸炭疽、肺炭疽と、感染経路によって特有の症状が発症し、自然感染のほとんどは皮膚炭疽とされています。
  
皮膚の傷などから菌が入り、潜伏期間(1~7日)のあと虫さされのような丘疹からやがて黒色のかさぶた状を呈します。炭疽の名はその色からきているとされています。約8割が治癒しますが、リンパ節などへ進展すると死に至る場合もあります。
  
腸炭疽は、感染した動物を食すことで発症し、嘔吐や発熱、腹痛、吐血などを呈します。敗血症へ移行すると死に至ります。上部気道が感染する肺炭疽は自然にはまず発症しませんが、気管支炎の症状に似た症状から悪化すると呼吸困難を呈し、急性的に死に至ります。

炭疽の原因

炭疽菌は、空気に触れたり、栄養状態の悪い環境下では芽胞(幾重もの殻に包まれた状態)となります。
  
芽胞になると熱や乾燥、薬剤、紫外線などへ高い抵抗力を示すため、増殖せず何年でも休眠状態でいることが可能となります。芽胞が付着した草を食べた動物の体内で高栄養の環境を得た芽胞が増殖を開始します。
  
感染により死亡した動物の死体より放出される菌が、また芽胞状態となり生き延びることから、次の動物への感染を繰り返すという感染サイクルを有しています。ヒトにはある程度の抵抗力が備わっているのですが、大量の菌が体内に入ると先述のような経路をたどり症状が発症します。

炭疽の治療法

日本のように衛生状態の整った国では自然発生の起こることが考えられないため、予防ワクチンは販売されていません。南北アメリカやアジア、アフリカなどでは現在でも検出されています。
  
科学や医学、畜産の進歩から、近年では自然発生の起こりにくい環境が整ってはきましたが、2001年にアメリカで起きた炭疽菌テロのように、生物兵器として人為的に発生したものに対する危機管理はまだ途上であり、国家として徹底した強化が地球規模で必要とされています。